音楽鑑賞履歴(2019年9月) No.1341~1345

月一恒例の音楽鑑賞履歴。
9月は5枚。いや、なんでか聞く余裕がなかったってのと、音楽探訪をSpotifyに向けてから、じっくり聞く機会そのものが少なくなってる感じはありますね…。Spotifyで聞くのもいいんですけど、時たまゆっくりと聞きたくなる時もあります。もう少し枚数聞ければ良いんですけども。
5枚ですがそれとなく満遍なく聞いてると思います。特定のアーティストを集中して聞いたわけではないですね。9月を過ぎて10月。夏の暑さは鳴りを潜めて、ようやくだんだんと涼しくなってきました。体調を崩しやすい季節でもあるので気をつけていきたいですね。
というわけで以下より感想です。




Primal Scream

Primal Scream

Amazon
・89年発表2nd。前作のネオアコサウンドから一転して、70年代的なルーズ&グラマラスなロックンロールになった一枚。はやくもバンドの特徴である振り幅の大きい変化が顔を出しているわけだが、この気だるくケバケバしいダーティなサウンドは今思えば、90年代の前哨戦でもあるように感じられるか。
グラムロック回帰な一面もあるが、その中から後につながる要素としてどうにもならない、やるせなさを掬い取ってくるのは慧眼というべきなのかどうか。事実、次作に収録される「Loaded」の原型である「I'm Losing More Than I'll Ever Have」などはやはりバンドの分水嶺であったようにも感じる。
というよりは、時代に呼応するか否かの岐路に立たされていたというか。倦怠感からくるやるせなさを音楽でどう表現するかとなった際に、どこに快楽を求めるかという点で彼らはロックにそれを求めず、アシッドハウスのドラッギーでトリッピーなビートを選択した、というのは大きいように思う。
この作品におけるダルでルーズなサウンドストーンズ的でもあると思うし、それがアルバムの魅力なのだろうけど、これを当時に送り出せるボビー・ギレスピーのブレのなさは今なお一貫したものなのではなかろうかと。どことなく来るべき次の10年を予見していたようにも思える佳作なのではないだろうか。




16年発表SG。同名アニメの前期主題歌集。OP曲、ED曲どちらもうねりのあるベースラインを主体にした、ブラックミュージックを基調にしたポップな楽曲。特に主演キャスト二人の歌唱するED曲はモータウン調R&Bをベースにゴルペルチックなコーラスを重ねられたリズミカルな一曲。
OP曲はいまや大御所作詞家である森雪乃丞を起用。作品を見事にパッケージングした歌詞内容は女児アニメの可愛らしさの中にも機知を感じるクレバーな構成。割と驚くのは録音ミックスで、歌手の歌声を前面に押し出しているものとなっているのは、往年のポップスのような攻めを感じなくもないか。
同シリーズの楽曲をいくつか聴いていても、この「魔法つかいプリキュア!」のOP曲の押し出し方は聞いてきた中でも、結構極端な印象を持つか。それが悪いというわけではなく、ボーカル曲としては割りと王道でもあるようには思う。どちらにせよ、作品世界を上手く伝える楽曲シングルだろう。



Vol. 1-2-Degradation Trip

Vol. 1-2-Degradation Trip

Amazon
02年発表2nd、の完全盤。この年の6月にリリースされた単体盤から楽曲を増補する(というより、当初予定していたトラックリストの)形で送り出されたもの。二枚組120分超の大作でかなり聞き応えのあるものとなっている。内容はAlice In Chainsでのバンドサウンドの延長線上の作りで、ダウナーな印象。
このアルバムを発表する際に、レーベルの移籍、またAlice In ChainsのVo、レイン・ステイリーがオーバードーズ亡くなるという悲劇を経験しており、その影響がこのアルバムでも滲み出ているが、ヘヴィかつダウナーなドゥームサウンドはバンドでもソロでも変わらぬ魅力として健在だ。
陰惨な印象だがウェットさはなく、スラッジな感触も受ける乾いたサウンドはサザンロックやブルースな趣も感じられ、味わい深いものだろう。この時点で活動休止中であったAlice In Chainsサウンドそのままでもあり、フロントマンの一人として面目躍如といった所。実際、バンドが再始動するのに4年要す
いろいろと複雑な状況下で生まれている作品だが、へヴィなサウンドにしろ、無骨なアコースティックサウンドにしろ、深みを増して、ソングライティング的には熟練したサウンドとなっているのが、このアルバムの美点であるし、バンドの次なるフェーズへと繋げるバトンとして、意義のある作品だろう。



16年発表7th?あるいは企画盤。大滝詠一の死後三年経ってから、発表された他アーティストへ提供された楽曲のセルフカバー曲集。家族にすら存在を知られていなかった音源が発見されたことでリリースに至った作品でもある。それゆえにレコード会社には「奇跡のニュー・アルバム」として位置づけられている
既存曲もあるがなんにせよ、降って沸いて出たような貴重な音源ばかりであり、ファンにとってはうれしい誤算といった所。聞く限りでは「A LONG VACATION」や「EACH TIME」で行われた方法論が提供楽曲にも応用されている印象で、この二つのアルバム要素を因数分解して再構築しているような作りが目立つ。
もちろん大滝らしい、アメリカンポップスからの引用だと思われるメロディやリズムの選択がそのままJ-POPへと適用されているのは興味深くもあり、同時に先の二作に込められた要素の密度の濃さがうかがえる。「一粒で二度も三度も美味しい作り」となっているのが、このアルバムの良さだろう。ファンにとっては新たな研究アイテムの誕生を素直に祝いたくなる一枚だろう。


16年発売劇中歌集。同名ミュージカルアニメ映画の劇中歌アルバム。全楽曲の作詞をこの年のTVシリーズ魔法使いプリキュア!」OP曲の作詞も手がけた森雪之丞が行っており、主題歌はさかいゆうが担当、オーケストラもばっちり使っているという、豪華な布陣で構成されているのが目を引く。
そういったスタッフィングも相まってか、劇中歌の楽曲はキャストの「歌」を見せるための録音となっており、演奏もまたそこに気を配りつつ、邪魔をしない形で鳴り響かせている。そのバランスがいい塩梅のように聞こえて、アニメの音楽にしていい録音のように思えるか。映画を彩る歌としても機能している
なかでもゲストキャラ、ソルシエールを演じる新妻聖子の歌唱が白眉の出来だろう。さかいゆう作曲の主題歌とともにこのアルバムのハイライトとなっている印象もあり、本編を知らなくても、一聴に耐えうるものとなっているかと。劇中歌集という以上にきちんとした良盤という印象の残る一枚だ。