初めに。

ここは私ことテリー・ライスが主に漫画や音楽やアニメや小説、映画などの感想を好きに語るブログです。
あくまで個人の感想である事にご留意よろしくお願いします。


サイト名のIn Jazzとは音楽ジャンルのジャズではなく、俗語の意として「熱狂」とか「たわごと」の意です。
好きなことを語れたらいいなあという思いを込めて。
更新はかなりの不定期になってますが気が向いたら、書く方向になると思います。


※2019/1/1追記
はてなダイアリーの2019年春サービス終了に伴い、はてなブログに移行しました。
移行するにあたって、ブログの看板名も少し模様替えして、「What's Going On」を付け加えています。マーヴィン・ゲイのアルバムタイトルからの引用ですが、そんなに問題提起するつもりではなくなんとなくノリです、ノリ。まあ、「自らの熱狂の中で何が起こっているのか」みたいな感じで、これからも変わらずマイペースに行きたいと思いますのでよろしくお願いいたします。


それとtwitterでもつぶやいてます。なんだかこっちがメインっぽくなってますが。
テリー・ライス (@terry_rice88) | Twitter

音楽鑑賞履歴(2020年4月) No.1371~1375

月一恒例の音楽鑑賞履歴。

4月、新型コロナウィルスに対しての緊急事態宣言が発令。
社会や人の動きが停滞し、なんだか日々の暮らしも次第に気分がどんよりしていきました。
GWを過ぎた今、緊急事態宣言の延長が表明されて、各所に大きな影響が出ることが懸念されています。
しかし、自分の身としては変化ないというのも何か変ですが、慌しい中で気持ちが滅入りながらも何とか過ごしてる感じです。
4月の鑑賞は5枚ですが、なんやかんやで聞けた方ではないかと。
今後、今のような状況がいつまで続くかわかりませんが、どうにかこうにか様々な事を気に掛けながらも、乗り越えていければいいなと思いますね。

というわけで以下より感想です。


MSB(期間生産限定盤)

MSB(期間生産限定盤)

80年発表1st。ジャズシーンのみならず、TV・映画・アニメ、クラシックなど多岐にわたる分野に活躍するピアニスト、佐藤允彦がクロスオーバー/フュージョン華やかなりし時期に結成したバンド。後にマライヤ、渡辺香津美バンドなどで活躍するSaxの清水靖晃やDrの山木秀夫が参加していることでも知られる。
内容も佐藤よりも若い世代である清水・山木、そしてBの高水健司をフィーチャーしたものとなっていて、彼らの鮮烈な演奏が印象的なものとなっている。当時20代であった彼らの溌剌とした丁々発止な様子に佐藤が触発されて、応酬する格好となっていて、熱気を感じられる好内容といえるだろう
当時の海外グループなどにも引けをとらないレベルの、クロスオーバーフュージョンであり、佐藤のジャズメンとしての素養が、きっちりと歴史の流れに結びついて提示されているサウンドだろう。全体としてスローナンバーの雰囲気に日本らしさが漂っているか。国内クロスオーバーフュージョンの良盤だ。


81年発表2nd。最終作。前作の清新な演奏から、よりアンサンブル度を高めた演奏が聴ける。当時気鋭のミュージシャンを紹介する向きも強かったバンドでもあったが、本作ではさらに発展し佐藤允彦をメインとしたバンドの一体感を増した様子が伝わってくる。演奏のまとまり度合いではこちらに軍配が上がる
フュージョンというよりはクロスオーバーといったほうが相応しい内容で、ジャズの延長線上にあるサウンドで、軽やかというには重みがあり、同時にジャズらしい陰影の濃い感触はフュージョンの煌びやかさには及ばない、鈍い光沢を放っているように思える。音の感触は当時らしくもあるが。
81年だとウェザーリポートが4ビートのジャズに回帰したりしていた時期ではあるが、そういったジャズへの先祖返りとフュージョンブームのハイテクサウンドの中間点、それらが絡まり合った内容なのはリーダーの佐藤のセンスとMSBの面々の若さが巧く融合した結果だともいえる。
70'sクロスオーバーサウンドを髣髴とさせている一方で、音の淡い感じや楽曲トーンの薄墨な印象は日本ならではといった風でもある。演奏は前作より複雑さを増しているが、儚さがイメージに思い浮かんでくるのはこのバンドの独特さなのかもしれない。本作が最後になったが目指す場所に到達している良盤だ


オン・マイ・ワン

オン・マイ・ワン

16年発表3rd。初めてのセルフプロデュース作にして20代最初の作品。前作までのギターを軸としたアコースティック&バンドサウンドに、打ち込みやエレクトロニクスといった新機軸を打ち出し、楽曲の幅を意欲的に広げてきた感のある一枚か。従来のSSW的なサウンドも見せているので、指向にブレはなさそう
デジタルな打ち込みを下手に入れて、従来の作風とはそぐわないものになるアーティストも少なくはないが、ジェイク・バグの場合はそこがかなりシームレスに絡み合っていて、デジタルネイティヴらしい感覚で捉えているようにも聞こえる。アナログとデジタルが同居した音というか。
アコースティックの良さをしっかりと掴んだ所でまた別軸でデジタルな質感の面白さも提示したり、この二つを混ぜたりもする。元々のソングライティングの良さもあって、アレンジが様変わりしても聞けてしまえるのも大きいか。そのあたりの若さと柔軟性がとても機能した内容となっている。
単なるフォークやカントリー、スキッフルサウンドを演奏するレトロ趣味の若者というイメージを払拭するように、きちっと現代的なアレンジを織り込んだ点でも、伝統と流行がちょうどいい塩梅で交じり合った作品なのではないだろうか。楽曲の自由度を得た点では意欲的な成長作という趣の一作だ。


16年発表OST。同名ショートアニメのサウンドトラック。今年20年に実写映画が公開予定だが、本アルバムは原作でコミカルに描かれるクラブDJの世界を上手く抽出した物となっている。正味30分にも満たない内容だが中身はとんかつの様に作品の旨みをぎゅっと凝縮したミックステープの趣でとても楽しい。
カクバリズム所属のMU-STARSメンバー、藤原大輔の作るトラックは、各キャラのDJプレイを意識したトラックメイクをしており、中にはとんかつ屋のキャベツを切る音などをサンプリングしていたりと、細部にまで行き届いた作り。それでいて、現代的なクラブで流れてきそうなものにきちっと仕上がっている。
キャラクターの特色を生かした各トラックもバラエティが良く出ていて、アルバムを通じて聞くとクラブパーティを疑似体験できるような作りにもなっていて、短い内容ではあるがしっかり中身の詰まっている。その聞き応えは十分すぎるほど。原作の可笑しさも忠実に再現しているサントラ名盤だ。素晴らしい


Morning Phase

Morning Phase

  • アーティスト:Beck
  • 発売日: 2014/02/25
  • メディア: CD
14年発表9th(通算12作目)。前作より実に6年ぶりの新作。第57回グラミー賞で「最優秀アルバム賞」「最優秀ロック・アルバム」、「最優秀エンジニア・アルバム」の三部門を受賞。14年のベストアルバムとの評価も名高い作品。事実「Mutations」以来、開拓してきたSSW路線の集大成、という向きを強く感じる
ミッドテンポで、ストリングスやアコースティックの響きを空間的に捉えている内容だが、同路線の作品と比べると洗練の極みというか、ひたすらにハイ(アッパー)な印象を受ける。かつてのダウナーにのた打ち回って停滞する姿はなく、なにか開放感に満ちた音が繰り広げられている。まるで福音の如く響く。
聞いている感覚としては、ゴスペルや聖歌に耳を傾ける厳かなイメージが思い浮かぶ。アルバムのタイトルの通り、朝のまばゆくも淡い陽の光を浴びているような穏やかな心地で聞く楽曲群が立ち並んでおり、1~10曲目までが一繋ぎのコンセプトで結ばれている構成で11曲目以降の流れとともに秀逸な作り。
今まで、ベック・ハンセンという音楽家に抱いていたシニカルで斜に構えた感覚が抜け、ある種達観した楽曲となっており、それこそかつて60年代カリフォルニアの音楽シーンを席巻していたヒッピーカルチャーやフォークソングの流れをまさしく継承する形で見事に昇華した内容に聞こえる。
それゆえの生みの苦しさが当然あった作品だと思うが、あの時代を生きた人間の夢想しただろう、理想郷的な音世界が形となって提示されているだけでも、芸術品として完成度が高いと言えるし、後の時代に生まれたベック・ハンセンがそれらを汲み取って、現代の音としてアップデートした所が重要なのかと。
楽家としての洗練と、時代の遺伝子を受け継いで作り上げられた傑作に間違いなく、内容的にもキャリア・ハイを記録した、ひとつの果実が見事に成熟した事の窺える一枚だ。まさしく集大成。

音楽鑑賞履歴(2020年3月) No.1370


月一恒例の音楽鑑賞履歴。

今月はまた1枚です。
新型コロナウィルスによる世界情勢、国内情勢の混乱が慌しかった印象で今なお継続中といったところですね。
オリンピックはもちろんその他、イベント関係は大小問わず、自粛、延期、中止という流れもあったり、人の波やらなんやらで
パニックには陥らないパニックみたいな状況下で日々が過ぎていった感じ。
娯楽を楽しもうにも心の底からは楽しめない、なんとも言えない状況ではあったかと思います。いや、音楽も聴いてはいましたけどね?
今年も1/3が過ぎて、人々が争わない戦時下みたいな雰囲気に世界が丸ごと陥るとは思ってもなかったわけですが。
この調子で一年が続きそうな予感もありでなんとも言えないですが、4月はもう少し聞きたいですね。

というわけで以下より感想です。


オデッセイ

オデッセイ

72年発表唯一作。モータウンには珍しい白人・黒人メンバー混合のソフトロックバンド。ディスコ期にヒットを飛ばす同名男女ボーカルグループとは別バンド。日本では渋谷系フリーソウルの流れで90年代に再評価された一作として知られている。聞けばなるほどレアグルーヴ的なサウンドが鳴り響く。
当時のソフトロックやラテンにフォーク、カントリー、ジャズ、ソウルミュージックなどの要素が溶け合って、確かにフリー・ソウル的な括りの音楽が奏でられている。コーラスワークもそれこそFree Designa辺りの男女ボーカルによるシルキーな響きが当時らしくもあり。
一聴きして、モータウン所属のバンドとは思えないほどにはソフトロック然とした内容で、ソウルよりかはカントリー辺りの比重が強く、聴けば聴くほど意外な感じではあるか。ソフトロックからAOR・ライトメロウと洗練されていく過渡期の中で示されたひとつの可能性として聞けるか。
特徴を見出せば、リズムやベースラインのハネ方に黒人らしいバネを感じなくもないが、メロディはフォークやカントリーのそれに柔らかなコーラスワークが重なるので、やはり総じてソフトロックという感触。32分ほどのランニングタイムもあり、聞きやすい良作といったところ。聴いて損はない一枚

音楽鑑賞履歴(2020年2月) No.1363~1369

月一恒例の音楽鑑賞履歴。
今月は7枚。最近の中では聞けた方ですね。
この所、Spotifyなどではブルースなどをちょいちょい聴いている感じですが、今回は60年代中ごろ~70年代初頭の作品が多かった感じですね。
ソウルミュージックが主です。図らずも当時の黒人公民権運動の渦を感じさせる作品ばかりになりましたが、当時の熱気が凄かったのが作品にも表れているのだなと興味深い鑑賞になりましたかね。
3月に入り、気候もだいぶ暖かくなってきましたが、新型コロナウィルスの影響が世界全体に波及していて、予断を許さない状況が続いてます。各自、体調に気をつけて、日々を過ごしたいものですね。
というわけで以下より感想です。


Other Voices/Full Circle

Other Voices/Full Circle

  • アーティスト:Doors
  • 発売日: 2015/09/04
  • メディア: CD
※以下の二枚はこちらの2枚組コンピレーションのレヴューとなります



71年発表7th。ジム・モリソン死去直後、残されたメンバー三人で製作されたアルバム。前作「L.A. Woman」から引き続きスワンプ色の強い内容で、ホンキートンクさやシカゴブルースのシャープな趣も感じられるサウンドに仕上がっている。演奏だけを抜き出して聴けば、脂の乗ったプレイが最良の形で聞ける
ただ惜しむらくは、やはりジム・モリソンの不在というファクターが非常に強いことか。あの存在感のある歌声を知っていると、レイ・マンザレクとロビー・クリーガーの歌う本作楽曲は一枚も二枚も落ちてしまうのは致し方ないところではある。無論二人のボーカルが目に見えて下手というわけではないが。
収録曲自体はジム・モリソンの死を感じさせない、バンドの新たな船出を感じさせるものなだけに、返ってその存在を強く意識をせざるを得ないものになっているのが最大の不幸というべきか。別の名のバンドとして再出発していたら、そういう印象も拭えたのではないかと思わずにいられない。
ただ、残された彼らはThe Doorsとして活動を続けることを選択した。ジム・モリソンという十字架を背負い、乗り越えようとした結果がこの作品であるならば、それはそれで再評価しうるものなのではないかと感じられる。長い間陽の目を見なかったが、現代でも聞くに堪える内容の良作と言えるだろう。




72年発表8th。ラストアルバム。作曲クレジットからも分かるように、ギタリストのロビー・クリーガーがイニシアチヴを取った一作で彼の才覚が開花した内容。初期のサイケデリックな作風や後期のスワンプ色の濃いサウンドとは打って変わって、中期の「ソフト・パレード」の作風を発展させたような音作り
後期の泥臭さと合わさって、ソウルフルでファンキーなサウンドが最大の特色だ。前作にわずかながら残っていたジム・モリソンの影形はなく、ロビー・クリーガーの音楽センスとギターが全面的に押し出された、レアグルーヴ的な趣も感じられる。この路線でバンドが続いていたのなら、というIFも尽きない
しかしここでも付きまとうのはThe Doorsというネームバリュー。同時期に出たベストアルバムが本作の売り上げを上回ってしまうという憂き目に会い、ジム・モリソンの存在をバンドイメージから払拭できないと悟ったメンバーは解散の判断を下すこととなる。
そういった事情を抜きにすると、本作はジム・モリソンやレイ・マンザレクの陰に隠れがち(それでもバンドのヒットソングはロビーの手によるものが多い)だったロビー・クリーガーがミュージシャンとして頭角を現した一作であり、とても聴き応えのある一枚で、「隠れ名盤」といっていい出来のアルバムだ
またそんなロビーのギターが全編に渡って鳴り響くアルバムでもあり、The Doorsの解散後、ギタリストとしての評価が高まるのも頷ける。The Doorsの最終作として、有終の美を飾っているわけではないがメンバーが次への第一歩を踏み出そうとしてる点で価値のある良盤だろう。


ハーレム・スクエア・クラブ1963(期間生産限定盤)

ハーレム・スクエア・クラブ1963(期間生産限定盤)

85年発表ライヴ盤。1963年、サム・クック32歳のエネルギッシュなパフォーマンスが聞ける、未発表ライヴ音源。当時録音されるも、レコード会社の上層部からスタジオ音源から受ける印象とあまりに違うと1985年まで塩漬けにされていたもの。しかし、流れてくる音は非常に熱気のこもった歌と演奏。
当時白人にも人気のあったシンガーで品行方正なイメージを求められていた、という状況がある中で本作の録音はハーレム・スクエア・クラブ、南部の黒人クラブでのライヴであり、ある種ホームグラウンドな場で披露されている音源だといえる。勝手知ったるなんとやらで、荒っぽくやんちゃな歌という印象だ
演奏も、キング・カーティスコーネル・デュプリーなどの名手を揃えつつ、彼が徐々に見せていたゴスペル指向を滲ませたソウルフルなステージングで、演奏・歌唱ともに63年という時代を考えるとあたかもガレージパンクのような勢いも感じさせる、ワイルドで力強いうねりが伝わってくる。
黒人の公民権運動という大きな渦中にあった当時の熱っぽさもあり、そういった運動にコミットしていたサム・クックや黒人たちの勢いがこのステージの熱気からもひしひしと伝わってくる内容だろう。それを抜きにしても、ただただ力強く響くソウルミュージックの傑作ライヴ音源として記憶したい一枚だ。


Hold on I'm Comin

Hold on I'm Comin

  • アーティスト:Sam & Dave
  • 発売日: 2006/01/31
  • メディア: CD
66年発表1st。サム・ムーアとデイヴ・プレイターから成るソウル史上屈指のデュオ。NYのレーベル、ルーレットからデビューするものの芽が出ず、メンフィスのスタックス・レコードに移籍して、発表されたデビューアルバム。サザン・ソウルのお手本と言わんばかりのシャープなソウルナンバーが立ち並ぶ。
楽曲は当時スタックスの専属スタジオミュージシャンだった、24歳のアイザック・ヘイズと25歳のデイヴィッド・ポーターがほぼ全面的に手がけており、演奏はスタックスのハウスバンドとして知られるMG'S、というこの上ない面子。そこへ二人の息の合ったソウルフルな掛け合いが入るのだから悪いわけがない
アル・ジョンソンのタイトなビートによるジャンプナンバーが非常に魅力的だが、一方で絶妙に配置されたバラードも切なく響き、シンプルに感情が伝わってくるのが堪らない。無駄なものを感じさせない、シンプルな力強さがわずか31分ほどのアルバムの内容を濃くしているように思う。ソウルの王道にして傑作の一枚


ダブル・ダイナマイト

ダブル・ダイナマイト

66年発表2nd。前作より8ヶ月後というハイペースなリリースだが、内容は堅調な一枚。本作もアイザック・ヘイズ&デヴィッド・ポーターのソングライターコンビがアルバム楽曲の半数を占め、このデュオを支える。サウンドのシャープさが抑えられた一方で、ミドルテンポでしっかりと歌い上げる楽曲が多いか
録音チャンネルがきっちりとヴォーカルと演奏で分けられた、当時らしいミックスになっている為、ヘッドフォンなどで聞くと分離過ぎてるように思えてしまうのはやや惜しいか。内容的にジャンプナンバーはほとんどなく、シンガーのソウルフルな歌唱に比重を置いたものな分、前作のようなインパクトはない
しかし、シングルカットされたバラード曲の4を始めとして、サム&デイヴというデュオの実力を浮き彫りにし、じっくりとかみ締めることのできる一枚かと思う。アルバムタイトルが彼らの異名から取られているように、前作では見せられなかった面を存分に披露した深化の一作だろう。演奏が良いのはもちろん言うまでもない。


Soul Men

Soul Men

  • アーティスト:Sam & Dave
  • 発売日: 2014/11/04
  • メディア: CD
67年発表3rd。前作から10ヵ月後のリリース。これまでのアルバムの中で一番、ヘイズ&ポーター楽曲が少ない一方でスティーヴ・クロッパーやブッカー・T・ジョーンズなどMG'sメンバーを始め、スタックスのバンドマンがこぞって楽曲を提供していていて、バラエティに富んだ構成となっている。
1stの溌剌さと2ndの腰の据え方がちょうどいいバランスで共存している作品という印象で、ハイペースなりリースながら、このソウルデュオの熟達がパフォーマンスにもよく表れている。彼らの代表曲のひとつで、タイトルソングである1は当時の公民権運動に影響されたことでも有名な一曲。
演奏も録音も日々進化していく時代の中で、音が洗練されていき、楽曲も複雑化の一途をたどっていく事になるが、この盤に収められた歌や演奏は力強くシンプルに響く。60年代の熱気と激動の中で、ソウルフルな曲もバラードも聞く者の心を捉えて離さない、二人の歌とMG'sたちの演奏が完全無欠な傑作だろう


Pastel Blues

Pastel Blues

  • アーティスト:Simone, Nina
  • 発売日: 2006/02/14
  • メディア: CD
66年発表10th(通算15作目)。ジャズシンガーにして市民運動家としても知られる、ニーナ・シモンのアルバム。当時の黒人公民権運動の渦も感じられるか。まず何よりもとにかく「歌」であり「声」のアルバムという事が前面に押し出されている。その深く野太い声は呻きのような歌となって、耳に襲い掛かる
バンドの演奏も、彼女の歌をこれ以上なく活かそうとするため、収録曲の中にはハイハットのみの伴奏で主役を見事に引き立てているものもあるほど。それだけ「声の存在感」は作品の大部分のウェートを占めている、という事の証なのだが、実際その歌声は魔術的な魅力を秘めているといえる。
このアルバムのハイライトはなんといってもラストの10分もの大曲となっている「Sinnerman」。トラディショナルソングであり、後に映画やドラマなどに取り上げられる一曲だが、彼女の呪術的かつスピリチュアルなボーカライズがいっそう魅力的なものへと昇華させている。体感時間はあっという間だ。
当時の黒人公民権運動へのメッセージソングとしての意味合いがかなり強い、曲の取り上げ方で「I cried, power(Power to da Lord)」の「Power」の部分が強調されている事からもわかるように、公民権という権利を強く求めているようにも聞こえる。そういった怒りと願いが込められた名演だろう。
他の楽曲(スタンダードなど)も、彼女の呪文にも似た歌声によって、新たな魅力が付加されたものとなっており、その深い歌声のインパクトは絶大だろうかと。「Sinnerman」一曲だけでも聞く価値のある一枚であり、ジャズという枠に限定されない、濃縮された黒人音楽が聴ける作品だ。

音楽鑑賞履歴(2020年1月) No.1360~1362

月一恒例の音楽鑑賞履歴。
20年一発目の履歴です。
3枚。
もうちょっと積んでいきたい所ですが、仕方ない。
イラケレ、EW&F、ボウイの初作というラインナップです。
まあ、この記事の主眼のひとつは生存報告でもありますので、聞く数は少なくとも定期更新を心がけて生きたいところ。
というわけで以下より感想です。



イラケレ +3(期間生産限定盤)

イラケレ +3(期間生産限定盤)

  • アーティスト:イラケレ
  • 出版社/メーカー: SMJ
  • 発売日: 2016/04/27
  • メディア: CD
79年発表ライヴ盤。通算6作目にしてCBS/コロムビアからリリースされた世界デビュー盤。NYでのニューポート・ジャズ・フェスとスイスでのモントルー・ジャズ・フェスのパフォーマンスを収めた、ラテン・ジャズ/クロスオーバーの名作として数えられる一枚。のっけからテンションの高い演奏が聞ける。
キューバ音楽のイメージというユルいレイドバックした音楽を思い浮かべがちだが、この盤で鳴り響くのは鋭利なホーンセクションやパーカッションの情熱的なリズムに導かれて、躍動する熱気溢れるバンドミュージックだ。レイドバックどころか実に攻撃的な演奏が展開されていて、圧倒される。
グルーヴの熱気だけでなく、プレイヤーたちの演奏能力の高さもあいまって、濃度の高いラテンミュージックを浴びせられる様はまさに血湧き肉躍るといって過言ではない演奏内容で、時を忘れさせてくれる。この時期がバンドの最盛期ということもあって、質量ともに申し分ない名盤だろう。オススメ。


天空の女神

天空の女神

81年発表11th。力作かつ大作だったにも拘らず、揮わなかった前作を受けて挽回を目指して作られたアルバム。ヴォコーダーなどデジタル楽器の導入しつつ、EW&Fの王道的なサウンドが繰り広げられている。ディスコ、R&B、ブラック・コンテンポラリーが一緒くたになった、エネルギッシュな内容は巻き返しを図っているようにも。
日本でもよく知られる大ヒット「Let's Groove」を含みつつ、D・フォスターなどのおなじみの作曲陣が参戦、グループとしては絶頂期といわんばかりの切れ味鋭い演奏で有無を言わさぬ勢いを見せ付けている。何食わぬ顔で軽々と曲芸を見せる軽業師のごとく、キワのキワを渡り歩く完成度の高さを強く感じるか
しかし、グループの歴史を眺めると、このアルバムが彼らの絶頂期の終わりの始まりでもあり次作以降、少しずつ人気・クオリティともに鳴りを潜めていくこととなる。その面からも、EW&Fの華々しさを実感できる最後の大花火といった趣も感じられる一枚だろうか。その分の聞き応えは充分すぎるくらいだが。


David Bowie

David Bowie

  • アーティスト:David Bowie
  • 出版社/メーカー: Edge J26181
  • 発売日: 2011/03/11
  • メディア: CD
67年発表1st。いわずと知れたロックスター、デヴィッド・ボウイの初作。奇しくもビートルズ「Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band」と同日リリースを飾っている。その内容は、当時のマネージャーのアイディアでボブ・ディランのようなSSWを狙ったものとなっており、ボウイが全編作詞作曲している。
ただ想定されていたフォークソング的な物とは異なり、英国らしい戯作的でシアトリカルな歌唱、ポップな曲調とは裏腹にアシッド・フォークめいた、それこそサイケな趣を感じさせるメロディなど、この時点では開花していないにせよ、後のキャリアを髣髴とさせるスタイルがすでに垣間見えているのが特色か
その意味では可能性が詰まっている一枚ではあるが、当時所属していたデッカ傘下のデラム・レコードでは芽が出ないまま終わり、2年後の「Space Oddity」にて才能を開花させるのは周知のとおり。ある種、鬼子のような扱いの初作だが、青さの残るボウイという才能の萌芽が窺える貴重な作品だろう。

音楽鑑賞履歴(2019年12月) No.1358~1359

月一恒例の音楽鑑賞履歴。
明けましておめでとうございます、と言うには日が経ちすぎてしまいましたが。
1月も下旬に入ったところで、新年最初の音楽鑑賞履歴です。
昨年12月はシングル2枚しか聞かなかったのは過去最低記録かなあとは。
音楽はSpotifyで聞いてはいるんですけど、忙しさにかまけて家で鑑賞する時間をとらなかったのがこの結果でしょうかね。
買っている分を消化したいなと思いつつ、今年も気ままに音楽鑑賞していければいいなと思います
というわけで以下より感想です。


16年発表SG。同年放映のアニメ「美少女戦士セーラームーンCrystal」第3期の主題歌曲集第一弾。「ニュームーンに恋して」は3バージョン+αある内の作曲者、やくしまるえつこのバージョンが本作。やくしまるらしい柔らかなメロディが力強い演奏で聴けるドラマティックな一曲。特筆すべきはギターソロ。
個人的には10年代の中でも屈指のギターソロといっても過言ではなく、ソロの入りから抜けまでのエモーショナルな感覚は得も言わせぬ出来栄え。これだけでも買う価値のある演奏だろう。カップリングはED曲。「百合ップルの元祖的存在」ともいわれるコンビが歌う耽美な一曲。
目の前に二人だけの世界が広がるとは言いすぎだが、そういった密な雰囲気を感じる一曲。ただ曲としては佳曲の域を抜け出ないか。キャラクターソングとしての水準はクリアしていると思われるが、それ以上のものではないか。OP曲が強烈なのもあって影が薄くなるのは致し方ないが内容的は良シングルだろう


TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』オープニングテーマ「Crazy Noisy Bizarre Town」

TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』オープニングテーマ「Crazy Noisy Bizarre Town」

  • アーティスト:THE DU
  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 発売日: 2016/04/27
  • メディア: CD
16年発表SG。こちらも16年放映のアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』の1クール目主題歌。作品の舞台である99年、ひいては90年代を想起させるブラックミュージック調の男性アイドルグループ的なポップソング。カップリングにはEDMバージョンも収録されている。なかなかの良曲。
90年代におけるバブル崩壊後の不穏な空気とそのバブル景気の残り香を嗅ぎ取れる、享楽的な趣もあり、連載当時の時代も浮かび上がらせる二重三重に90年代をコーティングした10年代後半のホップスとして聞かせる手腕はとても興味深い。第三部から雰囲気がガラリと変わる印象も与えているかと。
そういう点からも光と影の明暗が色濃い90年代を物語りつつ、10年代後半のアニソンとして機能しているのは時代が一回りした感触もあり、作品の内外から生まれるイメージをうまく押し出していると感じる。何度聞いても聞き飽きない一曲といえるだろう。