音楽鑑賞履歴(2016年1月)

月一恒例の音楽鑑賞履歴。
音楽メーターの感想を記事にしてまとめてます。
今月は14枚。
ちょっとオフで色々あって忙殺されてましたので、月後半はほとんど聞けてない。
まあ、仕方ない。
全くの偶然ですが今年の聞き初めがご覧のとおり、デヴィッド・ボウイです。
この時点ではよもやあんなことになるとは思いもよらず。
その後、今年のCDの買い初めもボウイの遺作になってしまった「★」
一リスナーとしては彼の作品を今後ともに愛聴していければなと思います。

では以下から、感想です。


1月の音楽メーター
聴いた音楽の枚数:14枚
聴いた時間:332分

HeroesHeroes
・77年発表12th。ベルリン三部作の第二作。ロックンロール色が色濃く出たA面とシンセサイザーを駆使したインストメインのB面と大きく特徴が分かれるが、どちらもボウイ独特のアクとヌメリが感じられる。エキゾチックにして無国籍、ストロボライトの鈍い光でまぶしく見えなくなるようなサウンド
ボウイの奏でる音楽はロックンロールだ。あるいはブギーといってもいいか。なにか垢抜けない不器用な音だからこそタイムレスな神秘性があるように思う。代表曲の3にせよ、ロックンロールの刹那的な美しさを映し出しつつ、同時に失われていく寂しさをも描いている。その様は神々しいくらい眩しい。
クラウトロックの影響があるとされる作品だが、ハンマービートっぽさはそこまでなく、ボウイのロックンロール感覚やヨーロピアンな耽美さがシンセサウンドとして押し出され、ポップさもありアンビエントな趣もある印象。ブライアン・イーノが共同で作曲してるのも要因か。ともかくボウイの代表作で名盤
聴いた日:01月03日 アーティスト:David Bowie
Sound-DustSound-Dust
01年発表8th。カンタベリーとブラジル音楽の森を抜けたら、今度はドリーミー&サイケと60sポップスの海に潜り込んだような音。浮遊感と陶酔感がレトロチックな趣を強めているけど、音の粒立ちの良さなどからサウンドの質感はとてもデジタルで現代的。まろやかに耽溺していくような、そんな作品
コーラスラインの掛け方とか、ギターにあまり頼らない楽器構成とか聞けば聞くほど、ソフトロックの世界でもあり、本人たちもなんだか意識してそうな感じ。末はビーチボーイズかミレニアムかはたまたフリー・デザインか。ただビートが際立つと途端にステレオラブらしさがひょっと出てくるのが面白い所。
聴いた日:01月04日 アーティスト:Stereolab
Grave DisorderGrave Disorder
01年発表9th。日本国内リリースなし。前作から6年ぶりのリリースだが、恐ろしいほど活気に満ち溢れた意欲作。ヴァニアンのゴシック&怪奇趣味、C・センシブルのパンキッシュなポップセンスが絡み合い、ダークな色合いながらも疾走感のある演奏が絶品だろう。墓場でサーカスやってそうなイメージ
従来のパンクサウンドもさることながら、中期のゴシックロックな趣もあるし、長尺曲もあるわ、はたまたシンセなどを導入して、現代的な響きのある曲もあったりで万華鏡のように曲のバリエーションが非常に多彩なのが興味深いし、とことんエンターテイメントに徹しきったアルバム構成でお腹一杯の内容。
英国ならではの毒気と翳りに満ちた雰囲気がパワーポップ的な明快さを伴って、鳴り響くものだから非常に独特な音楽でダムドにしか出せないサウンドだろう。途中再結成もあったが、今なお唯一現存するロンドン三大パンクバンドの目の覚めるような傑作。現役感がハンパない。
聴いた日:01月06日 アーティスト:Damned
くじらむぼんくじらむぼん
98年発表EP。彼らのデビュー盤。オルタナプログレチックな演奏で歌う矢野顕子みたいな趣を感じる。浮遊感のある歌い回しが似ている面のもあるが、さりげなく差し込まれる複雑怪奇かつテクニカルな演奏はポップさの欠片もない。しかし、曲そのものはシティポップスのようなハイセンスさも窺える。
原田郁子の歌はわりと童謡チックでもあり、その辺りに親しみやすさがあるのはもちろんなのだが、演奏の方は一筋縄じゃ行かないメロディを奏でており、これがポップスとして成立してるのに不思議な感覚を味わうが、そこが恐らくこのバンドの面白い所なんだと思う。おぞましくも非常にポップスな一枚。
聴いた日:01月07日 アーティスト:クラムボン
JPJP
99年発表1st。デビューEPの音からカラフルでシャープなサウンドに進化して、よりポップな趣が強くなった。反面、全体にあった朴訥とした雰囲気は減退したか。しかし演奏の手触りはより高度になった感も。3ピースとは思えない、密度の濃い演奏をサラッと聞かせてくれる辺り、底が知れない。
演奏については完全にプログレポップな一方、歌だけは童謡的な浮遊感を残しており、その二面性が面白い。下手に重ね合わせようとせずに、いびつなまま両立させていて、噛み合ってないんだけど噛み合っているというバランス感覚。渋谷系の香りもほんのり漂わせながら、文字通りハジけたポップ全開な一枚
聴いた日:01月07日 アーティスト:クラムボン
まちわび まちさびまちわび まちさび
00年発表2nd。進化の一枚だろう。前作のいびつながら噛み合っていた要素はカドが取れて、キレイにぴったりと噛み合い一つの球になった印象。ハイセンスなテクニカルポップスとして垢抜けたサウンドで、彼らの音楽性が確立したといっていい一枚かと。非常にカチッと整理された演奏で聞きやすい。
その技巧派な演奏はともすれば、産業ロック的な趣を感じるが、そこにもう一枚、オルタナ/グランジ的な歪みを利かせた音像が挟まり、適度にラフさも兼ね備えたものに仕上がっている。開放的な野原で火花を散らしてセッションしてそうな情景が浮かびそう。前作を上回る出来栄えの会心作かと。
聴いた日:01月08日 アーティスト:クラムボン
PIZZICATO FIVEPIZZICATO FIVE
99年発表12th。ありったけのヨーロピアンロマンティックを詰め込んだ東京発パレード。多少の打ち込みトラックはあるものの基本的に生の演奏音(実際に演奏しているかはさておき)をメインに構成された、洋画への憧憬が見え隠れするスタイリッシュなサウンド。一滴のセンチメンタルが色濃く染みる
ハッピネスの中に潜むサッドネス。底が抜けるくらいに明るいサウンドにも、もののあわれを感じるのはかのアビー・ロードを渡るよう。音楽でなにも救えないという声が在り方を問うている。ならば明るく終わろう。出口が崖っぷちや行き止まりだったとしても、20世紀は終わるのだった。
彼らの憧れた洋画や洋楽の風景に自分たちがいないことに絶望しながらも、その美しさが幸せだったと刻むことは出来る。だから終わるのだが、彼らが自分たちを見つめ直した先に「日本」や「東京」があったのは言うまでもなく、幕は華々しいアンコールを迎えることとなるがそれはまた別の話。最晩年の傑作
聴いた日:01月09日 アーティスト:pizzicato five
アストラル・ウィークスアストラル・ウィークス
・68年発表2nd。無名のジャズ・ミュージシャンとバンドを組んで、作り上げられた作品。しかし出来上がった曲はジャズにならず、かといってロックでもなく、フォークやトラッドで紡がれるような、深遠な神秘的メロディーが繰り広げられて、耳で聞く芸術品のような味わいがある。
聴いた日:01月11日 アーティスト:ヴァン・モリソン
ムーンダンスムーンダンス
・70年発表3rd。R&Bを基調に時にはジャジー、時にはC&Wのように歌い上げた渋みあるいぶし銀盤。ヴァン・モリソンのしゃがれた歌声には優しさと柔らかさがあり、粗野なところがないのが印象的。その分、シルクのような滑らかさとしっとりとした重みがこの盤の芳醇な味わいとなっている。
聴いた日:01月11日 アーティスト:ヴァン・モリソン
Selling England By the PoundSelling England By the Pound
73年発表5th。前作、前々作がバンドの音楽性が開花した作品だとすれば、本作は音楽性を精製した作品だろう。良くも悪くも個性の突出していたP.ゲイブリエルとその他メンバーとのパワーバランスの均整が取れたのがこの盤の質の高さを裏付けている。総合力としては全ディスコグラフの中でも随一か
1でのS.ハケットのタッピングらしき奏法のギターソロが聴けるのも面白いが、このアルバムで存在感を見せつけたのはKeyのトニー・バンクスだろう。随所でシンセとメロトロン、ピアノを全て駆使して、楽曲の印象を増幅させている。特に7でのKeyソロはこの盤のハイライトといっていいほどだ。
ここから鑑みるにゲイブリエルやハケットが抜けた後でもジェネシスジェネシスであれたのは、バンドの核であるリズム隊が残っていたのもあるが、この盤におけるKeyの成長と活躍があったからこそだと思う。知名度は低いが、そういう点ではバンドサウンドとしてのピークが記録された名盤だろう
聴いた日:01月14日 アーティスト:Genesis
ノット・ミュージックノット・ミュージック
10年発表12th。2016年時点でこれが今のところ最終作。バンド史上最大級にテクノへと接近した印象のある作品だと思う。もちろん彼ららしい人力ビートとメロディの総決算的な部分はあるが全体のテクスチャーがテクノっぽい。いつも以上にヘンテコな電子音が飛び交っているのは気のせいじゃない
何をもって「Not Music」と題したのか。名付けた本人たちにしか分からないが、ある画一化したフォーマットで様々な音楽ジャンルが作られるのであれば、それは創造ではなく「生産」なのかもしれない。そんな皮肉が込められたアルバムだが、彼らの音楽がいつになくポップに響いているのも面白い
聴いた日:01月14日 アーティスト:ステレオラブ
Stephen StillsStephen Stills
70年発表1st。極上のアメリカンロック。ソウル・ブルース、フォーク、カントリーなどルーツミュージックを通過しロックに変換されているのがちょうどいい塩梅で、スティルスのメロディーメイカーぶりがそここに感じられる。彼の奏でるギターとオルガンから鳴り響く旋律はいつまでも聞いていたい。
ちなみにジミヘン最晩年の録音(4)やクラプトンが参加した曲(5)などの参加メンバーの豪華さも目を引くが、9のアフロファンクっぽいメロディや全体を支配するゴスペルな趣は柔らかくもあるが、滋味溢れており、この盤のグッドタイムミュージックさを十二分に下支えしている。まごうことなき名盤。
聴いた日:01月15日 アーティスト:Stephen Stills
皆既食<FUSION 1000>皆既食
74年録音盤。スタジオ第3作。前作でのサウンドがさらにソリッド感を増し、キレが良くなった感じ。かなりロック色の強いアルバムで、Gで参加のジョン・アバークロンビービリー・コブハムが暴れまわってる印象が強く残る。とはいえ、曲構成はかなりかっちりしててプログレッシヴ感も満点。
緩急を利かせて、しなやかに叩きまくるとはいえ自らが目立つばかりでなくて、他の凄腕ミュージシャン(ブレッカーズ・ブラザースなど)の見せ場もあり、ビリー自身の作曲能力の冴えも十分感じられる一枚。力任せにただ叩きまくるドラマーとは一線を画すミュージシャンシップが窺える良作かと。
聴いた日:01月27日 アーティスト:ビリー・コブハム
Kimono My HouseKimono My House
・74年発表3rd。彼らの音楽性が開花した傑作だろう。発表当時流行していたグラムロックのセンスに道化的で諧謔的なコミカルさが重なり、独特の雰囲気を放っている。クセは大変に強いのだが、オペラティックなボーカルとともに笑い飛ばす感覚でポップに聞けるのが最大の強みと行った所。
喜劇的な小劇場な雰囲気が満載でサーカス的な賑やかさが面白くも楽しくあるが、その一方でシニカルさと毒気を感じるのもまた事実。英国的なヒネクレポップスとして完成度が高い。だがこのバンドが一番ヒネクレているのは、彼らはアメリカのバンドだという事だ。ここまで偏屈だと逆に感心してしまう一枚
聴いた日:01月28日 アーティスト:Sparks

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