音楽鑑賞履歴(2016年11月)

月一恒例の音楽鑑賞履歴。音楽メーターの感想を記事にしてまとめてます。

20枚。月後半はブログの更新とかして聞く時間を削ってた割には聞けてますね。
ようやく。2014年分の購入CDを聞き終わりました(遅い
Base Ball Bearの「(WHAT IS THE)LOVE&POP?」から2015年購入分です。
まだ一年以上の積みがありますが地道に聞いていければなと。
定期更新記事の今年分はこれが最後です。やりだしてもうそろそろ2年目もおしまいです。
何とか続けられてますね。
まあ、聞いたものの感想をつらつら書いてるだけですので需要は完全に無視してます。
今後ものんびり続く限りやっていきたいと思います。
今年の更新は例年のアレをやっておしまいにしたいと思いますが、さてどうなりますことやら。

では、以下から感想です。

11月の音楽メーター
聴いた音楽の枚数:20枚
聴いた時間:569分

ZoomZoom
98年発表5th。二度目の再結成盤。ドラムにあの名うての敏腕ドラマー、テリー・ボジオを迎えて製作された。音の感触としては1st〜2nd辺りのカラッとしたパワーポップに回帰していて、ビートルズライクな甘酸っぱさのあるメロディをタイトなツインギターとリズムで喧しくコーティングしている
テリー・ボジオも初期サウンドを意識してか、変なオカズは入れずに、ごくごくシンプルに8ビートを叩いているという逆に珍しいプレイをしてるので、実力の高さが良く分かる演奏。流石にもう弾ける若さと瞬発力はないが良メロディとコーラスワークは熟練の域に達していて、紆余曲折あった末の年輪を実感
さまざまな困難があった末に原点に返ってきたような、そんな印象すら受ける。金太郎飴だと言われてもそれがどうだと開き直った感じもあるが、この盤で聴ける演奏は何よりも楽しそうだ。売れ線とかも気にせず、好きな音楽を奏でる男たちの姿が目に浮かんでくる。派手さはないがポップで楽しい良作だ。
聴いた日:11月01日 アーティスト:Knack
What IfWhat If
78年発表2nd。前作よりさらにテクニカルになった印象を強く感じる。かとなくメトロポリタンなイメージが浮かび上がるのは演奏が全体的にソリッドになっているからか。前作のほのぼのとした牧歌的な雰囲気はあまりない一方で、アンサンブルの複雑さは増して、メロディアスさにも磨きがかかる。
カントリー&ウェスタンに感じられる大らかな雰囲気も残っており、北米プログレ特有のSF的趣と相俟って、ヨーロッパのそれとは一風違ったサウンドが聞けて楽しい。なにより音の肌触りが適度にポップでもあり、シリアスになり過ぎない気楽さは全体の抜けを良くしているように思う。聴き応え満点の良盤<
聴いた日:11月02日 アーティスト:Dixie Dregs
Night of Living DregsNight of Living Dregs
79年発表3rd。Dixie Dregs名義では最終作。この後にThe Dregsと名前を短縮することとなる。同年度グラミー賞ロックインストゥルメンタルパフォーマンス部門ノミネート作品。スタジオ録音と78年7月のモントルージャズフェスのライヴを収録している。なお収録曲は全て新曲。タイトルとおどろおどろしいジャケットは中心人物のスティーヴ・モーズのホラー映画好きが反映されたもの。
前半はスタジオ録音、後半はライヴ音源となっており、スタジオ録音はかなりアメリカンロックに寄っていて、ロック的なダイナミズムを感じる一方、パット・メセニーのようなコンテンポラリーさも兼ね備えている。後半のライヴ音源は彼らの真骨頂であるカントリー色が色濃く出た曲がずらりと並ぶ。
スタジオ録音の畏まった感じを払拭するようにホットで爽やかな土臭さ、あるいは田舎臭さ全開の軽快でポップかつテクニカルな演奏が迸っている。全体的にいえば、1stに近いノリだが過去作以上にキャッチーさが印象に残る作品だろうと思う。スタジオもライヴもどちらも楽しめる一粒で二度美味しい良盤
聴いた日:11月03日 アーティスト:Dixie Dregs
ハピネスチャージプリキュア!ボーカルアルバム2ハピネスチャージプリキュア!ボーカルアルバム2
14年発売同名アニメのボーカルアルバム第2弾。キャラクターソング集だけあって、各曲キャラのイメージに合わせたものになっている。7のように劇中のフィニッシュ技で使用する曲もあり、歌唱力のあるキャストが揃っている印象があり、そういう点ではレベルが高いのではないと感じさせる一枚。
曲調もバラエティが豊かで、全体的に90年代的なJ-POPの雰囲気が強いだろうか。メタル調もあれば、アイドルソングな曲もあったり、渋谷系を感じさせるものも。あと現時点で歌手中島愛の最後の曲が収録されているアルバムとしても記憶しておきたい。ポップで聞きやすさがある一枚です。
聴いた日:11月04日 アーティスト:TVサントラ
恋玉コレステロール恋玉コレステロール
14年発表ミニアルバム。アニメ「サムライフラメンコ」の劇中アイドルユニットが発表したという体の劇中歌&ED楽曲集。前期EDが単独でシングルリリースされているが、こちらにもばっちり収録されているので、手っ取り早く手に入れたい場合はこちらがお勧め。収録曲はどれも粒揃いの出来で唸らせる
70年代的なディスコティークなメロディや90年代っぽいテクノやギターサウンドも落とし込んで、現在のクラブミュージックっぽさを醸し出すカジュアルな趣にとても高いポップ性を感じる。30分にも満たない収録内容だが中身がぎゅっと詰まっている感じがするのは単純に完成度の高さを物語っている。
ハイライトというより特筆すべきはボートラの6。4のライヴバージョンという形だが、本編内容と連動して、ヤケクソ気味の泣き声演技での歌唱はなかなかに壮絶。苦労が偲ばれるが、結果的に歌った声優さんの気迫の勝利。この一曲だけでも聴く価値はあるが内容は実に充実した作品だと思う。
聴いた日:11月04日 アーティスト:ミネラル★ミラクル★ミューズ
ドキドキ!プリキュアボーカルアルバム2ドキドキ!プリキュアボーカルアルバム2
13年発売同名アニメ作品のボーカルアルバム第二弾。とにかくサウンドの華やかさとパワフルさで押すキャラクターソング集。歌唱もキャラらしく歌っていて、イメージに沿った印象。90年代後期〜00年代的な密度のあるメロディが全体を支配していて、スローな曲でもなにか煌びやかさがあるのが特徴か
意外性もあるアルバムで5のダンサブルサに驚いたり、8のキャラクターの饒舌さに驚いたり、3での渕上舞の歌唱力に舌を巻いたりで、色々弾けてた内容になっているのが面白い一枚。密度が高い分、ど派手な装飾さが目立つが、それに負けないくらいキャスト陣の元気の良さを感じる、らしさのある作品だ。
聴いた日:11月05日 アーティスト:TVサントラ
SECOND THOUGHTS/SECOND MOVE(紙)SECOND THOUGHTS/SECOND MOVE(紙)
・78年発表2nd。森園勝敏在籍期最後のスタジオ作。当時のフュージョンの流行でもあったラテンやブラジリアン音楽を取り入れつつ、メロウからサヴタージな印象を伴うサウンドが強くなっている。その一方で長尺曲の7を配するなどといった技巧派ジャズロックの表情も見え隠れしており硬軟入り混じる
前作のスピーディなテクニカルさはあまりなく、アンサンブルと曲構成などで冴えを見せているのでよりサウンドの幅は広がっている一方で、バンドのメロウな部分とソリッドな部分の両立はあまり上手く行っていない。というより水と油のように分離しているような印象を感じる。
図らずもバンドの分岐点のような作品だ。ポップでメロウな部分とテクニカルでソリッドな部分を天秤にかけた結果、フュージョンとして深化することを次作で選び取ることになる。大衆性と音楽性、どちらかをとるか難しい選択を迫られた作品。もちろん内容は水準以上のものだろう。
聴いた日:11月06日 アーティスト:PRISM
十七歳十七歳
07年発表2nd。タイトルどおり17歳の青春をコンセプトに仕立てた楽曲が目立つ。希望や苦悩や感情の鬱屈、歓喜などなど、思春期に起こりうるだろう出来事をひっくるめて「青春」としてパッケージングして、現代的なポップなフレーバーを塗したビート感の強いギターロックとして繰り出すのが力強い
デビューから一貫して、ノーシンセサイザーに拘る不器用さも、ポップにリズム刻むギターロックの可能性を突き詰める愚直さも相俟って、若さ弾ける青春に呼応する。ポストパンク直系の直線的な演奏がポップに響く面白さもあって、真っ白なキャンバスにその蒼さを叩きつけるような鮮烈な一枚ではないかと
聴いた日:11月07日 アーティスト:Base Ball Bear
PHASE 2PHASE 2
14年発表3rd。わずか40分ほどの収録内容だが詰め込まれている密度は非常に濃い。若さに任せて、飛ぶ鳥を落とす勢いで目まぐるしく変わるメロディと曲展開は、バンドの勢いをそのままに貪欲かつあらゆるものを吸収しようとしている姿勢が成長としてきちんと形になっているからように思える
基本的にラウド&エレクトロなスクリーモだが、からっとしたアメリカンテイストやトロピカルなパーカッションを潜ませたり、ピアノを効果的に使ったり、ラウドな演奏の中にも変化をつけている一方、メンバーの成長が著しく、演奏は華々しくもかなり骨太にバンドのグルーヴ感を生み出している。
と同時に、非常に真っ直ぐに自分たちのやりたい音楽に向き合っている印象がある。そんな折れない軸の太さに揺るがない信念のような物を感じるのだがそれがどこまでいけるのか、まだまだ興味が尽きない。日本では華もあって筋肉質なサウンドで勝負するバンドは珍しいだけに期待は高まる一枚だろう。
聴いた日:11月08日 アーティスト:and Loathing in Las Vegas Fear
All That We Have NowAll That We Have Now
・12年発表2nd。音がエレクトロ方面に傾いた作品。というより、エレクトロの方法論でラウドロックを繰り広げているといっていいだろう。演奏はよりソリッドでへヴィになる一方で、レイヴ感というか享楽性がより高まっており、まるで花火のようにはじけ散るパトスが迸っている。
その煌く情熱は間違いなくメンバーの若さによるものであり、カオティックに目まぐるしく変化するメロディの奔流はとてつもなく高濃度なものだが、わずか36分のランニングタイムの中には倍以上の体感時間が詰め込まれている。しがみついていないと突き放されてしまうような勢いを感じる。
バンドの成長と音楽性の広がりも感じなくはないが、幾分、ロックよりエレクトロに振れているせいか、大衆的な親しみやすさからは外れた向きも。が、無我夢中に踊り狂うにはまたとない格好の一枚だ。次作ではよりロック的なダイナミズムを取り入れるが、この盤でもそのキレは十分感じられる、好盤。
聴いた日:11月10日 アーティスト:and Loathing in Las Vegas Fear
インナー・コンフリクツ<FUSION 1000>インナー・コンフリクツ
78年録音盤。75年作の「A Funky Thide of Sings」をよりシャープにしたような作品で、管楽器とパーカッションをふんだんに取り入れた大所帯構成で演奏されている。サウンドの派手さでは「A Funky〜」に及ばないが、その分、かなりリズムに特化した作りになっている。
シンセのシーケンサー音にひたすら、コブハムのドラムソロを重ねていくという、ある種の人力トランス的な実験曲(10分超の大曲)で開幕し、その後はチカーノ的なラテンパーカッションが細かく入り乱れる西海岸的な音が非常に目立つ構成。ブレッカーブラザースやジョンスコが参戦しているが印象は薄い
この盤の最大の貢献者はピート・エスコヴェドと後にプリンスのプロデュースでデビューするシーラ・Eの親子が織り成すパーカッションだろう。コブハムの手数の多いドラミングと細やかなリズムが絡み合って、かなり躍動的かつ魅力的なリズムが聞ける。それを装飾するのが他の楽器という住み分け。
「内的葛藤」と題される作品だけあって、他作品に比べると内省的な趣すら感じられる地味さの否めない作品だが、一種のリズムミュージックとして聞くと十全過ぎる魅力を放っている一枚に思える。人力トランスだと考えるとジャズやフュージョンではないが、見方を変えれば、かなり面白い作品だ。
聴いた日:11月10日 アーティスト:ビリー・コブハム
Level 42Level 42
81年発表1st。UK出身のジャズ・ファンク/フュージョンバンドの初作。フロントマン、マーク・キングが繰り出すテクニカルなスラップベースとライトメロウなメロディに乗っかったSFフレーバーのある楽曲が面白い。バンド名がSF小説の「銀河ヒッチハイクガイド」が由来な点もその雰囲気が強い
ライトメロウなサウンドとテクニカル指向なインストが二本刀となっていて、バンドの魅力であり、サウンドの顔でもあるスラップベースが所狭しと全面に押し出されているのは、ベース好きには美味しい作品かと。プログレ的な雰囲気もわずかながらに感じられる一方でそのどっち付かなさは弱点でもある。
後にヒット街道を進むことになるが、この時点ではバンドの両極な武器を両立させようとしており、そのせめぎ合いが興味深い、どっちも魅力的な分、嬉しい悩みというべきかも知れないが、バンドの方向性が確定する以前のカオスな感覚が心地いい作品だ。SFチックなインストが結構楽しい。
聴いた日:11月11日 アーティスト:Level 42
Early TapesEarly Tapes
82年発表2nd。なのだが、録音自体は1st発表以前であり、原盤を当時の所属であるポリドールが買い取って、リリースされたという不思議なリリース経緯を辿っている作品。音自体は1stで感じたライトメロウ色が希薄な分だけ、かなり硬質な雰囲気が漂っているサウンド。実力の高さが窺える出来。
ライトメロウな色合いがないだけあって、歌唱より演奏の方に比重が偏っており、テクニカルなジャズロック/フュージョンとして高水準な演奏が聴ける。アンサンブルも堂に入ったもので、その上でマーク・キングのベースがスラップに限らず、暴れ回っている印象。音はかなりスタイリッシュに決めている。
こうやって聞くと、1stのライトメロウ色は後天的な要素であり、インスト曲がバンドの肝であるということが確認できる。売り上げを出す事を考えれば、必然的な選択だったのだろう。とはいえ、ここで聞ける演奏も十分聞き応えのある楽曲揃い。ジャズファンクでスラップベース好きには狙い撃ちな良盤だ
聴いた日:11月12日 アーティスト:Level 42
フェイセスフェイセス
80年発表10th。記念すべき10作目は「顔」をテーマに置いたダブルアルバムの大作。前作に引き続きAOR勢がちらほら参加しており、延長線上的な趣も感じられる。が、この大ボリュームにも拘らず、華やかさにはやや欠ける作りになっており、前作の雰囲気を期待すると肩透かし感は否めない。
そうは言ってもグループは依然絶頂期にあり、前作の派手さは流石にないものの、サウンドはよりタイトに引き締まった印象を受ける。80年代という来るべき新時代に、改めてグループの方向性を見つめ直した作品ともいえそう。華やかさをそこそこに、スポーティに体を動かしている印象が強い。
そういった骨太さや筋肉質な感じがディスコフィーバーを通過した先の音だったのと思えば、なかなか興味深い。グループの地力を感じられる作品だろう。前後の二作が大ヒットしただけあって、陰に隠れがちだが同等の水準にあり、ボリュームは十分すぎるほど。隠れ良盤といった所か。いぶし銀の一作。
聴いた日:11月13日 アーティスト:アース・ウィンド&ファイアー
Engines of CreationEngines of Creation
00年発表8th。当時流行してたドラムンベースやエレクトロを積極的に取り入れた作品。元々、1st、2ndがサイバーなサウンドだった事を考えれば、そのアップデート版か。デビュー当時から機器が進化している事もあって、エレクトロサウンドの表情は過去よりも豊かになっている。
そこへハードなギターが絡むと途端にサトリアーニの音楽に様変わりするのはギターサウンドも含め、個性があるからだと思う。奏でるジャンルは変われど、それに演奏者が引きずられないのは確固とした自信の表れでもあるのだろう。実際、アルバムから聞こえてくる音はどうしようもなくサトリアーニの音だ
気づけば、エレクトロらしいテクスチャーをも取り込み、従来のサウンドに摩り替わっていく感じはむべなるかなといった風。そこが美点でもあり欠点でもあるか。どうしてもギターの音にエレクトロが力負けしてしまっている箇所が散見されて、絡ませ度合いについて面白くもあるが完成形かといわれると疑問
もちろんサイバーなサウンドに乗っかるギターはいつになくテクニカルな趣を全開にしているように感じ、悪くはないのだが。面白い部分と練り込みが浅い部分の落差が激しい作品ではあるか。テクノなどに慣れていると楽しめるがもはやHR/HMの世界ではないので評価の分かれる一枚。あと一押し足りない
聴いた日:11月14日 アーティスト:Joe Satriani
Crystal PlanetCrystal Planet
98年発表7th。ここまでのキャリアの集大成的な作品、だと思う。拡張してきた音楽の幅をキュッと集約させ、エネルギッシュにドライヴするギターインストとして纏め上げているのは職人芸とでもいうべき技を見るよう。コンスタントに盤を重ねてきた経験の厚みがサウンドの奥行きを深くしている。
元々テクニカルなプレイに定評があったわけだが、積極的にブルースなどフィジカルな感性が必要となる音楽要素を取り入れた事で、テクニック一辺倒に陥らずに音の表情が非常に豊かになった事がこの盤の豊穣な実りになっている気がする。素地は割りとシンプルなロックなのだけど、作り込みが精緻なのだ。
疾走感溢れるものやファンキーな横ユレ、落ち着いた野叙情的なフレーズ、サイバーな趣などなど、バラエティが豊かなのも特徴だが、それらのどれもが綿密に掘り込まれていると過言でもない。サウンドの緩急、テクニックとフィーリングがバランス良く美しく炸裂する、キャリアの成熟が滲み出た名盤だ
聴いた日:11月14日 アーティスト:Joe Satriani
It's Album TimeIt's Album Time
14年発表1st。ノルウェー出身DJの初作。アープやローランドのヴィンテージシンセをふんだんに使った、懐かしくも新鮮なスペーシーかつディスコティックなエレクトロサウンドはかのミュンヘンディスコに肉薄したものだ。70年代末〜80年代初頭の硬質かつスタイリッシュなシンセの音が蘇える。
シーケンサーのピコピコ音にメタリックな電子音がぶりぶり鳴り響く。原典と比べると本作はそこに生音を絡ませている点に着目したい。サンプリングも含まれているが人の叩くリズムと融合させることでより近未来的なサウンドに肉体性が帯びており、躍動感が増した事がこの盤の鋭さだろう。
そういったレトロな質感の一方で、奏でられる音楽にはサンバなどのブラジリアンミュージックのテクスチャーも絡めており、ディスコティックな音に限らず、さまざまなジャンルを複合的にミックスしているのも非常に現代的だ。それらが重なり合う事で新鮮さが出た音だろう。満を持して送り出された傑作だ
聴いた日:11月16日 アーティスト:Todd Terje
(WHAT IS THE)LOVE&POP?(WHAT IS THE)LOVE&POP?
09年発表3rd。前作と比べると勢いが落ち着いた分、青春の陰影を濃くした印象を受ける作品。サウンドや構成が練られた分、曲の歌詞も複雑な感情が描かれているように思う。苦味というか屈折というか淀みというか。年を経ればなんてことのない事に拘泥してた、ような思春期の裏側を奏でている感じ。
影響先のポストパンクの焦れた雰囲気を青春の光と影に当てることで、ある一時期の、一瞬に発せられる感情の機微を陽炎のように映し出しす。波打つ心はとても透明だけど乱反射している。そういう青春の情景を切り取った、成長を窺わせる一枚だろうと思う。反面、曲毎のカロリーが重ためなのが玉に瑕か。
聴いた日:11月27日 アーティスト:Base Ball Bear
ソルファソルファ
・04年発売2nd。前作の路線を引き続き踏襲しながらも、より先鋭化した作品。シングル曲のキャッチーさもさることながら、アルバム全体を色づけているのは醒めた音の方か。華を配置する一方で地金を固めてきた印象を強く感じる。瑞々しい鮮烈さというよりは青臭い自問自答や内省を押し出している。
内省的な焦燥感や感情が押し出されているので、ロック的な衝動には自覚的に醒めている風にも受け取れる。ヒット曲の完成度は非常に高いが彼らの肝はそれ以外にあるような感覚。アルバムの構成もそういった水と油のような二極を抱えた構成で、11と12はどちらもアルバムのハイライト的な曲だ。
聴いた日:11月29日 アーティスト:ASIAN KUNG-FU GENERATION
犬は吠えるがキャラバンは進む犬は吠えるがキャラバンは進む
93年発表1st。ソロ初作。いわゆる70sソウル、ニューソウルやフィリーソウル辺りに多大な影響を受けた音で陽の光や土臭さが香る音でフリッパーズのような洒脱さや都会的な雰囲気は不思議といっていいほど感じられない。そして非常に「実直」という印象を受けるアルバム。
こういった雰囲気は小坂忠の名盤「ほうろう」に通じるものがある。向こうが港町っぽさがある一方で、本作は平野の街中っぽい。都会から隔絶したような達観した趣は、後のキャリアを考えるとこの当初から滲み出ていたものなのだと実感する。そういう点では歌詞もその裏側にシリアスさを含んでいるか。
歌詞も音も影響先のニューソウル的なテーマを打ち出しながら日本らしく禅問答のような複雑さも抱えて、一筋縄では行かない作りだ。歌唱も決して抜群に上手いわけではなく味のあるもので、その辺りも極めてホームメイドな印象を与える一因だろう。初作に全てが詰まっているというのに違いない一枚。
聴いた日:11月30日 アーティスト:小沢健二

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