極上同窓会#04

アニメ『極上生徒会』、勝手に10周年企画。
10年前の放映日に合わせて、1話ずつ振り返ってます。
今回は第4話。

脚本:黒田洋介/絵コンテ:岩崎良明/演出:山崎茂/作画監督山川宏治/総作画監督下谷智之


和泉香メイン回。
りのの遊撃研修の最中、発生したとある事件の顛末が今回のエピソード。

というわけで1話に続き、和泉香2回目のピックアップ。


でも、今回の話って画像と文章だけじゃ魅力が伝わりづらいエピソードなんですよね。
シナリオが良い分、作画面は自分の語り口でなかなか上手く語れない部分が多いかなと。
ぜひ映像で見ていただきたい回。
とはいえ、語らないと進まないので語ります。
正直なところ、『極上生徒会』という作品のターニングポイントといっても過言ではない一本なのです。
3話のリフレインといいますか、対比構造になっています。
香を通じて、「人の上に立つこと」の大変さが描かれている、のかなと。
その辺りを踏まえて、見ていきましょう。



奏会長LOVEな香。
崇拝に近い憧れを抱いているからこそ、今回のメインを張れるわけで。
彼女の立ち位置が宮神学園の一般生徒に近しい所にあるので、
こういう憧れ方も極上生徒会外の者に通底する感覚を代弁してるとも言えそう。

まだ妄想が続きますが、愛あればこそといった所じゃないかと。
1話から少なからず描かれてきた香の強い憧れがここにきて、一気に爆発してるのがよく分かりますね。
りのには見られない感情の発露でもあり、お年頃の女の子感もちゃんと出てて、微笑ましいw

ザ・理想と現実
それにしても、このプッチャンの表情が小憎たらしすぎるw
上の4枚の画像で露わになっているのが、奏会長と香の「距離感」。
基本的に「近くて遠い」んですよね。
しかも物語が終わるまでこの「距離」が縮む事はありません。
後にも先にも奏会長と香がまともに会話する場面って、ほとんどなかったりします。
手の届く範囲にいるけど内から強い感情が溢れ出てくるあまり、届かない。
だからこそ奏会長と容易に近しい関係となった、りのが憎いわけです。



だから遊撃として一緒に行動することになった際に、プッチャンが牽制してくる。
りのを良く思っていない香が、責任を押し付ける事も容易である、と。
けど、りのは人に裏がないと信じているし、
香も後述する理由から、そんなことはするつもりもないと言う。
りのを評価してないところは同意してるけども。
同僚だけど、仲間じゃないという感覚か。



で、一緒に見回る中でクラスメートの桜梅歩と遭遇するシーン。
余談ではあるけど、このカットは先の事を考えると面白い。
どういう意味を持つかは次の機会に譲るとして、覚えておいてほしい構図。
まあ、大した意味合いはないのですけども。




ここも香の「近くて遠い」関係と、りのの「近い」関係の摩擦が起きてる。
物凄く定番ではあるけど、重要ね。
奏会長をキーにして、内と外のお話。
内で「親しい触れ合い」をするりの。
外で「強い憧れ」を抱く香。
内で憧れの対象者の知らない一面を知る者を妬むのは、外にいる者に当然沸き起こる感情。

けど、その「過ち」が望まれざる物だと気づけてしまうから、
この表情の変化が現れるわけで。
香がその利発さゆえに、自己嫌悪に陥っている所が結構細かいのかなと。



所変わって、今回の事件現場。
人形劇部の起こった小さな事件。
ちなみに切り刻まれて、ズタズタになっている人形の名前はスネーク君。
ゲームネタですね。スネェェェェェェェェェェェェク!
こうやって、ちょいちょいKONAMIゲームネタが差し込まれていく作品です。

まあ、気を取り直して続けていきます。
部員の取調べとかの展開はあるんだけど、色々すっ飛ばしてひとまずの一件落着まで。
人形劇部部長の青木さんの表情に注目かな。
意外そうな表情→ちょっと残念そうな表情→元の表情と変化している辺り。
この辺りが、3話で示された奏会長の信念との対比を垣間見せている。

それを強調するように、物語全体のカウンターであるプッチャンが見せる視線。
事件が解決し、和気藹々な雰囲気の人形劇部に潜む黒い真実の一滴を落としてるのが手堅い。
ついでにプッチャンが香を一瞥してる辺りも丁寧だよなと。
共犯関係というか、お互い分かってるんだなっていうサインにもなってる。



そして物語は真相へ──
と、入る前に香の過去が挿入される。
奏会長と出会った時の記憶。
辛い環境だった彼女に手を差し伸べて、自由を与えてくれた。
その恩義があるからこそ、奏会長の「悲しむ」事はやらないし、起こさせない。
香の決意はそういう固い信念があってのもの。
救ってくれた恩と憧れが重ねられた強い心が彼女の行動理念である。

では人形劇部部長、青木さんはどうだったか。
今回の事件の真犯人は彼女だった。
初めて部全体で(それまでは全てが彼女主導だった)製作する人形劇。
作業を部員たちで分担したことによって、芽生えた部員たちの才能を妬んでしまった故の行動。
事件は香が丸く収めたが、終わってはいなかったのだ。

「上に立つ者」が「憧れを抱く者」を妬み、濡れ衣を着せようとした。
青木さんのやった事は香にとっては許されざる行為。
香にとっての「憧れ」はそんな事はしない。
憧れを抱く者たちを受け入れる事はあっても、踏みにじる事はしない
青木さんの行動は「立場」が揺らいでしまうのではないか、
という不安によって引き起こされたもの。
この辺りは、基本スタンスのブレない奏会長との対比なのではないかなあと。
憧れを抱かさせる者ならば、少なくとも抱く者を幻滅させる行為はもっての外、ということだろう。
香が彼女をひっぱたいた理由はそんなところ。
サブタイトルの「素晴らしく冴えたやり方」を行ったはずの青木さんは、
「憧れを抱く」側の叱咤によって、「過ち」に気付かされた。
そして香もまた「素晴らしく冴えたやり方」で事件を収束させているのは間違いない。

香は叩いた後、「もっと楽しめ、バカ」と言う。
宮神学園に在籍する以上、奏会長の御旗の下、全てが受容される。
青木さんも部員たちの台頭を素直に受け入れて楽しめばよかったのだ。
そう言い放つ、香の迷いのなさは素直にカッコいいと感じられるのではないでしょうか。


こうやって再視聴をすると、
4話における香が『極上生徒会』という物語のテーマを語っていて、面白いんですよね。
ここまであまり実像をもって語られてなかった、
宮神学園と極上生徒会の意義を明確にしたのは彼女に他ならないわけです。
事実、この回以降はいわゆるモブ的な一般生徒たちのエピソードは出なくなります。
というより、一般生徒を介して語るべき問題を香が一手に処理してしまったんですよね。
香自体も極上生徒会メンバーの中ではもっとも一般生徒よりの子なので。
そういう物語の面において、軸が固まった回で非常に見応えのある一話だと思います。
……けど本筋はゆる〜いコメディなんですけどもね。
一度で二度美味しい、テイストの違いを感じていただけたら幸いです。


というところで、4話は以上です。
次回もまたよろしくお願いします。