「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -The Live- #1」インプレッション

「世界は舞台、人は役者」(ウィリアム・シェイクスピア:『お気に召すまま』より)


というわけで行ってきました。
少女☆歌劇 レヴュースタァライト -The Live- #1」
渋谷のAiiA 2.5 Theater Tokyoで公演された舞台版の第一幕。早くも来年1月には再上演決定とのことなので、期待の高まる所ですが、今回はその舞台のインプレッション記事を書きたいと思います。


※クリックするとYOUTUBEの当該動画へと飛びます。

先んじてアップされたこの動画を見た瞬間、反応せざるを得なかったというべきでしょうかw おそらく見た人の頭の中には「(少女革命)ウテナだ!」って思う人はたくさんいるかと思います。そして事実、舞台はその通りの展開だった、と形容するほかはないでしょう。もうね、面白すぎてどうしようかと思ったくらいです。少なくともイクニファン、榎戸ファンには間違いなく「案件」の作品です。
いや、むしろ「少女革命ウテナ」という作品で描かれた要素を引き継いで、現代のテクスチャーに刷新した作品と言った方が正しいようにも思います。ノスタルジーを呼び起こすものではなく、ウテナの血脈から描かれる、今に生きる人への物語。そんな印象です。
とはいっても今回は舞台演劇、また再公演が控えているのもあって、多くはネタバレできません。これを書いているのが日曜日で、公演は全了となっています。なので、出来るだけ物語の筋を避けつつ、これから再公演を見る人への注目点だったり、自分が気になった部分、キャスト(声優)の演技などの印象を語りたいと思います。そこを踏まえたうえで、読み進めていただければと思います。

まあどういう作品なのかは、自分が観劇し終わった後に呟いた↓を見て、想像していただければw

これでは何がなんだか、という方には公式サイト(少女☆歌劇 レヴュースタァライト)よりイントロダクションを抜粋しておきましょう。

「舞台女優」を目指す少女にとって「トップスタァ」は永遠の憧れ。
自分の夢、あの日の約束を叶える為に集う「舞台少女」たち。
けれどこの舞台で演じられるレヴューのスタァは、一人だけ。


では、インプレッション始めていきましょう。ちなみに筆者は興業中日の9/23に観劇しました。


1.公演の構成と基本情報

まず演目の構成から。

演劇(ミュージカル)パート:70分
休憩:15分
ライヴパート:30分

演劇で物語を楽しんでから、休憩を挟んでライヴを楽しむという構成でした。筆者も2.5次元舞台はあんまり見に行ったことはないですが、聞き及ぶ限り、わりとベーシックな構成のようです。
演劇パート、というかミュージカルなんですが物語構成上、必要なミュージカル専用曲もあったりで、演技6割、歌唱4割くらいの比率でしたかね。演出の方が宝塚で演出してた方で、脚本がテニミュを手がけたことがある方だったのでそのあたりは磐石な構成で、演出も熟練した巧みなものをだったと思います。クライマックスの演出もかなり滾るものだったと記しておきしょうか。物凄い濃密な70分で↑のような呟きが出る位の面白さでした。
ライヴパートはすでに発売されている1stシングル収録曲と会場限定シングル収録曲全てを披露。詳しい内容は別項にて。

さて。上にあるPVで見ると、登場キャラの公式カップリングが出てきています。今回の舞台もPVの組み合わせ準拠で、進行していくのですが。物語は承前を過ぎると、作品の舞台である「聖翔音楽学園」俳優育成科2年A組の教室風景に移って行きます。そこでの組み合わせは以下の通り。画像は会場にあったキャラパネルです。ついでにキャラの紹介も兼ねて、端的なキャラ属性みたいのも付記しておきます。あくまで筆者の主観ですが。


愛城華恋(CV:小山百代):主役。真っ直ぐな心根でクラスの落ちこぼれ
露崎まひる(CV:岩田陽葵):主役のルームメイトで引っ込み思案

天堂真矢(CV:富田麻帆):完璧主義者なサラブレッド
西條クロディーヌ(CV:相羽あいな):居丈高で才能豊かなフランス人ハーフ

石動双葉(CV:生田輝):面倒見のいいガサツな姉御肌
花柳香子(CV:伊藤彩沙):腹黒お嬢様

星見純那(CV:佐藤日向):メガネな委員長
大場なな(CV:小泉萌香):包容感のあるおっとりとした子

この内、最後の4組目だけは今回の公演では絡みが殆どなかったので今後に期待ですね。他の組み合わせは今回の公演で取り上げられています。4組目の子達は個別に活躍してます。というより、キャスト全員に活躍の場は不可分なくあった感じですね。
このように既に4組8人の組み合わせが出来上がっているわけですが。ここがミソです。彼女たちは「聖翔音楽学園」俳優育成科「第99期生」という設定です。物語の上で「9」という数字が重要なキーになっていて、それはつまり、主要キャラも「8人」ではなく・・・。


「9人目」がいるわけです。

神楽ひかり(CV:三森すずこ):もう一人の主役。クールな転校生。


彼女、神楽ひかりが転校してくる所から物語は動き出します。
さて「9人」という割り切れない人数になったことで、上の組み合わせ構図が揺らいでいくことになります。そして9人目のひかりは「もう一人の主役」と記したとおり、彼女の組み合わせキャラは必然と以下のようになります。

割り切れない人数になったことで弾かれる人間がいるということ。物語も同じくしてそれまでの平穏さから波風が立つように進んでいきます。この辺りは「少女革命ウテナ」のエピソードの基本構成を想像していただければ、よりわかりやすいかと思います。分かりやすく、今回の公演パンフレットから一部抜粋しておくと

彼女(神楽ひかり)の出現を気に突如開催されるオーディションは、
トップスタァになれるというたった一人の座をかけ、
己の夢をかけて戦うバトルロワイヤルだった……。

という風に物語は進んでいきます。そういう筋の中でキャラクターがそれぞれどんな思惑と感情で動いていくのかは伏せておきましょう。ぜひ再上演をその目で確認していただけたらと思います。


2.キャストの演技と気になったところ

ここまで作品の触りとキャラクターを紹介していきましたが実際の所、キャスト(声優)さんの演技はどうだったの?という言う点に触れていきたいと思います。ざっくり箇条書きにしてから、順に触れていきましょうか。個人的に注目したのはこの辺り。


・舞台映えする三森すずこ、それを飛び越えていく小山百代という感性
岩田陽葵と佐藤日向の歌唱力
富田麻帆の大胆かつキレのある殺陣
・豹変度の高い小泉萌香と岩田陽葵


一つ目は主役コンビですね。三森さんが実際宝塚音楽学校を受験したり、声優デビュー以前には舞台・ミュージカル経験を持っているという実力の高さは今回の舞台でも存分に発揮されていた印象で、演技で見ていくと抜きんでているというか、主軸的なポジションを担っているように思えました。その一方で、物語の展開と演出もあるように思いましたが、小山さんの演技も目を見張るというか、由緒正しく(?)経験とは別の所にある嗅覚というかこの展開でこう演技するのかという感性の輝きが三森さんの技をひょいと飛び越えていった瞬間がそのまま、舞台の演出にもなってるという辺りが興味深かった。

二つ目。ミュージカルでもライヴでも歌唱で一番目を引いたのはこの二人。というより全キャスト、歌唱になると平均以上の実力を叩き出してるのがとんでもなかったわけですが、中でも星見純那(CV:佐藤日向)と露崎まひる(CV:岩田陽葵)のパフォーマンスが抜けていた印象。佐藤さんの方はプロフィールを見るとあのBABYMETALのメンバーを輩出したアイドルグループ「さくら学院」の元メンバーだそうで、パフォーマーとしての実力は折り紙付きの模様。なにより演劇で一番最初に歌唱する人であり、ライヴでもリードを取っている回数が多い印象が強かった。岩田さんについても舞台経験者で舞台度胸のある芯の強い歌唱だったのが演じるキャラクターとのギャップにもなっていて印象的だった。というより、三森さんも歌については実力ある人なのに、このメンバーの中だと突出したレベルではないというのに凄まじさを覚えるなどした次第。

三つ目。物語の展開上、殺陣シーンがあるんですがその場面で一番キレのいいアクションをしていたのが天堂真矢(CV:富田麻帆)。他のメンバーがわりと演舞的な動きをしてたのに対して、富田さんは腰を落とした構え方や、体を大きく動かすアクションなどを積極的にこなして、演じるキャラクターの存在感と強さを体から表現していた印象を受けた。というより、声優活動だけでなく実写俳優もいけそうなアクションをしていたなと。そういって所もあってか、個人的には天堂真矢(CV:富田麻帆)と西條クロディーヌ(CV:相羽あいな)が好きになりました。

四つ目。この二人については演じているキャラの建前と本音のギャップが強いことに尽きる。普段、柔和だったり、おとなしい子がひとたび変わると、というのが一番よく表れていた二人なのではないかと。この作品の登場人物はどの子も表と裏のある感じだけど、露崎まひる(CV:岩田陽葵)と大場なな(CV:小泉萌香)は普段が抑制的な分、触れ幅がでかい印象だった。まあ、バーサーカーになるとかそういうのではないんだけど。注目すべきはどちらの顔もその人らしい一面であり、ひっくるめて一人の人間という描きが演技に内包しているのが良かったかなと。無論、他のキャラにも言えることだが。

とまあ、特に目を引いたのはこの4点。石動双葉(CV:生田輝)と花柳香子(CV:伊藤彩沙)のコンビはこのコンビで想定されるだろう関係性を見事にやってのけていて、カップリングの美味しさが良く出ていた二人だなと思う一方で、今回について言えばバイプレーヤー感が強めだった。同様に西條クロディーヌ(CV:相羽あいな)も天堂真矢(CV:富田麻帆)を引き立てる役に徹してた感じ。キャラが華やかだから、気にはならなかったけども。

またメインキャスト以外に理事長(だったはず)役で椎名へきるさんが出演しており、生徒たちに試練を与えるキャラとして存在感を出していましたね。キャラのイメージはまんま「ガラスの仮面」の月影先生ですが、引き締め役としても物語のバックボーンも担っていそうでこちらも期待が高まります。


それぞれにぞれぞれの見所があって、キャストさんの生の演技がアニメになるとどうなるのか、という辺りの興味も出てきて、今後が楽しみになったというところが大きい。この辺り、声優さんと舞台のキャストが一緒というポイントが活きてくれればいいなと思った。

気になった点は今後の展開か。アニメと展開が連動していくようなので、彼女たちに共通するバックボーンがあってそれが大きな影響を与えているという情報が台詞のやり取りから出てくるのだが、今回は詳しく掘り下げられていないので気になる部分だった。どうも物語の一年前に何かあったようなのだが。それをいうと承前のシーンも気になるし、前述したように絡みの薄いカップリングや、掘り下げの少なかったキャラクターもいるのでその辺りも次回以降の楽しみになっていきそう。早くも続きが見たくなっているし、再上演でもういちど#1を見たくもあるので、いい具合に踊らされてる客だと思いますw

3.ライヴパートについて

最後はライヴパートについてです。
30分という短い尺ながら現時点である楽曲は全て披露した、充実の内容でした。
なおMCは一切なく、殆どメドレーで一気呵成に歌っていく構成。
セットリストは以下の通りです。


1.舞台少女心得(歌:スタァライト九九組【全員】)
2.願いは光になって(歌:スタァライト九九組【全員】)
3.情熱の目覚めるとき(歌:星見純那(CV:佐藤日向)、露崎まひる(CV:岩田陽葵)、大場なな(CV:小泉萌香))
4.GANG☆STAR(歌:天堂真矢(CV:富田麻帆)、西條クロディーヌ(CV:相羽あいな)、石動双葉(CV:生田輝)、花柳香子(CV:伊藤彩沙))
5.Fancy You(歌:愛城華恋(CV:小山百代)、神楽ひかり(CV:三森すずこ))
6.Star Divine(歌:スタァライト九九組【全員】)


以上、全6曲。どんな感じの曲かはクロスフェード動画が公式からアップされているので以下にリンクを貼っておきます。

会場限定シングルは後日、ポニーキャニオンの通販サイトで購入が可能になるようなので欲しい方は是非。
1stシングルは既に発売しています。
とはいえ、先ほども触れましたが全員何らかの舞台経験やらパフォーマンス経験があるからか、舞台で歌うことに躊躇がなくそれぞれ自分の実力を出していた印象。特に9人全員の歌唱曲はキャスト全員が一丸になって歌う様に溌剌としたエネルギッシュさが感じられ、これから紡がれていく物語の船出として、期待を感じさせるものになっていたかと。ユニットソング(3〜5)はそれぞれのキャラの魅力を活かした内容。その中でもスローナンバーである3を歌う二人の高い歌唱力が一歩抜きん出ていたか。ラストの曲は作品のテーマソング。これとは別にTVシリーズのオープニング曲が作られるのか、はたしてこの曲を使ってくるのか、というくらいのポテンシャルのあるキャッチーな曲であり、ラストナンバーだけあってメンバーの気合も入っていたように思えた。

曲が終わるとカーテンコールが二度。オールキャストが出払った後、両端に残った三森さんと小山さんがお互いの顔を見て、示し合わせて去って行ったのが印象的だった。2時間弱のステージではあったが、あまりにも充実度のある公演で会場を出た後の脳内は歓喜と混乱が入り混じったもので今後がいっそうに楽しみなったのは言うまでもなく、行って良かったと素直に思ったのでした。


《終わりに》

以上、「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -The Live- #1」のインプレッションでした。
ここまで来るとアニメの放映はいつになるか、やきもきするところなのですが1月に再上演が決まっていることからも少なくとも年内の放送はなさそうなのがきになりますね。今のところ、放送時期が分かっていないので早ければ来年の年頭、もしくはそれ以降という感じでしょうか。どちらにせよ、舞台版がここまで面白いものになっているので、アニメの方も負けないものを送り出して欲しいと期待して待っています。そして#1の再上演はもちろん、#2の公演も首を長くして待ってますので。


スタッフもこの呟きの通り、こういうスタッフィングなのでしてね。どういう映像が繰り出されてくるのか、楽しみです。PVを見ている限り、期待にこたえてくれる事でしょう。
まあ、こういう記事も書いたのも筆者にとって、ぶっ刺さるものがあまりにもありすぎたのでこうして書いているわけでして、そういう楽しみな作品が出てきたことに感謝しかありません。それだけの熱量のある作品だと思いますので、今後も注視して追って生きたいところです。
ただただ面白かったです。
再上演行きたいなあと思いつつ、今回は以上。
ではまた。