音楽鑑賞履歴(2018年12月) No.1287~1291

月一恒例の音楽鑑賞履歴。
明けましておめでとうございます。今年も一年よろしくお願いします。
はてなダイアリー終了に伴い、はてなブログに移行してもやることはあまり変わりませんが。
昨年12月の鑑賞履歴です。
6枚。
なかなかペースは戻りませんが、楽しく聞いていければいいかなと。
今回はMr.Big関連特集でしょうか。肝心のMr.Bigを一枚も聞いてませんが。
ポール・ギルバートもリッチー・コッツェンも好きなアーティストです。
今年はどんな年になるか、想像もつきませんが趣くままにやっていきます。
というわけで以下より感想です。


Silence Followed By a Deafening Roar

Silence Followed By a Deafening Roar

  • アーティスト:Gilbert, Paul
  • 発売日: 2008/04/08
  • メディア: CD
08年発表7th。味を占めたのか、インストアルバム第二弾。前作以上にテクニカルにギターが躍り、ポップにハードドライヴィングしているのが目に付く。もともと早弾きと超絶技巧で腕を鳴らしていただけあって、水を得た魚のように弾き倒す姿が目に浮かぶ。しかし、それでも独り善がりにならないのが良い。
楽曲についてはジャンルの区分なく、ポール・ギルバート自身が思い描くメロディが繰り広げられている印象で、クラシカルな旋律があったと思えば、思い切りメタルなソロがあったりと息つく暇のない感じだが、ポップな側面が影響しているのか冗長にならず、きっちりコンパクトにまとまっている。
この盤でも見え隠れするのは、ファンクというかブラックミュージックの横ノリアプローチ。縦ノリだけではなく、グルーヴに根ざした演奏が出来るのも彼の懐の深さを窺い知れるだろう。ポール・ギルバートのやりたい事が凝縮された結晶のような一枚。その屈託のない朗らかさが魅力的だ。


Inner Galactic Fusion Experience

Inner Galactic Fusion Experience

  • アーティスト:Kotzen, Richie
  • 発売日: 1995/11/21
  • メディア: CD
95年発表5th。アルバムタイトルがバンド名のようだが、この一枚きりで以降、この名義では出していない。リッチー・コッツェンのアルバムとしてはジャズ・フュージョン色の強いアルバムでギターフレーズが初手からアラン・ホールズワースを髣髴とさせる流麗なレガートで本物さながらのプレイが聞ける。
ホールズワース的なテクニックもそうだが、それ以上に多彩なプレイが聞けるのでその引き出しの多さには驚くし、その点においては巧者っぷりを余すことなく体感できる。数曲ではあるが本家ホールズワースとの共演経験もあるジェフ・バーリンが参加しており、ますますその違いがよく分からなくなる。
しかし、コッツェンの方がやや硬質に感じられるか。どちらにしても、テクニックをひけらかすのではなく、楽曲の必要に応じて繰り出されるテクニックの数々がただただ心地よく聞けるのでただただお見事。2曲だけ歌ってもいるがそちらの方でも実力の高さが伺えて、舌を巻く。地味ながら質の高い一枚だ。

ウェイヴ・オブ・エモーション

ウェイヴ・オブ・エモーション

96年発表6th。ほぼ全編歌ものアルバムだが、内容がファンク&ソウルど直球な内容で、シンプルな分だけ巧さが引き立っており、非常にソツのない一枚。歌は上手いわ、ギターもテクニカルで、しかもマルチプレイヤーでソングライティングまで出来てしまうリッチー・コッツェンの才人っぷりに唸るほかない
単に技術をひけらかすのではなく、楽曲を生かすために持ちうる技術を使いこなすという時点で、相当クレバーなミュージシャンであるのは疑いようもないが、ここまで何でもできてしまう姿にはいやがおうにも、プリンスを思い浮かべてしまうが実際そのくらいの実力を持っているのだろうと実感する。
反面、ソツがなさすぎて派手さには欠ける作品ではあるのだが、それを補って余りあるくらいには、アルバムの完成度も高い。歌も非常にソウルフルで、楽曲もHR/HMらしさを微塵も感じさせない、ファンキーなものなので食わず嫌いな人は一度聞いてみてほしい。地味ながら名盤の輝きを持つ一枚だろう。

Slow

Slow

  • アーティスト:Kotzen, Richie
  • 発売日: 2004/01/13
  • メディア: CD
01年発表11th。比較的ブルージーサウンドに寄せた作品。とはいえ、フュージョン、ファンク、ソウルミュージックが渾然一体となった、リッチー・コッツェンらしい音楽が提示されている。適度にテクニカルでブルージーでソウルフル。当時らしいデジタルな打ち込みも混ざり、ソツのなさを随所に感じる。
特に売れるという野心もなくコッツェンのやりたい事をその都度、具現化してるような音楽なのでポップな響きや即効性のある派手さはやはりないが、自由闊達にイマジネーションを紡いでいく姿勢は流行に左右されない良さがあるように思う。その点では職人的な趣もあるが、良質な作品なのは疑いない所だ。

End of the Century

End of the Century

  • アーティスト:Ramones
  • 発売日: 2002/08/26
  • メディア: CD
80年発表5th。ウォール・オブ・サウンドで知られる、60年代を代表するプロデューサーのフィル・スペクターと製作した一枚。60年代のバブルガムポップスを彼らなりの解釈で繰り広げてきたバンドにとっては本家本元とのコラボレーションとなったわけだが、その製作の顛末はわりと苦い経験だった模様。
フィル・スペクターの製作姿勢とバンドの製作スタイルが噛み合ってなかったために軋轢があったようだが、実際バンドのアルバムとしてはヘンテコな感触を残す一方、バンドの直線的な演奏が本家ウォール・オブ・サウンドによって、メロディの境界線が曖昧になっていく様はわりとサイケな感触も感じられる
一方でラモーンズ自体のガレージロック的な演奏がフィル・スペクターの作り上げる音像とまったく喧嘩しあっていて、相乗効果が生まれているかというと疑問符はつくがここまでの作品に比べると非常にメロディの甘酸っぱさが増しており、その感触自体は悪くはない。
ただバンドとプロデューサーの意図がかけ離れているので、わりあい不幸な作品だろうか。過渡期の作品であるのは確かだが、この不器用さがラモーンズらしくもあり、今までとは違った側面が窺える点では結構楽しく聞けるかと。実際、バンド史上最大のヒットを記録したアルバムというのもその証明だろう