音楽鑑賞履歴(2016年12月)

月一恒例の音楽鑑賞履歴。音楽メーターの感想を記事にしてまとめてます。
18枚。
新年明けましておめでとうございます。今年も当ブログをよろしくお願いいたします。
久々に20枚割れしてしまいましたが、まあその日の気分なので。
昨年は本当にいろいろありましたが、今年はどうなっていくのかどうか。
そういった期待と不安もありつつ、音楽感想はいつも通りの進行でいきたいと思います。
当面の目標は一昨年の分を出来るだけ早く切り崩して、去年購入分にたどり着きたいですね。
もう残ってる枚数はあんまり考えずに、どんどん聞いていくつもりです。
では、以下から感想です。

12月の音楽メーター
聴いた音楽の枚数:18枚
聴いた時間:643分

EclecticEclectic
02年発表4th。6年ぶりの新作にして16年時点で最後のボーカル収録のスタジオ作。モータウンと契約し、NYで録音された作品で当時のR&Bサウンドスティーリー・ダンのようなクールなAORを髣髴とさせる音作りが非常に顕著。すでに老成してる感もあるがストイックに削ぎ落とされた趣。
サウンドの質感が変わりはしているが、行っていることはソロデビューからの延長線上にあると思う。前段階で99年にマーヴィン・ゲイのトリビュートに参加していることからも明らかで、ニューソウル的な問題意識を初めてシリアスに押し出した盤と考えることはできそうだ。愛の普遍性についてがメインだ
それまでの音に比べても、隙間が多く、重低音の響き渡る作り。その引用先は透けて見えてくるが、そのこと自体はあまり重要ではなく、やりたい事を突き詰めた結果、選び取った音のようにも感じられるし、時代に圧されて成立した音のようにも思う。そして、彼のルーツに厳然と日本が存在しているという事
どんなに遠く離れた、異国の地で音楽を作ろうとも流れる血は変えられず、その抗い難さをこの盤を聞いて感じる。どこまでもソウルになろうとする一方で日本人であるということを強烈に見せ付けられる、セクシュアルな作品だろう。派手さも華やかさも必要ない。黒の濃淡だけを感じる事を提示する一作だ。
聴いた日:12月01日 アーティスト:小沢健二
「Let Me Hear」 (初回生産限定)「Let Me Hear」 (初回生産限定)
15年発表3rdSG。アニメ「寄生獣〜セイの格率〜」の主題歌を含む全3曲入り。ラウドに振った曲とエレクトロに振った曲、その混合型という組み合わせ。特に表題曲のキラーチューン度は非常に高く、バンドの成長と高圧縮なサウンドが一体になって切れ味がかなり鋭い、強力な1曲となっている。
ひたすらにカオシックなサウンドが渦巻く中で冷静な感情でラウドに取り纏めていく一方で、1曲の中に詰め込まれたメロディのカロリーも非常に高い。1曲の中で暴走して、静謐になり、また爆発する。秒単位でめまぐるしく変化を遂げ、叩き付けられる。が、それだけに止まらない足取りの軽さが頼もしい。
どこまで成長するのか、どこまでたどり着くのかが分からない感覚がこのバンドの非常に面白いところだと思う。このシングルで一つ頂点を踏破した感はあるがこれからもまだまだ楽しませてくれそうな期待を持たせてくれる痛快なシングルだ。
聴いた日:12月02日 アーティスト:and Loathing in Las Vegas Fear
BABYMETAL(通常盤)BABYMETAL(通常盤)
14年発表1st。女性アイドル×メタルという有りそうでなかったコンセプトを打ち出して、瞬く間に世界に飛び立っていったアイドルユニットの初作。恐らくこれが出た時点でまさかウェンブリーでライヴを行うことなんて、関係者も夢にも思わなかったんじゃなかろうか。音もメタル幕の内といった趣。
一概にメタルといっても、カテゴリは様々あって独立したジャンルになっているがこの盤では出来得る限りの主なメタルジャンルを横断した作りになっている上、そのどれもがメタルと言える、本気の演奏で高水準を保っている事からもこの盤の強力さは窺い知れる。一方でアイドルらしさも堅持している。
この盤の見事なところのアイドルサイドとメタルサイドのバランスが良い曲がものすごくキャッチーなものとなっていて、メタルでありながらアイドルソングというナンセンスな感覚を成立させてしまっている点に尽きる。2や3はそれの証明として、十二分すぎるほどの魅力を放っている代表曲だ。
反面、まだアイドルサイドに引き摺られている部分も目立ち、ユニットの余白、可能性はまだ潜んでいるようにも見える。ただこの盤自体はそういった化学反応による爆発力が尋常ではないほど炸裂した盤であり、存在を叩きつけるという点では最上級の一発であり衝撃度はとても高い。
そう見ていくとキーワードは「無意味さ」のように思う。アイドルとメタルをくっつけるという「無意味さ」を成立させてしまうのは非常に「日本らしい」感覚でその辺りはYMOにも感じられるもののように思う。無邪気に両極端の要素を掛け合わせられるのはそこに「意味がない」からではないかと。
意味がないことに価値を見出して、面白がれる感覚が海外の人々にとっては新鮮に見られたのかもしれないがその辺りにこそ「ポップミュージック」の本質があるのかもしれないなどと、考えさせられしまう一枚だろうか。粗もあるが勢いが凄いので名盤たりうる雰囲気をびしばし感じる。
聴いた日:12月05日 アーティスト:BABYMETAL
CC
勢いとキレで突き進む性急な感じとポストパンク的な硬質な音には不思議と「光」をイメージさせるのはメンバーの迷いのなさと爽やかさゆえだろうか。それとも青春のまぶしい方しか見えていないような、無自覚な無敵さが滲み出ているせいだろうか。ともかくそういった鮮烈さが目立つ、痛快な一作だ。
06年1st。メジャーデビュー盤。同時にインディーズ時代からのサウンドの完成形だと思う。疾走感に満ちながらも、独特のコード感覚で織り成されるギターサウンドによって切り開かれていく青臭さと若さがなによりの肝だろうか。まだ何色にも染まらない雰囲気が非常にまぶしく感じられる。
聴いた日:12月07日 アーティスト:Base Ball Bear
Rhythm of LifeRhythm of Life
77年発表唯一作。ロイ・エアーズ・ユビキティのKeyが送り出したソロ作。脇はユビキティでの盟友で固められ、7と9以外はナラダ・マイケル・ウォルデンが叩いている。ロイ・エアーズ直系のコズミック・ジャズ・ファンクが鳴り響く作りでエレピやアープシンセの音がその印象を深めている。
サウンド的には高揚感が希薄で、クールネスが全体を支配する。ダンサブルではあるがアーバンな雰囲気やスピリチュアルな向きが強く、宇宙の深い闇に漂うような感覚の淡いグルーヴに心地よくなる。あっさりとしたメロウさが特徴的な一枚だ。スタイリッシュかつスペーシーな音を味わいたければお勧め。
聴いた日:12月08日 アーティスト:James Mason
LIVE AT BUDOKAN~RED NIGHT~(初回生産盤)LIVE AT BUDOKAN~RED NIGHT~(初回生産盤)
15年発表ライヴ盤。14年3月の武道館ライヴの模様を収録した作品。収録内容は1stと同一だが、既にスタジオ録音のものとはアレンジとニュアンスが異なっており、ライヴの臨場感と熱気共々楽しめるものになっている。と、同時にアイドルユニットらしい、コール&レスポンスがあるのがやはり特異か
面白いのはこのユニットは楽曲を「熟成」していくタイプであるという事だ。まずライヴありきのアイドルユニットであり、また神バンドと呼ばれるバックの演奏陣がアイドルの成長と共にサウンドをより鋭利にしていく様がこの盤からも感じ取れるのが興味深い。1st収録曲が生き物のように変わっていく。
実際、ライヴでありショーでもあるので、メタル×アイドルというコンセプトの旨みが凝縮されていて、パッケージより「演出」を利かせやすいのが功を奏している気がする。そういう点では1stよりもより研ぎ澄まされたパフォーマンスが聞けるし、彼女達のライヴを体感するという点でも良盤ではないかと
聴いた日:12月08日 アーティスト:BABYMETAL
ケンソー(ファースト)ケンソー(ファースト)
80年発表1st。当時400枚しかプレスされなかった原盤に76〜83年頃までの未発表曲とライヴ音源を増補した作品。高校から大学時代の音源ということも合って、今となっては若気の至りに他ならないトラックもあり微笑ましさも感じられるが、後の片鱗を感じさせる曲もあってなかなか侮れない出来
中心メンバーの清水義央作曲からは欧米のプログレ殻は感じられない、オリジナリティが見え隠れしており、水のように透き通る雰囲気のある音は日本固有のメロディらしさを感じ取れるなど興味深い一方で、清水作曲ではない曲の垢抜けなさもまた憎めない出来となっているのが面白くも感じられる。
もちろんそれらは、既存のプログレの影響を隠し切れないものだが、日本でプログレをやろうとする「若さ」ゆえの勢いに満ちている。さすがに5や6など、傍から見ても気恥ずかしくなるものもあるが、新たな挑戦をする若者の姿が窺い知れて、そういった所もここが「始まり」だったと感じさせる一枚か。
聴いた日:12月09日 アーティスト:ケンソー
ケンソーケンソー
・85年発表3rd。メジャーデビュー盤。前作から音はさらに洗練されて、ジャケットの絵のようにソフィスケイテッドされ、よりテクニカルフュージョンっぽくなった印象が強いが和のテイストを強く感じる神秘的なニュアンスが一線を画している。同時にそれまでの特色であるフルートを失った盤でもある
フルートが無くなった分、シンセサイザーを多用しているのもこの盤の都市的な響きを強くしているものと思われるが反面、サウンドは無機質な趣で郷愁を呼び起こすような情緒さはあまりない。出来の良さには何の疑いはないが、サウンドの強烈さは薄らいでしまった、悩ましい一枚。入門としては良作だろう
聴いた日:12月10日 アーティスト:KENSO
夢の丘夢の丘
・91年発表5th。バンドの過渡期だった前作を通過して、新体制でのフルアルバム第一作は地中海の穏やかな雰囲気と神秘的でミステリアスな印象の濃厚なサウンドとなった。全体にヨーロピアンな民俗音楽の趣で、楽器の響きもナチュラルなものへとシフトしており、より美的なニュアンスを強めている。
サウンドはかなり練り込まれている印象で、地中海のたおやかさとは裏腹にテクニカルなバンドの成熟が感じられ完成度は高い。しかし一方で、それまであった日本らしい、和風な叙情が見えなくしまっているのは、寂しいところではあるか。この盤の楽曲からは日本人らしい民族性は皆無だ。
日本人らしさは何かという議論は置くにしても、トラッドなどや欧州の民俗音楽らしさを志向した、という点では非常に完成度も高くプログレらしい一枚ではある。が、日本人バンドとしての独自性は希薄でどこか借り物という印象が付きまとう。もちろん演奏やアンサンブルにはらしさはあるのだが……。
聴いた日:12月11日 アーティスト:KENSO
エソプトロンエソプトロン
・99年発表6th。8年の潜伏期間を経て、送り出された作品は端的に「ロック回帰」。再生すると初手に聞こえてくるのは、ツェッペリンライクな重戦車サウンド。ロック的なダイナミズムを取り入れつつ、バンドの代名詞ある変拍子の嵐が織り交ぜてくるのは新機軸を感じさせる。
80年代から90年代初頭まで蔓延していた音の洗練からは真っ向から背を向けて、オルタナミュージックシーンと符合するかのように、積極的に粗野な質感を押し出すのは当時らしい時代性。実際、本作が以降の作品のベースになっているようでアジアンテイストも少し顔を出している。再出発の趣が強い一枚
聴いた日:12月12日 アーティスト:KENSO
球体の奏でる音楽球体の奏でる音楽
96年発表3rd。盟友であるスカパラのメンバーと編曲に服部隆之を迎えて、製作された25分強のアルバム。ロックやR&Bといったポップミュージックを敬遠するかのように、ジャズボーカルやエキゾチカ的なメロディを中心に据えたものとなっており、華やかというよりは柔らかく優雅な雰囲気が漂う。
前作までの印象を考えると、激変とは言わないまでも細波漂う穏やかな雰囲気と草臥れた印象を感じるのは間違いがなく、いくつかの楽曲からも何かの終わりを告げているかのようにも受け取れる。短いながらも示唆に富んだ作品だろう。これ以後、5枚のシングルを発売し、長い沈黙に突入する事になる。
聴いた日:12月15日 アーティスト:小沢健二
Ecology Of Everyday Life 毎日の環境学Ecology Of Everyday Life 毎日の環境学
06年発表5th。16年現在スタジオ最新作。全曲インストかつ当時執筆していた小説「うさぎ!」とリンクした内容の作品。なおディスコグラフィーの中でも最長の収録時間となった。非常にコンテンポラリーかつモダンなサウンドでジャズをベースにトライバルな響きを鳴らせている。
環境的というか生態学的というか。自然と寄り添う形で人間の作り上げた醜悪なシステムを批判してる点は書いていた小説の余波もあって顕著だと思うが、そこを踏まえずただ楽曲として捉えるのであれば、出来は十二分するほどではなかろうか。穏やかでオーガニックな雰囲気に包まれたメロディは割と複雑だ
インスト曲としての聞き応えもかなりあるのはアンサンブルの妙と小沢健二というセンスの成せる業だろうか。ともあれ、全然ポップではないが、ジャズや現代音楽なのを聞き好んでいるのであれば、良さはばっちり伝わるはずだ。良くも悪くもガラリと印象の変わった一枚。初手にはあまりお勧めできません
聴いた日:12月16日 アーティスト:小沢健二
singlessingles
01年発表編集盤。解散後に発表されたコロムビア時代のシングルを収録した内容。アルバム群では時代のトレンドを切り取ってきた彼らだが、こうやってフックの強いキラーチューンを並ばせると、ポップカルチャーとしての彼らの本質がより浮き彫りになっていると感じられる編集が興味深い。
ひたすらにファッショナブルだが東京の趣や歌謡曲らしさが隠し味になっているDisc1、対して、ハウステクノの熟しきったグルーヴがサイケな酩酊感を放ちながら、最終的に日本らしい紅白めいたお目出度さに回帰していくDisc2。シングルにこそ、その真髄が詰まっていると感じる良編集盤だろう。
聴いた日:12月17日 アーティスト:ピチカート・ファイヴ
PIZZICATO FIVE JPNPIZZICATO FIVE JPN
97年発売ベスト盤。タイトル通り、94〜97年にかけての楽曲を収録したグループ中期のベストアルバム。サウンド的には洒脱なハウステクノからロックやR&B、歌謡曲など雑多でハッピーな音にシフトしていく様子を捉えた内容となっている。東京という大都会の喧騒と響きがみっちり詰まっている。
聞いていて思うのは、編集盤だけあって、おそらく選曲したであろう中心人物の小西康陽の意図がかなり色濃く出ている曲順だということ。コンセプトありきで組まれているだけあって、他の編集盤と曲が重複していても、別個の流れを楽しむことができるのが彼の掌の内という印象を強く受ける。
その辺りはDJ的な感覚なのだろうけど、自前の曲でミックステープを作っていると思えば、納得は行く。翻っていえば、曲のキャッチーさにおいては絶対の自信があるからこそ出来る所業だと思う。その点では、その日の雰囲気や気分で選ぶ楽しさがあるし、そういう楽しみ方こそ彼らの音楽の真価なのだろう
聴いた日:12月18日 アーティスト:ピチカート・ファイヴ,小西康陽
Cape Verdean BluesCape Verdean Blues
・65年録音盤。ホレス・シルヴァークインテットトロンボーン奏者のJ.J.ジョンソンが4〜6に参加している構成の作品。カリビアンフレーバーが小気味いいラテンジャズ。ドラムが刻む細やかなビートの熱を帯びた疾走感が鬱蒼とした熱帯林を吹き抜けていく風のようで痛快だ。
タイトル曲の色鮮やかなトロピカルさも味わい深いがテナーのジョー・ヘンダーソンとJ.J.ジョンソンのトロンボーンのハイトーンが絡みあう4のエネルギッシュさも堪らない。ホレスのパーカッシヴなピアノもこういった南米的なサウンドがやはり水に合うようで聞く側も楽しくなる演奏が詰まった良盤だ
聴いた日:12月22日 アーティスト:Horace Silver
ザ・サイドワインダーザ・サイドワインダー
・63年録音盤。3年ぶりのBN復帰盤にして、最大のヒット作。8ビートを取り入れた1がジャズロックと呼ばれ、人気が高いが後年のロックが下地になったものとはやはり趣は異なる。タイトでシャープな演奏が非常にスタイリッシュに鳴り響く。きっかりと構成が決まっているのも折り目正しさを感じる
ミッドなテンポで、派手さはないが各メンバー、ハキハキとした演奏で存在感を示していて、味わい深い演奏といえる。全力疾走より、ランニングといった雰囲気でじっくりと聞かせてくれるのは、大人の魅力だろうか。余裕を感じるジャズらしい一枚。キャリア中期の代表作だろう。
聴いた日:12月23日 アーティスト:リー・モーガン
Sigh no moreSigh no more
91年発表2nd。1stに比べるとテンポを落としてハードロック寄りになった印象を受ける作品。アメリカンっぽいカラッとしたサウンドにジャーマンらしいメタリックなノリが重なるのが結構面白い。さすがに突き抜けるような疾走感は前作と比べると少なくなっているが、その分試行錯誤が見え隠れする
メタリックでへヴィな音がじっくり伝わってくるのと、アメリカンHM/HRの乾いた質感がわりかしポップに響いているというのもあるが、そういった彼らの音をより高みに練り上げるために必要な一枚だったように思う。しかしテンポが落ちた曲でもパワフルさは変わらず。佳作だが十分楽しめる一枚だ。
聴いた日:12月25日 アーティスト:Gamma Ray
ニセ予言者どもニセ予言者ども
87年発表4th。インディーズ最終作。前作のアフロファンクからさらにファンク色を強めて深化したサウンドになった。華やかさは薄れたものの、猥雑さと切れ味の鋭さはさらに増した。江戸アケミの歌詞も叙情性と力強さがはちきれんばかり。勢いはそぎ落としたものの、渦巻くグルーヴは最高潮である。
江戸アケミの詩は30年経った今なお、その精彩を一向に欠いておらず、心を響かせるし、真に迫った内容だ。バンドのテンションと江戸アケミの創造性が一体となったという点ではこのアルバムが最高傑作であるという評になんら疑いを持たないし今だからこそ広く聞かれるべき作品だと思う。間違いなく名盤
聴いた日:12月29日 アーティスト:JAGATARA

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