音楽鑑賞履歴(2017年3月)

月一恒例の音楽鑑賞履歴。音楽メーターの感想を記事にしてまとめてます。
音楽メーターが5月いっぱいをもってサービス終了、つまり閉鎖となることが決定しました。CDの記録管理に使っていたので残念とはいえ、数年前から過疎化していたので致しないのかなとは。そういう懸念もあって、このブログを使って記録を残してたわけですがその甲斐はあったのかなと思います。
というわけで、自分の感想は3月いっぱいで音楽メーターへの投稿は終了、Twitterとブログで続けていく予定です。感想を残す以前のデータもサルベージできてますので整理が出来次第、公開したいと思いますのでもしよければご覧ください。

音楽メーターで書いた感想は1056枚。家にあるCDの何分の一になるかは自分でもわかりませんが、思えばたくさんレビューしてきたなあと思います。そういう事情もあいまって今月は37枚聞いてます。新規分が結構消化できたのが嬉しい所です。内容はGRAPEVINEThe Cribs特集ですね。ちょうど纏めて買えたというのもありますが。他のもいろいろ聞いていますが最後の方は音楽メーターの終了に合わせて、終わりを想起させるアルバムを意識的に聞いてたりしますのでその辺りもご覧ください。

そんなわけで今回は音楽メーターの纏め機能が使えないので、自分でCDリンクをペタペタ張ってます。地味に手間がかかってますのでその辺りの苦労も大変だったろうなあと眺めていただければ。

新生活が始まる季節です。色々と慌しい日々になるでしょうが、しっかり一歩ずつ歩んで生きたいものですね。
では、以下から感想です。


The positive gravity?案とヒント?

The positive gravity?案とヒント?

99年発表2nd。彼らの代表作とされる一枚。同時にジャパニーズヒップホップにおけるマスターピースのひとつと評されている。実際、ブックレットを開き、そのライムを眺める限り、日本語でラップすることに対し意識的に取り組んでおり、言葉に重きを置いている印象をとてもよく感じられる。
99年と言う世紀末に、来るべき新世紀に向けて、どう立ち向かうべきかの彼らの指針表明とメッセージを強く感じるとともに未来への憂いを交えながらも、前を向いて歩くことの力強さをフロウしていく様はとても真摯な姿が窺える。それだけに各曲の内容はそれぞれにぎゅっと詰まっている。
もちろん言葉の内容だけではなく、ファンキーなトラックメイキングの秀逸さや作り出されたビートに乗っかって、彼らの言葉がラップになって畳み掛けられるとこれほどにカッコよくなるのかと思うほど、切れ味は鋭い。エヴァーグリーンな魅力が詰め込まれた、骨太なカッコ良さが伝わる名盤だろう。
"2017-03-01 15:38:20",2017-03-01 15:43:32"2017-03-01 15:56:32"

ディス・イズ・スピードメーター

ディス・イズ・スピードメーター

03年発表1st。UK出身のモダンファンクバンド。ファンクならではのディープなグルーヴというよりは都会的なシャープさとキレのいい演奏で一気に熱狂の渦に引き込む感じは現代らしさがある。デジタルな音は使ってないが、クラブ映えしそうなファンクで気づけば踊りたくなりそうな雰囲気がある。
ファンクもそうだが、ラテンやサンバ辺りなど南米のリズムも取り入れており、もちろんホーンとの相性も抜群。逆にミディアムな曲がないので、ファンクとしてはさらっとした印象もあるが歯切れの良さとスピーディーさはUKバンドならではという趣も。どちらにしても聞いていて楽しくなる一枚だ。
"2017-03-02 10:26:47""2017-03-02 10:32:01"

Live Stock

Live Stock

75年発表ライヴ盤。74年11月27日のNYタウンホールでのライヴを収録したアルバム。のっけからご機嫌なテンションのギターが火を噴いており、その無邪気な演奏は留まるとこを知らない。わずか7曲という内容だが頭から尻尾までぎっしりあんこの詰まった鯛焼きの如く、充実したものとなっている
今で言うところのアメリカーナ(アメリカンルーツミュージックを総合的に扱う)音楽を奏でており、滋味溢れたサウンドとなっていて、非常に聞き応えがある。ロイの乾いたテレキャスから爪弾かれる芳醇なフレーズも素晴らしく、ギターが好きな人には堪らないものだろう。ギターを楽しむには極上の一枚。
"2017-03-02 19:15:17"75"2017-03-02 20:42:00"

04年発表2nd。前作の80sサウンドオマージュから一転して、フランス出身らしいアンニュイさとビザールな感覚が漂う、アコースティック&エレクトロニカサウンドを押し出した。楽曲のテンポもぐっと落とし、タメツメの効いた、マットかつミニマルなメロディが繰り返される。
R&Bやファンク、ヒップホップ辺りのリズムループを意識的に取り入れ、それらを換骨奪胎した音を響かせている。湿り気を帯びたヌメッとした爽やかさも相俟って、物憂げなモノトーンな雰囲気はジャケットのアートワークにも象徴されているように感じられる。地味ながらもその実、攻めた作品だろう。
なおこの手の作品にしては、録音がいいのも特筆べきところだが、04年発売の日本盤は悪名高きCCCDなので録音の良さを感じたいのであれば、CCCDではない輸入盤と14年に再発された日本盤をお勧めしたい。時流にとらわれず、バンドの音楽性を深めた一枚。
"2017-03-03 18:56:45""2017-03-03 19:01:14""2017-03-03 19:04:39"

CYPRESS GIRLS <完全生産限定盤>

CYPRESS GIRLS <完全生産限定盤>

10年発表3.5th、Part1。初のセルフプロデュース&コンセプトアルバムとして二枚同時リリースされた作品。ディスコグラフ的には3.5thらしい。続けて聞く限り、各盤の方向性はそれぞれ違うコンセプトでまとめられていると感じた。一言で言うならば「研鑽」という言葉が浮かんでくる。
初期の集大成的な前作を経て、バンドの地金を鍛え上げるのに注力されているように感じる。よりギターの叩き出すリズムにNW的な質感やポストパンク的な焦燥感などバンドの原点を振り返ることで、サウンドをより研ぎ澄まし、ギアを一段階上げた。新機軸より切れ味に拘った作品だろう。
この為、各曲のサウンドはソリッドになり、強度は増した印象も受ける。スケール感だったり、ダークな雰囲気やつんのめるギターリズムなど、バンドの核を磨きなおして、新たな形を提示している。過渡期の作品ながら吐き出すべくして吐き出した意欲的な一枚。バンドは新たな一歩を踏み出した。
"2017-03-04 23:49:28"","2017-03-05 00:31:00"","2017-03-05 00:35:56"

DETECTIVE BOYS <完全生産限定盤>

DETECTIVE BOYS <完全生産限定盤>

10年発表3.5th、Part2。初のセルフプロデュース&コンセプトアルバムとして二枚同時リリースされた作品。ディスコグラフ的には3.5thらしい。続けて聞く限り、各盤の方向性はそれぞれ違うコンセプトでまとめられていると感じた。一言で言うならば「拡張」という言葉が浮かんでくる。
同時リリースのもう一方が従来のバンドの持ち味を磨き上げる事に注力されているのに対し、こちらはバンドの可能性を模索しているというべきか。サウンドの幅を広げようとしている印象を持つ。なので、内容としては実験的であると思う。コラボレーションや新機軸の曲がより目立っている。m
新しい試みの中で持ち味をどう生かすか、の模索をしている点では二枚合わせて「過渡期」を分かり易く提示している。歌詞の方面でも思春期を通過したモラトリアムさが出していて、そちらでも一段階上がったものになっているのも注目か。試行錯誤を通じて、らしさを追及した作品群だろう。
"2017-03-05 10:08:23","2017-03-05 10:12:21""2017-03-05 10:21:56"

See you, Blue

See you, Blue

15年発表3rd。80sフレーバーの強いシティポップ&AORを現代的なエレクトロで響かせる従来の路線がさらに高圧縮された一枚。透明感の利いた、リズムのキメが多いメロディで攻めていく姿は80年代のバレアリックサウンドにも肉薄しているか。享楽的なリゾートパーティの趣がある。
反面、生楽器の質感があまりないのできわめて人工的かつデジタルさが全体を支配する。電脳世界のリゾートにトリップして、ノスタルジックな切なさをも味わっている隔絶した雰囲気を体感しているような気分に陥る。瑞々しさも切なさも永久に真空パックした様な作品。肌に感じる涼しさと熱を錯覚する。
"2017-03-05 18:47:44""2017-03-05 18:56:19"

Now He Sings Now He Sobs

Now He Sings Now He Sobs

・68年録音盤。リーダー第二作にして初のトリオ編成。ミストラフ・ヴィトスとロイ・ヘインズといった当時の新進気鋭が集まって演奏された、いわゆる新主流派ジャズを展開している。感性のみに頼らない、構築的かつ理性的なプレイにインプロヴィゼーションが乗っかっていき、熱気が篭る。
けして畏まった演奏ではなく、フリージャズ的な質感を従来のモダンジャズの中に押し込めたような演奏であり、その実、トリオの白熱したインタープレイが聞こえてくる。反面、ピアノのタッチがかなり硬質なので、タッチの柔らかさや流麗さにはやや欠けるのは否めないだろう。
ただその欠点を補って余りあるほど、この録音でのメンバーの勢いには目を見張る。チック・コリアはすでにこの時点から、らしい手癖が聞こえてくるし、ベースのヴィトスもドラムのヘインズも自己主張は極めて激しく、存在感をぶつけ合いながら、演奏が駆け抜けていく。新しい潮流がうねっているのだ。
黒人ならではのブルージーな深みは期待できないが、コンテンポラリーなシャープさやチック・コリアのラテンやスパニッシュフレーバーとともに新世代のジャズプレーヤーがそれぞれの個性を煌かせた一枚だろう。フロンティアを切り拓く希望に溢れているのが目に浮かびそうだ。
2017-03-06 22:44:42""2017-03-06 22:51:19""2017-03-06 22:55:01""2017-03-06 23:05:43"

退屈の花

退屈の花

98年発表1st。マーヴィン・ゲイの曲名が由来のバンド。当時の音楽シーンを感じさせる、くすんだ色合いと淀んだ雰囲気の中で、歌われるブルージーな感触のロックというのは隆盛しつつあったオルタナ勢とも角度の違う印象を受ける。派手さがない分、どっしりとした安定感のある演奏が響く。
いわゆるジャパニーズロックといわれる一勢が洋楽からの影響を押し出していたのに対して、明確に邦楽ロックの定型に則った音であり、その辺りにJ-POPらしさを嗅ぎ取れる。そういう垢抜けなさの一方で、商売っ気のない枯れた味わいの音にらしさがあるように思う。地に足についた佳作という所か。
"2017-03-08 20:47:32","2017-03-08 20:57:14"

Lifetime

Lifetime

99年発表2nd。前作から音が骨太になって、飛躍した感のあるアルバム。ブルージーな質感を基調に、轟音ギターが鳴り響くスタイルは翻ってUKロック的な趣も感じさせられる。恐らくはメロディの湿度が似ているためだろうか、鈍い光を放つ鉄刀のような切れ味。派手さとは無縁の世界が広がる。
GRAPEVINE,Lifetime,,聴いた,ソウルやブルースなどの黒人音楽の影響を轟音ギターロックに転化させるというのは日本のバンドとしては異色のように感じる。ポップさに背を向けたことで一本芯が通った音になった一枚かと。余談だが4のメロディの一部がツェッペリンの「天国の階段」のクライマックス辺りのメロディに似てるのはご愛嬌
"2017-03-08 22:32:28","2017-03-08 22:38:58"

Here

Here

00年発表3rd。今までの肌触りからギスギス感が薄まり、音もカドが取れて、まろやかになった印象を受ける一方で音の厚みと壮大さがスケールアップした一枚か。過去の二作に比べても、クセがなくなって聞きやすくなった。もちろん個性が失われたわけではなく、しっかりと旨味が出ている。
GRAPEVINE,Here,聴いた,ギターロックの方向性を保ちつつ、よりグルーヴィーに、よりブルージーに間口が広がって、原石から宝石が精製されるように、バンドの個性が結実した音が響き渡っている。アルバムタイトルの「Here」が象徴するように「ここにいる」事を高らかに宣言し、存在感を示した会心の作品ではないかと。
2017-03-09 23:06:05""2017-03-09 23:11:43",


DEAR FUTURE

DEAR FUTURE

・11年発表1stSG。4年ぶりの音源にしてバンド初のシングルリリース、なおかつアニメ「輪るピングドラム」前期ED曲。シングルながらカバーやRemixなどが入って、全7曲。参加アーティストが、アーバンダンスの成田忍、渋谷慶一郎Agraph(a.k.a 牛尾憲輔)などで豪華布陣。
オリジナルはCOTDのシューゲイザー要素を抜き出して、きわめてポップにした一曲。海外アーティストも参加しており、どちらもネオシューゲイザーバンド。リンゴ・デススターなどは耳聡い音楽ファンなら名前を聞いたことがあるかもしれない。成田忍のカバーはサイバーエレポップな肌触りの好演。
聴いた,渋谷慶一郎とWatchmanの各Remixはオリジナル版と異なり、同作品のキャストである堀江由衣をボーカルに迎えたもの。渋谷慶一郎の方がよりRemixの利いたカオスな仕上がり。後者はよりVoを映えさせるバージョンで本編でも使用されている。牛尾憲輔のRemixも聞き応えがある。
とこのように全7曲、それぞれ趣の違うものに仕上がっているので、同じ曲を聴いているという印象は薄く、ミニアルバムに近い構成になっている。一粒で何度も美味しい作品だ。
"2017-03-11 18:23:26""2017-03-11 18:28:19""2017-03-11 18:32:25","2017-03-11 18:36:20"

Pat Metheny Group

Pat Metheny Group

・78年録音盤。邦題「想い出のサン・ロレンツォ」としても知られる、パット・メセニー・グループの初作。ジャズといえば、黒人のブルージーなフィーリングやファンキーな黒っぽさがまずイメージされるが、そういったイメージとはまったく逆のジャズギターを指向しているのがパット・メセニーだと思う
奏でられるギターのフレーズはとても透明感がありなおかつ爽やかで何者にも染まらない、真っ白な印象を持つのが特徴。
スケールや奏法はまさしくジャズのそれで技巧的なのにとてもフラットに聞こえる。ともすれば、カントリーやフォークなどを内包したコンテンポラリーな趣と言えるか。,そういう点ではジャズに限らず、アメリカンミュージックを包括した「フュージョン」であるのがメセニーの長所なのだが、一般的に言われるフュージョンとは少し角度が違っていたりする。ファンキーなフィジカルさよりも構築的な知性が光る辺りなどは、AORなどのライトメロウにも近い。
そういう所以もあるからか、サウンド自体も開放感と天にたゆたうような大らかさに心地よさやリリカルで知的な雰囲気が漂っているのも頷ける。もちろん演奏も淡いものかと思われがちだが、本作は演奏も非常にキレがいい。外れ曲はないがハイライトナンバー6は勢いに任せた超絶技巧が聞け、油断ならない
色々な物が混ざっているから、味が淡白かと思われがちだがしっかりと、ジャズの味が立っていて、4〜50年代のジャズとは全く違うジャズ(フュージョン)が鳴り響いている。印象は爽やかながらも、鮮烈なまでにジャズのまだ見ぬ地平を切り開いている傑作だろうかと。存外、熱の込められた力強い一枚。
"2017-03-11 23:08:39","2017-03-11 23:13:33""2017-03-11 23:16:36""2017-03-11 23:24:20""2017-03-11 23:28:54"

Still Life (Talking)

Still Life (Talking)

・87年録音盤。88年のグラミー賞「ベスト・ジャズ・フュージョン・パフォーマンス」部門受賞作。ブラジル音楽の影響が色濃い作品。初期作に比べると、音色・リズムともに多彩な印象を受ける。この辺り、北米だけに限らず、アメリカ大陸全体を取り込んだ、広範な音楽を纏め上げているのが興味深い。
エレキ,アコギ、さらにギターシンセにブラジル系のVoを3人駆使して、ブラジル音楽のエッセンスを落とし込み、メセニーならではの雄大さを絡む事でワールドミュージックとしての汎アメリカ大陸サウンドを提示する高い音楽性は類を見ないかと。そのコンテンポラリーさには好みが分かれるところだが。
熱帯雨林の中でそよぐ涼しい風のような爽やかさと瑞々しさが包み込む印象の中にジャズのパターンを組み込ませて、響かせるそのミックス感覚は今聞いても新鮮だろう。意外とリズム面もブラジル音楽の倍音リズムが組み込まれていて、テクノ的なアプローチにも聞こえる。
とあるディスクガイドにはドラムンベースのアーティストに影響を与えたのでは、とされておりそういったビート面でも興味深い一作。詩情溢れる3はジョジョの奇妙な冒険のアニメ3部のEDにも使用されている。極彩色のジャズが繰り広げられる充実盤。意外とダンサブルです。
2017-03-13 20:26:00",,"2017-03-13 20:35:02",,"2017-03-13 20:42:32",,"2017-03-13 20:47:15"

Marsalis Standard Time, Vol.1

Marsalis Standard Time, Vol.1

85年録音盤(リリース自体は87年)。80年代ジャズ新世代、いわゆる新伝承派とされるトランペッターによるジャズ・スタンダード集。フュージョンの勢力がまだ強かった(なおかつジャズそのものの勢力が弱かった)時代にあえて直球勝負のジャズを繰り出してきた挑戦的な作品だろう。
印象としてはとにかくスタイリッシュだ。コンボジャズの黄金期から感じられる、荒唐無稽さというか荒くれものたちが繰り出す粗野でエネルギッシュな熱気とは違う、気品と知性が送り出すテクニカルなパッションが漂い、従来のモダン・ジャズから「新解釈」をしているところに新しさを感じる。
先人たちの名演を踏まえ、それを解釈して、新たなプレイを生み出す。良く言えば新解釈、悪く言えばスキ間縫い。その辺りが新伝承派の功罪が表れる点なのだろうが、ジャズそのものを考察・研究し、実践するそのアプローチはかつてなく理知的なものといえるだろう。そういう面では様式美的でもある。
それらを抜きにしても、音の抜けの良さと新世代によるアコースティックなモダンジャズの王道たる演奏は非常に鮮烈だ。リーダーのウィントンの技量もさることながら、サイドメンのピアノやリズム隊も負けず劣らず、エネルギッシュなプレイで華を添える。特にピアノはトランペットともにこの盤を牽引する聴いた,ジャズを様式美として捉え直し、その枠内で自らの表現解釈を提示する。自由度を増していったモダンジャズの境界線を改めて、定義付けた点こそが彼の功績であり、この盤もその意味合いでは、極めて強力な一枚だろう。クラシカルなジャズとして80年代以降のベンチマーク的な作品だ。
"2017-03-14 22:03:39","2017-03-14 22:10:43""2017-03-14 22:17:58""2017-03-14 22:24:52"
"2017-03-14 22:33:10",
Circulator(サーキュレーター)

Circulator(サーキュレーター)

01年発表4th。ベーシストの西原誠が病気の治療による一時離脱をし、三人で製作された作品。前作よりメジャー感が出て、さらに聞きやすくなった印象を受ける。一人足りない中、そのハンディを感じさせない力作となった。ストリングスやKeyが効果的に使われている事で音の幅も広がっている。
災い転じて福となすという言葉の通り、メンバーが一人欠けた事で、より多様なサウンドを意欲的に取り込むことが出来た作品だろう。バンドの持ち味であるグルーヴィーさもより熟成され、滑らかに。時に叙情的で壮大な響きも力強くなった。一皮剥けて、新たな境地へと踏み出した傑作。初手にもおすすめか
"2017-03-15 23:01:59","2017-03-15 23:07:23"

GRAPEVINE LIVE 2001 NAKED SONGS-通常盤-

GRAPEVINE LIVE 2001 NAKED SONGS-通常盤-

02年発表ライヴ盤。01年末のツアーの模様を収録した内容。低音重視の録音でうねるベースを軸に骨太なギターロックを展開している。ライヴ盤を出すだけあって、ライヴバンドとしての魅力を実感できるのがありがたい。同時にここまで派手さのない渋い演奏で力強く押していくのは拘りの強さゆえか。
枯れた味わいの中、グルーヴィーに鳴り響く演奏はライヴ独特のドライヴ感が重なり、往年のハードロックバンドさながらの切れ味鋭いワイルドさを醸し出す。6でのジャム演奏も含めて、それらを退屈させることなく聞かせるのは流石の一言。バンドの脂の乗り切った演奏をパッケージングした良盤だ。
,"2017-03-16 22:30:07","2017-03-16 22:52:04",

ワイルダー

ワイルダー

  • アーティスト: ザ・ティアドロップ・エクスプローズ
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2015/03/18
  • メディア: CD
  • この商品を含むブログを見る
81年発表2nd。前作を踏まえて、独自の音楽センスがさらに際立った作品。というより、ポストパンク/NW以降のUKロックのあらゆるトレンドをこの時点で通り過ぎているような感覚を受けるサウンドネオアコあり、シューゲイザーあり、マッドチェスター、ポップな感覚はブリットポップそのものだ
後の音楽シーンに繋がる可能性を網羅してはいるが、その繋ぎ合わせ方や混合度合いがわりとカオスかつ奇妙な質感で提示されているので、どこかしら垢抜けずメジャーな音になりきれていないのがこのバンドらしいところでもあるか。それだけジュリアン・コープという才能が際立っている証でもある。
ただ今作を最期にバンド活動は停止し、ジュリアン・コープはソロ活動に邁進していく事になる。ある種、時代の仇花的作品でもあるが、80年代以降のUKロックの可能性の原石みたいな作品でもある。ただ彼らは宝石にすることが出来ずに終焉を迎えてしまった。派手さはないが、聞ける一枚。
"2017-03-19 16:56:25""2017-03-19 17:02:50""2017-03-19 17:06:54",

5年発表2ndSG。前のシングルと同じくポップ路線のリード曲を配するシングル。より洗練された印象だが演奏の鋭角はさらに際立つ出来になっている。バカテクな演奏で高圧縮シティポップスを展開しているのはメジャーシーンで戦う道筋を見出し、軸が定まった感じすらある。
ゲスの極み乙女。,私以外私じゃないの(通常盤),,聴いた,全体にセンチメンタルでメロウな旋律が、メンバーの演奏力によって、ものすごく雑多な色付けをされており、3の既存曲のライヴ仕様verなどはそれがもっとも顕著な一曲だと思う。そういう点では垢抜けた、ということかもしれない。確実にバンドの著しい成長が感じられる一枚。
"2017-03-19 23:06:00""2017-03-19 23:11:04"

結晶~Soul Liberat

結晶~Soul Liberat

92年発表2nd。一聴して「濃い」アルバム。コーヒーでいうとエスプレッソのような濃密さで聞く者を攻めてくる。強調されたボトムラインの重低音と田島貴男のねっとりとした色艶のある歌声がフォービートのリズムに乗って、聞こえてくるのはとても耽美な経験でもあり、そういう雰囲気を帯びた盤だ。
当時の流行とは一線を画すような、芳醇な黒い香りが立ち込める音だが不思議とクドさはなく、洒脱さを感じるスタイリッシュなものになっているのが面白い。かといってファンキーさを狙ったコマーシャルなものではなく、どちらかといえばパーソナルに近い密な空気を味わう作品だと思う。
,あたかも心音のようにグルーヴする重低音がこの盤の核で、その演奏のニュアンスが肉感的な印象を与えているのだろう。派手な装飾音よりも体温を感じさせる音。それが全体を支配し、響いている。まさしく「結晶」のような一枚だろう。一人の時にじっくり聞きたい傑作。
"2017-03-21 21:08:05","2017-03-21 21:22:29""2017-03-21 21:31:14",

Dregs of the Earth

Dregs of the Earth

80年発表4th。ジャケットには堂々とDixie Dregsと冠されているが、所属レーベルの倒産に伴った移籍でDregsに名義を改めてリリースされた最初の作品。恐らくはリリースの直前で倒産したためにゴタゴタがあったのではないかと推測される。なお本作よりKeyが交代している。x
そんな状況をものともせず、サウンドの方はカントリー&ブルーグラスをベースにしたハードプログレッシヴフュージョンという独自路線をさらにソリッドにさせたものになっている。能天気さに突き抜ける、陽気なメロディとアンサンブルは尋常ではなく、高度なキメのオンパレードだ。要はバカテクプレイ。
キャッチーなメロディーを維持しながら、テンションの高い、テクニカルな演奏はここまでの作品の中でも随一だろう。反面、リズムセクション共々、ノリがHR/HMしてるのは後のスティーヴ・モーズのキャリアを考えれば、自明の理ではあるか。そこらを差し引いても、かなりエネルギッシュな一作かと。
"2017-03-23 20:29:14""2017-03-23 20:33:38","2017-03-23 20:38:17",

The Cribs

The Cribs

04年発表1st。英国の兄弟バンド(双子&弟)。The Strokesを始めとしたロック・リヴァイバルなローファイサウンドに英国ポップスの甘いフレーヴァーとアイロニーな屈折した感覚が綯い交ぜになっている不思議な一枚。技巧的なわけでもなく、キャッチーな派手さもあまりないがクセになる"
ローファイサウンドに降りかかるポップセンスの勘の良さがメロディをカラフルに色付けしており朴訥ながら気持ち良さを感じさせる作りだ。本家のロックリヴァイバルよりポップアートな香りは薄く、より肉感的で人懐っこさがあるのもなにか憎めない。噛めば噛むほど味が出そうなスルメ盤。長く楽しめそう
"2017-03-24 20:45:25"

The New Fellas

The New Fellas

05年発表2nd。オレンジ・ジュースで有名なエドウィン・コリンズプロデュース。前作の雰囲気をよりコマーシャルな音でパッケージングした印象で、ローファイ感は薄れたがクリアな録音で彼ら独特のポップセンスが際立つ作りに。不安定さはなくなり、確固としたスタイルをきっちりと押し出している。
やはり兄弟バンドだけあって、息の合ったプレイがバンドのグルーヴになっているようにも思うし、USオルタナやロック・リヴァイバルを通過したラウドな音に、UKロックの多彩かつ芳醇なメロディが程よくブレンドされていて、聞いていて気持ちいい。ミディアムな曲なども取り上げていて、意欲的な一枚
"2017-03-25 21:10:08"2017-03-25 21:22:30"

Men's Needs Women's Needs Whatever

Men's Needs Women's Needs Whatever

x07年発表3rd。レーベルをワーナーに移しての第一弾。プロデュースがフランツ・フェルディナンドのアレックス・カプラノス。ここまで方向性がブレないというか、良くも悪くも金太郎飴のごとく、自分たちの音をいつものように送り出している。大きな変化はないが彼らの良さが変わらず伝わってくる。
,聴いた,プロデュースがプロデュースなだけあって、本作は楽曲の質感がダンスビートっぽい印象はある。彼らのミニマルでローファイなリフのフレーズを強調しているのか、その辺りNW/ポストパンクリバイヴァル的な音とも言える。そういう点では1stのストロークスっぽさが戻ってきてるとも言えるか。
そういう点ではフロア的でもあり、一番最初の朴訥とした雰囲気はなくなっていて、アーバンな感じもかとなくある。が、バンドの軸はそのままなので非常に安定しているのが心強い。何をやっても、自分たちの音になる自信と自負が窺える作品なのではないかと。三作目にしてこの磐石さは頼もしい限りだ。
"2017-03-26 11:42:33""2017-03-26 12:31:43","2017-03-26 14:11:00"

Ignore the Ignorant

Ignore the Ignorant

09年発表4th。ザ・スミスなどで有名なジョニー・マーをメンバーとして迎え入れ、4人編成で製作されたアルバム。ギターがもう一人増えたため、今までよりも分厚い音が襲い掛かってくるので、ジョニー・マーというギタリストの存在感とその加入効果は絶大なものがあると思わせる出来。
そういった所で彼らのキャリアの中では異色作に相当するだろう一枚だが、ジョニー・マーの瑞々しくも切れのあるギターが絡まる事で切なさやリリカルさが加わり、サウンドに大人びた味わいが深まった印象を受けた。ザ・スミスでのギタープレイがそのままテクスチャで張り付いた感じもある。
序盤の3曲が彼らとマーの感性がよりブレンドされていて、以降の曲は従来のバンドサウンドにマーが最高の脚色した音だろう、反面マーのギターを生かすためにロックサウンドが強調されていて、メリハリに欠ける部分がなきにしもあらずだがそこを抜きにしても、この意外な組み合わせは成功してるといえる
残念ながらマーとの4人体制は本作限りで、再び兄弟バンドに戻るがこのアルバムを通じて、彼らはまた一段階新たな局面に踏み出したように思える。ビッグネームとの交流が彼らの成熟した部分を引き出した。それぐらいの収穫があると感じられる作品だろう。なおバンド史上一番の売り上げを記録した
"2017-03-26 21:39:54""2017-03-26 21:44:52","2017-03-26 21:50:11""2017-03-26 21:59:58"

Jurassic 5

Jurassic 5

97年発表EP。彼らの一番最初の音源集となる一枚。この一年後に5曲プラスした初めてのアルバムを送り出すことになるが全ての始まりはこの作品から。わずか22分だが、彼らの魅力がぎゅっと凝縮された作りになっている。ヒップホップ、ラップミュージックの王道を歩んでいる音というか。
ソウルやファンク、ジャズといった脈々と繋がれるブラックミュージックの血脈の上にヒップホップが築かれている事実をきっちりと押し出したトラックメイキングに畳み掛けるラップはきわめてファンキーに響いてくる。温故知新を地で行くような彼らの姿勢が強く感じられる挨拶状的な作品だ。4が白眉。
,"2017-03-26 23:44:46",,"2017-03-26 23:53:51",

20Ten

20Ten

・10年発表27th。再びヨーロッパで発行される新聞各紙に無料添付された作品。が、今作は無料配布のみに留まっているので17年現在、入手が困難か。当然日本盤は未発売。リリース当時は輸入盤として購入が可能だった。サウンドの方は自身の80sサウンドへの原点回帰的な内容。
昨今の80sリバイバルの余波を受けて、作られただろう楽曲は当時を生き抜いた者として深みと現代的なサウンドテクスチャーが絡み合い、かつてなくポップに突き抜けた(開き直った?)音が聞こえてくるのがオールドファンには嬉しい感じだろうか。音の良さは当時と比べるべくもない程。
音の粒立ちが非常に良く、全盛期独特のモコモコサウンドが重低音のメリハリとともにクリアに聞こえてくるのには結構驚くのではないかと。そういった開き直りと思い描いた通りのミキシングで響いているだろう、快作ではないだろうか。なにか吹っ切れた印象のある悟りの境地的な一作。ポップな殿下です
"2017-03-28 00:00:23","2017-03-28 00:02:38""2017-03-28 00:10:52",

Around the World in a Day

Around the World in a Day

・85年発表7th。大ヒットした前作から次の一手に指したのは60年代に遡ったようなアンニュイなサイケサウンド。もちろん音の色合いや質感は80sサウンドそのものだが危うげな香りとストレンジでマジカルかつ幽玄な雰囲気が漂う。その隠し味に前作までのポップセンスが絡んで、非常に濃密。
そういったサウンドの急変に目が行きがちだが、アルバム構成に目を向けると実は前作と盛り上げ方がほとんど一緒だったりする。殿下らしい密室感と音楽性が濃い目に出たネオサイケ的な一枚。名実ともに第二期の始まりを告げる作品。スピーディさには欠けるが煮えたぎるエモーションは折り紙つきだ。
"2017-03-28 20:58:50","2017-03-28 21:08:00",

Story of I

Story of I

・76年発表1st。Yesのメンバーが各自ソロ作をリリースする企画の一環として出された鍵盤奏者の初作。ジャズやラテンミュージックの影響が色濃い、組曲形式のアルバム構成でほぼメドレーで演奏されている。「Relayer」で聴けた鮮烈なプレイはここでも健在だ。
パーカッションの細やかなリズムにシャープなシンセサイザーの音が切り込んでくる中で、大自然雄大さとコズミックな印象が壮大に響く、シンフォニックなサウンドにはまさしくプログレの香り。特に中盤から後半にかけての盛り上がりはかなりの聴き応えだ。YESメンバーという以上に個性が出ている。
"Patrick Moraz","Story of I",聴いた,この充実した内容で何かを掴んだのかは定かではないが、直後に音楽性の違いからYesを脱退して、ソロ活動に入っていくことになる。そういったキャリアの第一歩として傑作の部類に入る一作かと。なおこの演奏内容で誤解されがちだが、モラース本人はスイス人である。そう考えると不思議な一枚だとも。
"2017-03-29 22:16:27","2017-03-29 22:21:48","2017-03-29 22:27:23",

ひこうき雲

ひこうき雲

・73年発表1st。現・松任谷由実のデビューアルバム。そしていわゆるニューミュージックの金字塔。バックの演奏陣にはティン・パン・アレーという鉄壁な布陣で送り出される柔らかな叙情性を持ったサウンドと切れ味の鋭い歌詞で颯爽と時代を切り開いた。リリースから半世紀近いが色褪せない名作。
荒井由実の持つ英国的なウェットな叙情性とバックのティン・パン・アレーの面々(細野、鈴木、林、松任谷など)のウェストコーストサウンド寄りのカラッとした爽やかさが絶妙にブレンドされて、洋楽的だがとても日本的なメロディを表出させているのがこの盤最大のエポックだろう。
当時の歌謡曲シーンとも一線を画す、新しい音楽(=ニューミュージック)は現在に続くJ-POPの礎にもなっている。もちろんSSWという点でも当時の潮流とはいえ、鮮烈な船出だったといえる。どこを切っても、凄まじくレベルの高い、日本のポピュラー音楽史に残る名盤のひとつだ。
"2017-03-30 20:35:51","2017-03-30 20:42:30""2017-03-30 20:49:58",

MISSLIM

MISSLIM

・74年発表2nd。前作とほぼ同じ布陣で製作された作品。一部コーラスで山下達郎も参加している。そういったことが起因しているわけでもないが、前作に比べるとより垢抜けたサウンドとなった。いわゆるシティポップス的な萌芽が見受けられるといえばいいだろうか。洒脱なセンスがそここに見られる。
もちろんそれらはティン・パン・アレーの面々に支えられている部分も大きいが、前作(これも十二分に名盤であるが)という助走が終わり、バンドとして小慣れた感じに熟成されたのが一番だと思われる。より混ざり合って、精度が高くなっているのだ。ひとつの完成形が早くも姿を現したと言っていい。
荒井由実,MISSLIM,聴いた,淡い透明感や爽やかな若草の匂いや都市や海岸の情景、どれひとつも海外ではなく日本の姿を鮮やかに切り取っているのが凄まじいし、それを下支えする演奏陣も日本最高峰のメンバーが揃いぶみ。これで良くないわけがない(合わない人も当然いると思うが)と思える名盤。前作共々ベースラインが素晴らしい
2017-03-30 22:23:32""2017-03-30 22:28:19","2017-03-30 22:34:14",

夜明けの口笛吹き

夜明けの口笛吹き

・67年発表1st。後にプログレのモンスターバンドとして名を馳せるピンク・フロイドの初作にして特異作。というのは当時のフロントマン、シド・バレットがアルバム全編で参加した唯一の作品だからだ。むしろ彼が「常人」の状態で録音された、最初で最後の一枚というべきか。
,作品の内容は当時の流行と踏襲した、サイケデリックロック。まだプログレというべき音の影形はないが、シド・バレットが自身の才気を爆発させて、叩きつけた音はとてつもなく奇妙でシュールで摩訶不思議な魅力を放っている。童話や伝承、言葉遊びの世界を忠実に再現するとこうなるというようなそんな趣
正気と狂気のバランスがギリギリの所で保たれているような演奏で、後に彼のソロ作で聞ける、徐々に崩壊していくメロディが他のメンバーや彼の理性によって、纏まりを得ている事が良く分かる。というより既に精神的な危うさと際どさが全体に漂っているのは否めないだろう。この時点ではまだマトモだが。
音の内容は、流石に今聞くと古いと感じてしまう部分があるが、それを考慮して聞けば、未分化な音の中で煌びやかに輝くメロディが暴れまわる様子はまさしくドラッギーな魅力を放っている。しかしその閃光は長続きできず、バンドは大きな喪失感を伴いながら進むことになる。一瞬の輝きが永遠となった一枚
"2017-03-30 23:50:50","2017-03-30 23:56:18""2017-03-31 00:06:30""2017-03-31 00:20:55",

友だちを殺してまで。

友だちを殺してまで。

・10年発表1stミニアルバム。彼らのデビュー作。2chやニコ動などで楽曲投稿を繰り返していたの子を中心とするバンド。90年代のオルタナミュージックとJ-POPがブレンドされるとこうなるのかという、原石の塊。ただしの子本人は当時の発言で自分の作品っぽくなくて大嫌いと評している。
とはいえ、歌詞も当然ながら楽曲もかなり独特であえて形容するならば、オルタナのダウナー感と90sJ-POPのキラキラ感が一緒くたになっているメロディにテクノ起因のリズムパターンが人力の演奏として絡まっているという、奇妙かつ中毒的なものとなっている。躁鬱を繰り返すドラッギーな感覚だ。
同様に歌詞も躁鬱的であり、渇望や諦念、絶望と希望がカオスになっているし、タイトルを見ればわかるように、きわめて範囲の狭い中で草臥れた感じがとても病的でもあるが、時たま心の隙間を抉られてくるのには非凡なものを感じずにはいられない。絶望的な危うさも感じるが同時に可能性に満ち溢れた一枚
"2017-03-31 21:27:35",,"2017-03-31 21:32:48","2017-03-31 21:38:20"

Out of Reach

Out of Reach

78年発表10th。以前、レビューをしたが正規リマスター盤を購入できたので改めて。中心人物のホルガー・シューカイが唯一参加していない盤で長らくディスコグラフィからも抹消されていた、「失敗作」として名高い一作。リマスター効果もあって、音の粒立ちは格段に良くなっている。
大黒柱がいない分、バンドの緊張感は皆無でパーカッションとドラムのリズムにディスコっぽい肌触りのスペーシーなシンセやギターがとてもユル〜く鳴り響いているのがなにか気の抜けた印象を感じてしまう。というより曲ごとの違いがあまりなく、アルバムとして締りのないダルさが妙に心地いい。
なにかドイツ人のもう一方の性質であるノンキな能天気さがこの盤に限っては表れているように思う。妙なノリではあるが、悪く言ってしまえばIQが低い感じというか。知性の裏側にマヌケな顔が見え隠れしてしまう。そういう点ではジャムセッションに近いような作品だとも。気楽に聞く分には楽しい一枚か
"2017-03-31 22:33:25""2017-03-31 22:38:19""2017-03-31 22:45:19"

アフター・サーヴィス

アフター・サーヴィス

・84年発表ライヴ盤。83年12月の散開ツアーの模様を収録したライヴアルバム。散開することが決まり、曲目も全キャリアから代表曲を選りすぐったまさしくサービス満点のものとなった。アルバム未収録のシングル曲「過激な淑女」もライヴ録音ながらばっちりと収録されている点では貴重だろう。
ドラムはほとんど元ABCのドラマー、デヴィット・パーマーに任せ、YMOの三人は歌と演奏に集中しているのも大きな点か。なによりデビュー当時、あれだけでかかったシンセの機材がひとつの楽器としてコンパクトに収まっているには目まぐるしい、技術の進歩があったゆえだろう。
グループの幕引き、店じまいという仕事としては三人とも非常にきっかりしていて、この盤もそういったニュアンスを感じえなくもない。デヴィット・パーマーのドラムは前半の初期曲はリズムがスクエア過ぎて面白みにかけるが、ライヴ後半の歌ものにはこのクセのなさがちょうどいいほどだ。
83年の時点で既に80年代末の日本におけるポップスの雛形がここで提示されているのにはやはり先鋭的なグループであると感じられるし、彼らがその土壌形成の一翼を担っていたことも良く分かる。最後の終了アナウンスに祭りの終わった寂しさはあるが、悲しくはならない充足感のある最終作だろう。
"2017-04-01 02:05:57""2017-04-01 02:10:48""2017-04-01 09:12:16""2017-04-01 09:29:16"

TECHNODON

TECHNODON

・93年発表8th。スタジオアルバムとしては再結成盤にして最終作(17年現在)。散開から10年経ち、再び終結した三人が繰り出した、デトロイトテクノに影響を受けたサイバーパンクかつポストモダンの色合いが濃い一作。この為、ポップな質感はかなり希薄だが10年という年月の分、音楽の奥行きは深まっている
華やかなカラフルさで通す分かり易さはあまりなく、墨の濃淡でタッチを表現するような仕掛けになっていて、聞き込むほどに味わいの深くなる音だとは思うが、YMOという一世を風靡したグループの再結成としては、大衆の期待する姿に迎合していなくて、彼ららしい天邪鬼さが伺える。
しかし、いわゆる「テクノ」としては幾分かポップなニュアンスがそこかしこに存在していて、そのかすかな甘さに「テクノポップ」としてのYMOを見出すことはできるし、プレスリーカバーの12はその顕著な例だろう。彼ららしく作り込まれた「テクノ」としてのYMOが味わえる作品。とてもスルメ盤
,"2017-04-01 11:02:50""2017-04-01 11:15:07","2017-04-01 11:29:58",

Can (Hybr)

Can (Hybr)

79年発表11th。前作同様、正規リマスターが手に入ったので再レビュー。ラストアルバム。ホルガー・シューカイがテープ編集という形で参加。たったそれだけなのに前作と比べて、緊張感があり引き締まったサウンドとなっている事実がCANというバンドを物語っているように思う。
前作に引き続きユルいジャムセッション的な音ではあるが、本作はそういった素材を元に何かしらのテーマ付けによって構築されているように思う。まあ、そういうことを抜きにしても前作の気楽さはあまりないがCANらしい音というのならば、こちらに軍配が上がる。
しかし、終盤3曲はまさしくヤケクソといっていい。クラシックの「天国と地獄」のカバー、30秒のピンボンのラリー音、NW的なリズムパターンにギターの祝祭的でクラシカルな旋律があっけらかんとバンドの終焉を飾る。悲しさや寂しさも一切感じさせず、これでお終いという潔さが徹底されているのだ
何の感慨を感じさせることもなく、ただ終わるために終わるというとってつけた感じのドライさがこのバンドの骨子だったのだなと思うし、終わる事が特別ではないとも言っているようにも見える。終わるべくして終わりを提示した一枚だろう。つまりこれにて「完(CAN)」なのだ。たぶんそれでいいのだ。
"2017-04-01 13:17:31","2017-04-01 13:30:37""2017-04-01 13:38:21""2017-04-01 13:43:24"