月一恒例の音楽鑑賞履歴です。
9枚。
いろいろ書き物に集中していたので、またペースが落ちた感じですね(最近は、アウトプットする時に音楽が聴けなくなってるのでなおさら)。まあ、いたしかたない。スタイリッシュな音楽から急転して硬派な音楽に振り切る、という感じが今回の内容でしょうか。節操がないといわれればそれまでですが。
最近は90sテクノを漁るのが楽しくて、他の音楽がそこそこになってる感じですが、久々にマイブーム(これももはや死語だなあ)の波が押し寄せててまだ終わりそうにない勢いです。いや、人脈とかがまったくもって不明瞭なのが面白く感じているのですがそれはさておき。
5月もぼちぼち聞いていきたいです。
というわけで以下より感想です。
- アーティスト:Fagen, Donald
- 発売日: 2012/10/16
- メディア: CD
この為か、音自体のアタック感も和らいでいて、非常に整形されたオーガニックな雰囲気もあるか。そういう意味ではソロ1stや全盛期のスティーリー・ダンの趣も感じさせられる。というよりレコードで聞いたら、また違った味わいが出そうな抜けの良いサウンドプロダクションだと思う。
楽曲内容は良くも悪くも相変わらずで、ハードボイルドな私小説感は健在。だが、悲観的な面や回顧主義的な趣は控えめになって、ほんの少し前を向いた印象も受ける。前作まで三部作として区切りをつけた為かは定かではないが、新たしい方向に踏み出した感もある近年の快作だろう。そろそろ新作も聞きたい
- アーティスト:アニメソング
- 発売日: 2015/11/11
- メディア: CD
楽曲については質の高さに目を見張る。一方、歌唱については出演キャスト内での実力差が凸凹している印象を受けるか。曲とメロディが良い分、そこについては許容できるが返って、その中途半端なソツのなさが悪目立ちしてしまっているようなアルバムだ。内容が良いだけに惜しさを感じてしまう一枚だ。
小林泉美&Flying Mimi Band/ORANGE SKY - ENDLESS SUMMER<タワーレコード限定>
78年発表1st。当時若干21歳で現役大学生だった、小林泉美のキャリアスタート作。世間一般には「うる星やつら」などの80年代アニメ作品の主題歌をいくつか手掛けた人物としても名が知られているが、ここでは非常にフュージョン/ライトメロウな楽曲を演奏している。自身で作詞作曲編曲までこなしている。
いかにもアメリカ西海岸やサンバやボサ・ノヴァなどブラジリアンサウンドを取り入れたシティポップス然とした、カラフルなサウンドが非常に聴き応えがある。バンドメンバーも後にマライアを結成する清水靖晃や土方隆行といった、J-フュージョンを牽引するミュージシャンが出揃い、演奏力は折り紙つきだ
内容としては、当時のレコードB面に当たる6〜10の波音に始まる西海岸的なトロピカルフュージョンが非常に聞きものだろう。海岸沿いの一日を日の出から夕暮れ、再びの夜明けを想起させられるコンセプチュアルな構成がとても巧妙だ。初手にしてはあまりにも出来すぎたライトメロウの名盤だろう
78年発表2nd。この名義では最終作。黒人ドラマーを迎え入れた本作、前作のトロピカルなシーサイドミュージックから一転して、ファンキーで黒っぽいアーバンサウンドを展開している。楽曲もヴォーカルよりインストパートの比重が高めで、前作の軽妙な感じと比べるとスタイリッシュな重厚感が増した造り
ただ実力者揃いのバンドだけあって、サウンドが180度変わっても、まったくアンサンブルには違和感がなく、むしろ海外バンドが演奏しているといわれても不思議ではないほどレベルの高さを見せ付けてくる。柔軟性の高さともに芯のブレなさを非常に強く感じるか。反面、前作の特色がまったく失われている
もちろん作品の出来はすこぶる高いのだが、当時の流行の音に乗っかったクロスオーバーサウンドなので、後の活躍や前作に比べるとむしろ本作の方が異色に感じられるかもしれない。が、それでもここまで高品質の物を送り出せるのは正直、感嘆する。小林泉美の演奏をじっくり聞ける点だけでも価値ある一枚
Sweet Robots Against the Machine
- アーティスト:テイ・トウワ
- 発売日: 1997/02/10
- メディア: CD
97年発表1st。テイ・トウワの別名義による第一作。果たして、本名義との差異があるのかよくは分からないが、どちらかというとこちらの名義の方がポップ寄りというかフロア寄りな印象を持つ。渋谷系の音楽をそのままサンプリングしたようなトラックメイキングが目立ち、よりドープな造りで不思議な感触
当時らしいオフビートな感覚のアーバンソウルな曲もあれば、お得意のエキゾチックミュージック然としたトラックもあるなど退屈しない構成になっているが、全体にブレイクビーツを強調した内容と言えるだろう。ちなみに二枚組でバリ島のジャングルの環境音が一時間トラックで付いてくる。
このジャングルの音が案外チル・アウトトラックとして聞けるものだから不思議ではある。しかもなぜか本編ディスク(33分ちょっと)よりも長いというもなにか偏屈さを感じなくもないが、本人名義よりも流行のサウンドと実験的なことをしていることが伺える佳作だ。わりとヒップホップ色も強め。
- アーティスト:Oldfield, Mike
- 発売日: 2000/05/30
- メディア: CD
しかしその力の抜け具合が良い方向に作用している。何者も寄せ付けないような聖域めいた厳格さが感じられた初期作に比べると、抜けの良い開放感があり煌びやかな音が全体を支配する。それまでのミニマルかつケルティックな旋律に華やかさが増したといえばいいだろうか。聞こえる印象は非常にポップだ。
それ故か、今作も1曲4パートに分かれる大曲志向ではあるが、パートごとにがらりと音の印象が変わるので独立した楽曲にも聞こえなくはないし、一方で組曲という印象が薄いのも確か。事実、これ以降、大曲主義が減退しポップ路線を強めていくことを考えると必然の流れか。試行錯誤も見える集大成的な一枚
- アーティスト:Judas Priest
- 発売日: 2001/05/30
- メディア: CD
今聞くと、サウンドの重さはそこまでではない。だが、ツインギターから繰り出されるフレーズのキレに、どこまでもタイトでシャープなリズムを作り上げるボトムラインの武骨さが非常に金属感を帯びた、硬質なロックサウンドが彼らの魅力である事が確認できる。同時に当時流行のパンクにも呼応している。
70年代の長尺化したロックの演奏の反動からか、このアルバムでも楽曲は比較的コンパクトにまとまっており、ある種ポップソングのマナーに回帰してる部分を感じる。が、そこに甘さを入れなかったのが本作の特色であり、へヴィメタの基本となっていくのがよく分かる。その点では歴史的な名盤だろう。
- アーティスト:JUDAS PRIEST
- 発売日: 2001/05/07
- メディア: CD
アルバム構成や楽曲構成そのものは6〜70年代から続くハードロックのスタイルではあるし、彼らの歴史を感じるものだがやはり甘さを感じさせない硬派な部分がサウンドを決定付けている。また英国出身バンドらしく、雄大な米国の土臭さを感じさせない工業都市の趣がその印象を強めているのは確かだ。
彼らの出身地であるバーミンガム(工業都市でもある)という土地柄が影響してるのかもしれないが、ロブ・ハルフォードの金切りハイトーンVoも相俟ってメタルがメタルであるための鋼鉄感、金属感は彼らがオリジナルであることの証左のようにも感じられる。実力と結果が見事に伴った痛快な良作だ。
- アーティスト:JUDAS PRIEST
- 発売日: 2002/03/04
- メディア: CD
もともと硬質な金属サウンドだった所に、マッチョなパワーが加わったことでその暴力性がバンド史上かつてないほどに高まったと過言ではないが、一般にイメージされるへヴィメタサウンドが奇の衒いなくどストレートに演奏される痛快さはやはりとてつもないエネルギーの爆発を感じさせるだろう。
まさしく最高到達点を記録した作品であるのとは裏腹に、この後、緊張の糸が切れるかのようにロブ・ハルフォードが自身のソロ活動を巡るバンドの対立により脱退し、バンドそのものも90〜00年代を雌伏の時期として過ぎることとなる。が、いまだ影響の大きい一枚にして、メタルの代名詞ともいえる大名盤だ