音楽鑑賞履歴(2015年10月)

月一恒例の音楽鑑賞履歴です。
音楽メーターの感想を記事にしてまとめてます。
25枚。
結構聞けたけど、もう焼け石に水な感じだね、こりゃ。
買って一年経つものを順次聞いていっている感じ。
今期は新作のアニメほとんど見てないからその分、聞けてるのもあるかもしれない。
まあ、そういうことはあまり考えずに好きに聞いていけばいいかな。
では以下から、10月の感想。


10月の音楽メーター
聴いた音楽の枚数:25枚
聴いた時間:628分

Last Century ModernLast Century Modern
99年発表3rd。ドラムンベースを基調にロマンティズムが押し出された印象のある一枚。メロディ重視かと思えば、きっちりエレクトロな曲もありファンキーさも兼ね備えている。俯瞰すると「前世紀近代」というようにさながら世界一周をするが如く各国の音楽をテクノで纏め上げたのが日本っぽい。
ドラムンベースというとジャズとかR&Bとか黒っぽいクールさでまとめられるイメージがあるけど、この盤はなんというか初期YMOのようなカラフルさとエキゾチックさがあると思う。実際影響を受けている所がテイ・トウワらしい。ポップでキュッチュでしっかりテクノした90sミュージックの傑作。
聴いた日:10月02日 アーティスト:テイ・トウワ,Chara,UA,パスカル・ボレル,Ayumi Tanabe & Viv,Ayumi Tanabe,CHATR,コリー・ダイ,ジョアンヌ,レ・ヌビアン
BRIGHT TIMEBRIGHT TIME
14年発表SG。昭和歌謡にジャジーやスワンプやキャバレーミュージックなどの退廃的かつレトロでハードボイルドな趣がノスタルジックを醸し出すのが魅力的な内容。スモーキーな歌声と演奏が聞く者を別世界へ彷徨わせる。ドラマの挿入歌と言うだけでなく、グループにとっても渾身の楽曲が揃った良盤。
聴いた日:10月03日 アーティスト:EGO-WRAPPIN’
ズッ友ズッ友
14年発表SG。神聖かまってちゃんらしい、過剰で突き抜けるくらいのポップ感覚で押し迫る楽曲群。個人的には表題曲より、ポップパンク的なメロディでぐいぐい攻める2が好み。の子の作るメロディは重層的な複雑さがあって集中して聴くと眩暈がするほど濃度が高いがポップスとして成立してるのは凄い
聴いた日:10月03日 アーティスト:神聖かまってちゃん
ドレスの脱ぎ方ドレスの脱ぎ方
13年発表1stEP。今をときめくバンドの処女作。後の作品を聞いていると荒削りな部分があって、サウンドのコンセプトがあまり固まってない印象を受けるが、ザッパっぽいファンクネスやテクニカルな部分はすでに顕在でバンドの個性は確立されている。試行錯誤感はあるが挨拶状としては十分な一枚。
聴いた日:10月03日 アーティスト:ゲスの極み乙女。
タイトル未定タイトル未定
14年発表SG。タイトル未定となってるが星野源「Crazy Crazy/桜の森」のレビューです。両A面タイトルとなった盤だが、前者はウェストコースト的なアメリカンポップス、後者はAOR調の軽めのダンスナンバー。どちらも80sポップスの影響が色濃くありつつも新鮮な響きを残す楽曲。
個人的なイメージとしてよくあるシンガーソングライターの像を星野源に持っていたので少し驚きのあった一枚。こういう方向性でいくのなら来るべきニューアルバムのサウンドも気になるところで、面白い出来のシングルだと思います。それこそファレルとかマーク・ロンソン的な音作りなのも含めて。
聴いた日:10月03日 アーティスト:星野源
Arbeit Macht FreiArbeit Macht Frei
・73年発表1st。伊の誇る奇天烈地中海ジャズロック集団の初作。フロントマン、デメトリオ・ストラトスの塩辛さ全開のオペラチックかつ前衛的な歌唱に変拍子の嵐と急展開する演奏を難なくこなしてしまう超絶技巧のメンバーの演奏は聞くたびに舌を巻く程。音はひたすら暑苦しく、下世話な趣だ。
そのスタイリッシュさとは無縁な、泥臭く脂ぎったサウンドはもはや伊と言うよりは中東的なニュアンスを感じるほどの熱量がある。歌詞の内容は過激な左翼的なもの(らしい)でそれも相俟って非常に攻撃的だが、本人たちは「インターナショナル・ポップ・グループ」とのたまってる感覚は嫌いじゃないな、
聴いた日:10月04日 アーティスト:Area
High Life [帯解説 / セルフ・ライナーノーツ付 / ボーナストラック1曲収録 / ジャケット・デザイン・マグネット付 / 国内盤] (BRC427)High Life [帯解説 / セルフ・ライナーノーツ付 / ボーナストラック1曲収録 / ジャケット・デザイン・マグネット付 / 国内盤] (BRC427)
14年発表2nd。前作より僅か二ヶ月足らずでの超速リリース。反復性という点でアフロビート(ファンク)とミニマルを融合させた作風をさらに推進させた印象のある、現代にアップデートされたポストパンクの新しい形に思えた。インダストリアル的なモノクロームの質感だが、あっけらかんとしてる。
ループするリズムトラックに人の演奏を重ねていき、その演奏も加工を重ねていくという制作だったようで、デジタルでは表現できなさそうなリズムの揺れとかが見え隠れするのがこの盤の隠し味になっているのかなと思う。前作を踏襲しつつも、さらにその先に進んだ感のある一枚。フックのある良盤かと。
聴いた日:10月05日 アーティスト:ENO・HYDE
Made in Basing Street(2CD DELUXE VERSION)Made in Basing Street(2CD DELUXE VERSION)
12年発表1st。トレヴァー・ホーン、ロル・フレームなどプロデュース業で名を馳せたミュージシャンが一堂に会したバンド。熟年の英国ポップセンスが発揮された瑞々しいエレクトロ風味のギターポップがメイン。このデラックスエディションではDisc2でバージョン違いやアウトテイク曲が聴ける。
内容を説明すれば、ホーンのノスタルジックかつウェットな近未来感に10CCの音や近年のギターポップなどが混じったサウンド。純度100%のホーン節ではないにせよ、現代的なポップスに仕上がっているのは流石に職人技を感じさせる、高水準な曲が並ぶ。ネームバリュー抜きに聞ける作品だろう。
聴いた日:10月06日 アーティスト:Producers
Terry Riley in CTerry Riley in C
68年発表。様々な楽器による「C」の音をガイドラインにミニマルな展開を繰り広げていく、ミニマルミュージックの代表曲。09年リマスターで視聴。緩やかに推移していく音の細波に耳を傾けることで、陶酔的な心地良さと浮遊感を味わえる。何か作業する時や眠りたい時などに聞くにも利用できそう。
鳴り物やパーカッションのハイトーンな金属音などを聴いていると着想の元はインドネシア辺りのガムランなのかなとも感じる。実際の所はどうか分からないけども、このα波が出そうな緩やかな陶酔感は実際、サイケデリックな趣を感じるし、ライリー自身の趣味が大きく表れているのかも。
この翌年発表されるもうひとつの代表曲と比べてみても、東洋思想に影響を受けたからこそ、このような曲を着想できたのかもしれない。当時はヒッピー文化も全盛だったわけで時代の波が作り出したといっても過言ではないかと。メディテーション(瞑想)ミュージックとしての完成度も高い一枚でしょう。
聴いた日:10月07日 アーティスト:Terry Riley
UndertonesUndertones
79年発表1st。アイルランド出身のオリジナルパンクバンド。青少年の哀愁感を漂わせるパワーポップという趣が強い。曲名タイトルを見ても、社会的なメッセージというより等身大の青春を歌うイメージの曲が多く、その辺りも必要以上に荒んだ印象がなくて、聞きやすさがまず先に立つ好盤。
ただ健全かといえばそうでもなく、青春のいなたい感じがそのままパンクサウンドになって押し出されてる。モテない鬱屈をそのままバンドの原動力にしている印象。曲もサーフサウンド、パブロック系を交えつつ、甘いコーラスワークが絡まって、甘しょっぱい感じのパワーポップが若さの勢いで弾けてる一枚
聴いた日:10月07日 アーティスト:Undertones
ManassasManassas
72年発表1st。スティーヴン・スティルスがソロ活動の合間に元ザ・バーズのメンバーと結成したサザンロックバンド。カントリーやブルーグラスの芳醇なメロディラインを汲んだ、滋味溢れるアメリカンロックが聴ける。なんというか染み入る感じでいい演奏、いい音楽が心地いいグッドタイムなアルバム
ペダルスティールやヴァイオリンが奏でる、カントリー&ブルーグラスのフレーバーもいいが、この盤の隠し味はラテンテイストだと思う。サザンロックのどっしりとしたリズムとメロディに混ざるとその軽やかさがいい塩梅で利いてくる。またスティルスのメロディ&ギター巧者さが味わえる良盤だろう。
聴いた日:10月08日 アーティスト:Stephen Stills
南蛮渡来南蛮渡来
・82年発表1st。江戸アケミ率いるジャパニーズ・レベルミュージック集団。ファンクとパンクとNWにポストパンクが混在した、非常にウネりのあるエモーショナルな盤だと思う。この手の音楽は無機質なものとなりがちだが、江戸の歌う剥き出しの感情とともにバンドの演奏が血肉となり襲い掛かる。
ここまで来ると一種の獣が暴れ回る様のようであり、その凶暴性と孤独さは深遠さを増すばかりだ。危険であるだけでなく、どこかしら醒めているのも恐ろしい。借り物の音楽ではなく、なにかを表現するために行き着いた音楽というのはこの盤の解説にもあるとおりだが、大いに納得できる内容だろう。
誰しもがヤバさや裏側をなにかしら持っている。江戸アケミはそれすらも真っ直ぐかつ直球に歌い上げてしまっている。その行為こそ危ういものにもかかわらず、奇を衒うことなく。どちらが正気で狂気なのか。それは誰にも分からないが、日本において鬱屈した感情を表現しきった唯一無二のバンドに違いない
聴いた日:10月10日 アーティスト:JAGATARA
君と踊りあかそう日の出を見るまで君と踊りあかそう日の出を見るまで
85年発表2ndにしてライブ盤。江戸アケミ精神疾患を患う直前の83年11月のライヴと精神病院から特別外出許可を得て、出演した84年2月のライヴを収録した作品。彼らのライヴの生々しさと壮絶さが感じられる。音楽に真正面から向き合った結果、呼び起こされた狂気がその顔を覗かせている。
パフォーマーとしてあまりにも誠実に「突き抜けて」しまった故に壊れてゆく様もありありと記録されていて、その面からも貴重なものなのだが、ここで表現されているどうしようもない感情はやりきれなさや絶望感以上に虚しさが滲み出てきているように思う。これほどにも爆発力を持ったバンドにも拘らず。
そのありとあらゆる喧騒の中で悲痛さにも似た、あまりにも届かなさ過ぎる、孤独な叫びが江戸アケミを壊した遠因なのかもしれない。肉感的かつカオスティックな演奏であればあるほど、得体の知れないエネルギーを纏った怪物となって蠢く。彼らの魅力を骨の髄まで知りたいのならこの盤を聞く事を薦めたい
余談だが84年のライヴでは江戸アケミも本調子でない一方でベースのナベも精神に変調をきたしており後に入院している。故に4以降の曲は江戸のパフォーマンスもそうだが、演奏の方も異常なカオス感が味わえるものとなっている。それ程に危うさを抱えたバンドだったのだ。それは2と4で特に顕著である
聴いた日:10月12日 アーティスト:じゃがたら
裸の王様裸の王様
87年発表3rd。スタジオ録音としては2枚目。それまでのパンキッシュなアナーキーさとアングラな感覚を一気に払拭し、陽的なアフロファンクへとサウンドが変貌した作品。元々、バンドの下地にあった要素が前面に押し出された印象もあり、順当な変化とは言えそう。演奏もよりタイトになった。
陽の当たる場所に出てきたとはいえ、バンドとしてのブレは一切なく、ポジティヴとネガティヴは等しく扱われ、行き場のない孤独感が切れ味鋭く描かれているのはここまでの紆余曲折を糧として、より強靭になったことを物語っているように思う。それゆえに弛緩した空気感で歌われる4が物凄くよく響く。
ちなみにこの盤は江戸アケミのワンマン体制ではなくGの二人、EBBYとOTOもソングライトに関わっている(1と3)。江戸の負担が軽くなったのもこの盤の雰囲気を良くしている要因かも。しかし統一感が凄いのもあり、メンバーと一心同体となっているのがよく分かる。肉感的グルーヴが堪らない名盤
聴いた日:10月13日 アーティスト:JAGATARA
それからそれから
89年発表5th。メジャーデビュー盤。音がソフィスケイトされて、都市の喧騒における死角の情景を描いたひどく醒めている一枚。おそらく彼らのディスコグラフの中で一番ザッパテイストが出てるように思う。というよりシリアスかつユーモラスな歌詞は本家に肉薄してるんじゃないだろうか。
実際4はザッパの「The Torture Never Stops」のオマージュとフロイドの「Money」のフレーズが出てくる皮肉の利いた1曲。全体的に当時のバブル経済へのカウンター的な趣が目立ち、サウンドもひどくクールダウンしたもので、周りの狂喜乱舞から一歩引いてる印象を抱く。
それゆえに歌詞がひどく耳に残る。初期のアナーキーさとは異なる、ダーティかつダークな印象はこの盤を支配する、バブル景気の裏にあった喘ぐような息苦しさなのだろう。「それから」というタイトルもリリースから四半世紀過ぎた今からすれば、あまりにも皮肉の利きすぎるものだろう。
「それから」どうなったかはいうに及ばずだが、後遺症のように未だ引き摺った感覚は経年劣化するどころか鋭さを増しているように思う。江戸アケミはバブルの窮屈さを赤裸々に歌った。しかし、このアルバムからわずか一年後にこの世から去ってしまう。「それから」の未来を知る由もなく。重みのある一枚
聴いた日:10月14日 アーティスト:JAGATARA
ごくつぶしごくつぶし
90年発表6th。江戸アケミ生前最後のスタジオアルバム(最後の録音という点では次作に譲る)。なんというかショービジネスと化してしまった「音楽」に幻滅したような趣を感じる一枚。再演の2以外は皮肉交じりの行き詰まった歌詞が顕著でその見えない枷から自由に羽ばたこうとしてる風にも取れる。
一貫して、自己の「表現方法」として音楽を仲間と共にやり続けた者にとっては一時の人気商品として消費されてる事に我慢が出来なかったのかどうかは定かではないけども、思うところはやはりあったのでないかと思う。そういう点で1は暗喩的、3は直喩的な表現でそれらを歌っているように感じた。
そういう所に窮屈さを覚えていたのなら、次作の録音途中、死の直前に脱退の申し出をしていたという事実もなんとなく頷ける話だが憶測の域は出ない。ただ遅かれ早かれ、バンドの終焉は近かったのではないかと思わせる内容。歴史にifを求めてはいけないがもし生きていれば、と想像は膨らむばかりだ
聴いた日:10月15日 アーティスト:JAGATARA
ミュージカリー・アドリフトミュージカリー・アドリフト
99年発表1st。2015年現在、これが唯一の作品となっている。UKのアシッドジャズ勢(メンバー二人はジャミロクワイのサポートメンバー)がスティーリー・ダン人脈を使い、70年代ソウルとAORへの敬愛を持て余すことなく、前面に押し出した一枚。全体的にスタイリッシュな仕上がり。
ジャミロクワイの初代ベーシスト、スチュアート・ゼンダーを始めとするUKアシッド勢のゲスト参加にほぼ全編にわたって、スティーリー・ダンにも参加したエリオット・ランドールがプレイしていて、この盤のアーバンな感覚に花を添えている。特に3はアシッドジャズとAORが融合した好例だ。
とはいえ、アシッドジャズ特有のグルーヴィーな感覚で盤全体が統一されてしまっているがために、どうにもメリハリが欠けてしまう構成。流麗過ぎて、ちょっと印象残りづらくある。スローなライトメロウがあれば、緩急の締まったものになりそうなだけに惜しい出来ではあるがポップスとして中々の佳作だ。
聴いた日:10月16日 アーティスト:サミュエル・パーディー
StrangerStranger
13年発表3rd。くも膜下出血から復帰後でこの後、その治療に専念による活動休止するまでの合間にリリースされたアルバム。ウェストコーストサウンドに影響を受けたような爽やかなフォークサウンドの隠し味にブラックミュージックがちょっぴり混ぜられた、ポップなサウンドが目立つ。
ともすればAORに寄ってもいいのだが、その傾向を強めるのは完全復帰してからで、ここではまだ突き詰められていない印象。全体に歌詞を含めて、星野源の持つ朗らかな穏やかさが、心優しく響き渡るのんびりとした一枚じゃないかと。午後の陽気な日差しにコーヒーかお茶を飲みながら聞きたい。
聴いた日:10月18日 アーティスト:星野源
SpectrumSpectrum
73年録音盤。辣腕ドラマーのソロ処女作。これを聞いたジェフ・ベックが後にあの「Blow By Blow」を作り上げることからも影響の大きい一枚。Deep Purpleに加入するトミー・ボーリンが一躍脚光を浴びたのもこの作品がきっかけ。他にも盟友ヤン・ハマーも参加している。
内容の方は、ビリー・コブハムの自己主張の激しいドラミングが縦横無尽に暴れまわる。手数の多さとテクニカルなプレイで演奏メンバーを圧倒している。そのおかげか、各メンバーのプレイが陰に隠れてしまい、印象に薄いのが難点なのだが、それでも負けず劣らずのプレイを見せ、一気呵成に聞かせてくれる
とにもかくにも初リーダー作というのもあって、ドラムプレイが水を得た魚のようであり、勢い余ってワンマンプレイに走っている面もなにしもあらずだが全編作曲も手がけていて、不思議と統一感があるのも面白い。テクニカルさに隠れがちだが作曲の資質も垣間見える良盤。音のシャープさは5年位早い。
聴いた日:10月20日 アーティスト:Billy Cobham
クロスウインズ<FUSION 1000>クロスウインズ
74年録音盤。前作の暴走気味なプレイングが鳴りを潜めて、より緩急の利いた楽曲構成と要所要所のパワフルなドラミングがファンキーに唸るジャズロック。処女作えも垣間見せていた作曲能力がここで一気に開花した印象もあるほど、この盤は知的な響きを持っているアルバムだと思う。
もちろん随所で特有のテクニカルかつパワフルなドラムプレイが目を引くが、それ以上に自らの特性をどう曲の中に生かすかを考えて、練りこまれた楽曲が多く、逆に力押しで楽曲を成立させてない辺りが一線を画している。コンポーザーとしてアンサンブルを重視しながらも、プレイヤーとしても奮っている。
ジャズロックの先進性とアグレッシヴなドラムスタイルを見事に両立させており、非常に充実した一枚。この盤によって、テクニカル一辺倒なドラマーという評価を払拭し、トータルなミュージシャンとして名を上げることになった。完成度から言えば前作を軽く凌駕する出来栄え。より統一感のある作品。
また、ブレッカーブラザースやジョージ・デュークなどの好演も光る。ほぼ同一のメンバーでツアーを回っていたからこそのアンサンブルが聴け、35分はあっという間に過ぎていってしまう。もうちょっと長く聞き入っていたいのが唯一の欠点か。ちなみにジャケットもビリー・コブハムが自ら撮った写真。
聴いた日:10月21日 アーティスト:ビリー・コブハム
ギャンブラーズ・ライフギャンブラーズ・ライフ
74年録音盤。当時時代に取り残されつつあった、ジャズ・オルガンの名手をマイゼル兄弟のプロデューサーユニット、スカイ・ハイ・プロダクションズが甦らせた一枚。ここではオルガンではなく、シンセやエレピ、ピアノを使用楽器として弾いている。音の方もスペーシーなクロスオーバーに転換した。
エレピの煌びやかでクールなタッチにシンセの浮遊感、跳ねるピアノが、スクエアかつグルーヴィなバックと共にメロウに演出する。このコズミックな感覚は先のディスコやクラブジャズを予見したような、先鋭的なものだったように思う。現在の感覚でもあまり古びた音には聞こえず、再評価が著しい盤かと。
聴いた日:10月21日 アーティスト:ジョニー・ハモンド
シェイズ・オブ・サル・サルヴァドールシェイズ・オブ・サル・サルヴァドール
56〜57年録音盤。フィル・ウッズエディ・コスタなどのメンバーを交えて、三つの編成で録音したセッションをまとめた一枚。メインであるサル・サルヴァドールの癖のない、ストレートアヘッドなギタープレイが聴き所のひとつ。ホーンを加えた編成のゴージャスな趣もなかなか味わい深い。
とはいえ、この盤で出色なのはピアノを加えたカルテット編成の演奏かなと思う。3のギターとドラムのせめぎ合いは迫力のあるものだし、エディ・コスタのピアノがフィーチャーされる8も聴き応えがある。サルのギターは自己主張もするが大編成のコンボではすっと脇に回り、ソロの楽器を引き立てる。
端正なプレイスタイルなので、脇でもメインでもその役割に徹した存在感を出してるのが面白いところ。フィル・ウッズが加わった1や11ではサックスソロの伸びやかさを影から支えているのがニクい。切れ味を楽しむというよりは、まろやかな舌触りを楽しむ盤かなと。もちろんサルのギターも楽しめます。
聴いた日:10月26日 アーティスト:サル・サルヴァドール
ライヴライヴ
76年録音ライヴ盤。ジョージ・デュークビリー・コブハムが率いるユニットのモントルージャズフェスでの演奏を収録した一枚。ギターには若き日のジョン・スコフィールド、ベースはウェザー・リポートにも在籍したアルフォンソ・ジョンソンという強力布陣で、熱気溢れるプレイが聞ける。
とはいっても、全体に割とシャープな演奏。コブハムの暴れっぷりを期待すると肩透かし食らうかもしれないが、このタイトかつテクニカルでファンキーなグルーヴは聞いていて、飽きが来ない印象を抱く。デュークとコブハムの双頭バンドというより4人のメンバーがせめぎ合う演奏がなかなかアツい。
選曲もメンバーがそれぞれ作曲したものが選ばれており(一番提供しているのはデュークだが)、割とバラエティに富んだ内容。ロックでもありジャズでもあり、クロスオーバーと言える音楽がここで鳴り響いている。この一枚でバンドは解消してしまったが、フュージョンの魅力を存分に伝える名演だろう。
聴いた日:10月27日 アーティスト:ジョージ・デューク・バンド ザ・ビリー・コブハム
Delight Slight Light KISSDelight Slight Light KISS
・88年発表20th。当時発売されたカセット盤で視聴。シンセを中心にハイファイな音作り。知名度の高い1もそうだがバブル期のカジュアルなシャンペンサウンドで、ホワイトアウトしそうな光の下にいる感覚に陥る。時代的な音といってしまえばそれまでだが儚くもエレガントな瞬間を捉えたポップス。
適度にダンスチューンとしての汎用性もあって、煌びやかな印象とともに、演奏のシャラシャラしたグルーヴは最近のインディーズポップスにも通ずる音でもあって、一周回って、新鮮さを取り戻しているようにも感じる。今となっては遠くなってしまったゴージャズな幻影。改めて聞いても良盤な一枚かと。
聴いた日:10月30日 アーティスト:松任谷由実
The Worst Universal Jet SetThe Worst Universal Jet Set
94年発表2nd。ハウステクノのテクスチャーでロックを演奏した作品の一つだと思う。ロックのダイナミズムより、クラブミュージック的なグルーヴが強くある印象。ギターソロなどの主張の強い演奏はここに存在ぜす、楽曲の雰囲気と内容がカッコよければオールOKみたいなセンス重視の曲が多いか。
実際、そのセンスによって、アルバム全体が良く纏まった聞きやすい盤になっている。一方で一曲ごとのメロディ、構成が練られすぎていて、かなり過密な音が渦巻いているのも事実。ロックの魔力を取り戻そうとして雑食になり過ぎたゆえの濃度が高くなっている印象もそここに感じる。
ミクスチャー/オルタナティヴのムーブメントがロックの可能性を詰め込む作業だったと考えると、この過剰な音の詰め込み方も「時代の音」だったのではないかなと。そういう意味合いを抜きにしても、サウンドは整理されているので密度の割には聞きやすく、デザインの施されたアルバムでしょう。良作です
聴いた日:10月31日 アーティスト:EL-MALO

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