音楽鑑賞履歴(2019年2月) No.1299~1301

月一恒例の音楽鑑賞履歴。
3枚。
ちょっと少なすぎですね。他の事に気を取られていたといえばそうなのですが、もう少し聞きたかったところ。
なんだか色んな事に時間を削られすぎですが、まあともかくぼちぼちと聞いていきます。
というわけで以下より感想です。


Zero Tolerance for Silence

Zero Tolerance for Silence

・92年録音盤(発売は94年)。ジャズ・フュージョン~コンテンポラリーギターの代表格の一人、パット・メセニーによるソロギターアルバム。とはいっても、ファンが期待する音楽は全く収められていない。むしろロック的、あるいはノイズミュージック的なアプローチの作品なので聞く場合は注意が必要だ
一流のギタリストがただただ野放図にギターをかき鳴らす。それだけに特化した演奏であり、メセニーらしい柔和かつたおやかなトーンは一切ない。ディストーションを利かせ、ノイジーなギターの多重録音がストイックに響いていくだけ。聞く人によってはただ辛い内容かもしれない。
とはいえ破壊的、あるいは衝動的なアプローチはそこまでなく、重ねられていくギターノイズのは聞き込んでいくと、実は統制がとれていて、なにか規則的に構築されているようにも思えてくる。計算されているかは分からないが確かな技巧を持つ実力者の演奏であることが窺える。
不思議と構築美が見出されるのは、感性の赴くままに弾いているようで、その実、持てる技術を駆使して、演奏をコントロールしている為からではないだろうか。これを初手で聞く人もいないとは思うが、メセニーの引き出しの多さを感じる、興味深い一枚だ。異色作といえる作品なのでお勧めは出来ないが。


Home

Home

02年発表1st。フィッシュマンズのベーシストだった柏原満がオオヤユウスケと結成したバンド。サウンドからも分かるとおり、フィッシュマンズの精神的な継承者バンドだが、歌詞・質感ともによりポップス寄りになっている一方で、たおやかにグルーヴする長尺曲もあったりと一概にポップ路線ではない作り
柏原の図太く深いベースラインをサウンドの核として、ギターやピアノなどで奏でられる煌びやかなメロディが染み入るようにゆったりと広がっていく心地よさはなんともいえない。全体に浮遊感漂う空間的なサウンドなのでじっくり聞き込みたい場合はどっぷりと浸れる。隙間の大きさが堪らないというか。
フィッシュマンズとは似て非なる方向性だが、遺伝子は確かに受け継がれている。Polarisらしさはその上に乗っかっているものではありながら、よりメランコリーに、よりポジティヴに、穏やかな光の差す方へと踏み出した音はポップスそのもの。その点ではフィッシュマンズの作った道を拡張した良作だろう


Family

Family

03年発表2nd。前作のシンプルなバンドサウンドと比しても、かなり音色を増やし、ゲストミュージシャンなども多数迎えた作りとなっていて、ポップな比重が高まったアルバム。しかし、その下味にはダビーなテイストが見え隠れもしていて、重層的なサウンドとなっている。
前作までの音が好きだと、結構面食らってしまう変化ではある。実際にあの深い重低音を響かせていたベースが鳴りを潜めて、ギターや鍵盤のきらびやかなメロディが目立つ。しかし、何度か聞き込むと今までの素地が見えてきて、新しい部分がそこに混ざり合っていくようにも聞こえる。
フィッシュマンズから受け継いだ遺伝子に新しい要素を付け加えることで、サウンドを拡張していく手段を取ったのだと感じられ、方向性としては必然を持って進んでいるだとも受け取れる。持ち味を残しつつ、更なる進化を開拓する点においては大きな舵を切った作品だろう。