極上同窓会#03

アニメ『極上生徒会』、勝手に10周年企画。
10年前の放映日に合わせて、1話ずつ振り返ってます。
今回は第3話。

脚本:黒田洋介/絵コンテ:小川浩司/演出:大関雅幸/作画監督:ハットリマスミ/総作画監督:川田剛


文字通り、極上寮でパヤパヤな生活を送るりのと奏会長が学内フライデー(死語)される回。
ちなみに早くも作画が若干怪しくなる回でもある。
…なんですが今回もそんな筋は語らず、キャラに焦点を当てていきたいと思います。
まず手始めとして、1話終盤のこの画像。

物語の軸たる二人の邂逅の場面。
どちらもいつも話の中心になるとは限らないのですが、
コメディの裏で流れるストーリー面ではかなりのウェイトを占める二人。
今回はその片翼にスポットを当てて行くと同時に、3話で描かれる「二つの笑顔」にも触れていこうと思います。


というわけで今回のピックアップは

神宮司奏(CV:生天目仁美
極上生徒会会長。
私立宮神学園の最高責任者であり生徒たちの憧れの的。
この人は「素顔」をなかなか見せない人なんですよね。
前回の聖奈さんも同様に「見せない」人です。
いや3話の段階でそんな事言っても詮無い事なんだけど。
一方でしっかり物語との関連性は結ばれていて、安普請な作り込みになってない。
コメディが繰り広げられる中で、ドラマ描写も重ねられているのとても技巧的だと思います。



極上生徒会らしい、カオスな導入ですが今回の起点です。
母、蘭堂ちえりと金木犀の香りの思い出。
りのにとっての楽しかった思い出とつらい思い出が混ざり合っている。
それは金木犀の香りによって、フラッシュバックされています。
彼女のモノローグでもしっかり語られています。




その直後にこれ。
冒頭の場面がりのの夢だと開陳されて、
彼女の視線からなんでか隣で添い寝をしてた、奏会長が夢に出てきた母の像と重なります。
この導入で話がコメディに引き戻されるわけですが、
りのの無意識下で奏会長と母親がリンクしているのが注目点です。
振り返れば、↑で取り上げた1話の場面でも彼女はイメージを重ねています。
なにか似通う部分を感じ取っているよう。
それが何なのかはまだ伏せられています。




ただならぬ雰囲気の二人。
案の定、目撃されてしまい、生徒会メンバーが緘口令を敷くも学園内の噂に。
フレーズとして「百合」が出てきます。
けど、言葉のイメージから想像される濃密さからはかけ離れてて、非常にライト。
この作品の性質もあると思いますが、肌触りは以降に発表される百合作品群のニュアンスに近いか。


そんな外部の反応などどこ吹く風といった感じの寵愛っぷり。
3話の画像を集めてみると、結構なイチャイチャっぷりであるw
けどまあ、この光景を黙ってない人々がいるのも事実で。



↑のように奏会長を心酔するあまり、多大なショックを受けたり(香は極上寮住まいでなく自宅通学)、

↑のような更なるスキャンダラスなスクープを獲得しようと輩が蠢いたり。
つか、パパラッチ部が存在してる時点でそうとうハッチャケた学校だと思いますが。
学園中の噂になった結果、りのへの糾弾も少なからずあって。
更なるスキャンダルを防止するために二人をそれぞれ別途に隔離するのが
3話の表立った筋。


さてここからが本題です。
Bパートに入り、自室に隔離された奏会長。
以下の画像は副会長(遊撃)の金城奈々穂との会話。
二人の浅からぬ関係性が窺える1シーン。
これも取り上げてなくて、申し訳ないですが2話で砕けた会話をする描写もあります。

二人の距離感が分かればいいのですが。
生徒会長と副会長という関係が如実に表れているカットから、
友人として語りかける奈々穂の表情の変化に注目。
奏会長は基本的に言っていることにブレがないキャラです。
学内マスコミ部たちの行動も宮神学園という「楽園」で許可された「自由」。
その自由を受け入れるからこそ会長である自分に注目を浴びることも由としている。
(奈々穂はプライベートの侵害だと懸念してるが)
ではなぜ、りのの部屋に入るという軽はずみな行動をしたのか。

奏会長は奈々穂が「友人」として表情を緩め、聞いてきた問いに黙して語らず。
「友人」でも踏み込むことができない領域だった事に一瞬、悲しみの表情を浮かべるが
すぐに副会長の「表情」に戻る奈々穂。

そしてこの「距離感」が滲み出る二人の表情。
友人同士と生徒会長と副会長という立ち場の切り替わりが映えるシーンだと思います。
それ以上になにかしらの関係を示唆しているという辺りも面白い。


続けて、上の二人の会話が進行している裏側での光景が次の画像。
ここが3話で一番面白いところだと自分は思ってます。

学内マスコミ部勢に対しての防衛ラインを形成し終えた隠密トップの二人。
左一枚目の和気藹々なやり取りから、副会長(隠密)の銀河久遠にカメラがフォーカスされる。
なぜ奏会長がりのに固執するのか。
それには何か理由があるのか。
二人の関係を勘繰る久遠。
隠密という立場があるとはいえ、そこまで踏み込んで考えるものなのか──
という絶妙なところで聖奈さんが彼女を覗き込む。

この久遠が虚を突かれたような表情を一瞬見せるのがベタだけど良いんだよなあ。
なにか裏のある感じが出てて。
すぐ表情を戻すけど、全てを知っているかのように聖奈さんが
会長にそんな思惑はないって発言して、はぐらかす所とかも絶妙といえば絶妙。


ご覧の通り、副会長二人に副会長という「仮面」の下に見せる表情が非常に興味深いんですよね。
そしてその仮面の下の「揺らぎ」を見せるのがどちらも「ブレない」人間二人という。
奈々穂には正攻法に「女王」のカードが切られ、
久遠には邪道で「ジョーカー」のカードが当てられる。
どちらも反射して、思わぬ表情が垣間見えるのだけど。
極上生徒会の「副会長」としてこの二人が対峙すると、

信頼の証である「笑顔」をお互いに見せるという、一連の流れが非常に美しい。
学園内の役職とはいえ、役割と本来の人格が一致しないという描き。
公私の分け方が非常に人間くさい描写で、
テンプレート的なキャラ表現じゃないのが一線を画してると思うのですがいかがでしょうか。



それでまあ。話は少し逸れたので戻します。
一騒動があって、今回のエピローグへの移り変わる場面。
結構映画的なシーンの飛ばし方で割りと好き。

実は今回、りのの出番あまりなかったりするのですが、
彼女が始まりと終わりをきっちりと締めるから、物語的な締まりも良くなっていて。
奏会長が傍にいる事によって、
りのは精神的に平穏を保てて、安らかな眠りを得る事が出来る。
この辺りも2話で少し出てくるのですが、
奏会長とりのの母親が旧知の仲であるという事。
そしてりのを守る約束をしているという事。
これが最後に表れる事によって、りのを庇護する理由がなんとなく読めてきます。

そして、りのが母親の象徴として記憶している金木犀が最後に現れて、この話は終わります。
この象徴が冒頭で奏会長に重ねられています。
つまり、金木犀も暗喩のひとつなのですね。
奏会長とりのがどういう関係性を暗示しているか。
それとなく視聴者に分かるようなイメージコントロールが巧みなのですね。
りのも見ているけど、プッチャンも奏会長の視野に入っている事も含めて、
彼女の自由を守っているとも読み取れて、重層的な物語を感じられる1話でした。


とはいえ、これらは物語のスパイスであるのでそこに注目しなくとも
今回紹介しなかったコメディ部分を楽しんでいただければいいのかなと。
見た事ある人はこういう前段階があって、今後の話に繋がってんだなと感じていただけたら幸いです。


こんな所で3話は以上です。
ではまた次回。


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