音楽鑑賞履歴(2015年9月)

月一恒例の音楽鑑賞履歴です。
音楽メーターの感想を記事にしてまとめてます。
12枚。
思ったより聞けてないので少し焦りが。
気分が乗ったり、乗らなかったりで聞かずじまいな日が多かったなあと思う。
このペースでいくと去年購入分のCDを完全消化できずに終わってしまいそう。
特に目標は決めてないけど、もっとたくさん聞きたいな。


では、以下は感想です。


9月の音楽メーター
聴いた音楽の枚数:12枚
聴いた時間:205分

InnervisionsInnervisions
・73年発表16th。何か非常にパーソナルなサウンド、といった趣が強いように感じるアルバム。だが内省的でとっつきにくいと言う訳ではなく、強烈にフックのあるソウルフルな曲もあり大衆性も十二分に兼ね備えた作品でもある。当時流行のニューソウルをスティーヴィ流に解釈した盤だろう。
前作に続き、ほぼ全曲の大部分をスティーヴィが演奏しているのもあって、彼の頭の中で鳴り響く音が近い形で再現されているようにも感じられる。その点では音の密度が非常に濃厚でもある。一番特徴的なのはドラムとシンセサイザーの使い方だろう。なんというか誰にも真似できない位の強烈な個性を感じる
もちろん捨て曲のない、全編高品質な曲が並ぶのは事実なのだがそれでもやはりインパクトの強い曲の印象に麻痺して、他の曲が霞んでしまうという贅沢な欠点もあるのも事実。スティーヴィーの個性が強烈な分、似通った印象を受けるのは天才が故の難点なのかなと。名盤として十分すぎる完成度を誇る一枚。
聴いた日:09月02日 アーティスト:Stevie Wonder
Oscillons From the Anti Sun (W/Dvd)Oscillons From the Anti Sun (W/Dvd)
05年発表編集盤。彼らが発表したEPの総集編的作品。93年の「Jenny Ondioline」から01年の「Captain Easychord」までのアルバム未収録曲をCD3枚組に収めている上、PV収録のDVD(リージョン1)も付いてくる、かなり満腹感の高い、お徳用な内容。
「スタジオ研究室」というバンド名らしく、EP収録の各曲は彼らの実験精神に溢れたものとなっており、アルバムよりはコンセプトもゆるく、自由度の高い作りになっていると思う。完成品を作る前の試行錯誤感がそのまま音になっていて、聞いていて興味深いし、なによりアルバムにはない面白さを感じる。
ハンマービートあり、シューゲイザーあり、グランジもあれば、サンバリズムもあり、カンタベリーっぽいプログレ展開もあり、甘いギターポップもある。その何でも感を昇華した先に彼らのアルバム群が作られたと考えると、構成するパーツを吟味している姿が浮かんでくる。コレクターズアイテムだが良盤だ
聴いた日:09月04日 アーティスト:Stereolab
レッド・ツェッペリンレッド・ツェッペリン
・69年発表1st。歴史のその名を刻む、バンドの処女作。変に小難しいことはしてない。ただジョン・ボーナムの叩くビートに乗せて、ブルーズやトラッド、ロックンロールを演奏しているだけ。なのだが、そのドラマーが望外に破格の存在だった、という事実が「ロック」を新たなるフェーズに向かわせた
改めて聞くとA面(1〜4)はそのボンゾのドラムプレイを前面に押し出した楽曲構成になっており、それだけ彼のビートの存在感を内外に示す作りになっている。言ってしまえば彼の叩くビートこそが他の音楽からの借り物ではない「ロック」の「グルーヴ」なのだと高らかに宣言してるように思う。
そういう点ではB面(5〜9)の方がバンド然とした演奏で最高のエンジン(リズム)を使う事で渾然一体となった「ロック」が聴ける。ボンゾのビートをバックにメロディが前に押し出されている印象を受ける。A面とB面で結構意図の異なる構成をしているのは恐らくジミー・ペイジの計算高さに拠るものか
どちらにしろ、重く大音響なビートが当時衝撃を与えたのは言うまでもなく、20世紀を超えた今なお鮮烈な響きに聞こえるのはコレを体現できる後続が現れなかったからだろうと思う。ビートにおいては今なお唯一無二な魅力を放つ金字塔ではないだろうか。未だインパクトのある強烈な一枚。
聴いた日:09月08日 アーティスト:レッド・ツェッペリン
レッド・ツェッペリン<2014リマスター/デラックス・エディション>レッド・ツェッペリン<2014リマスター/デラックス・エディション>
69年発表1stの2014年リマスター盤。一つ前のバージョンの感想はこちら:http://ongakumeter.com/m/B000803CQ6 この感想を踏まえて、考えるとアルバムとしての統一感を出すことに注力したリマスターだったのかなと感じた。コレが「完成型」なのかも。
これまで「ボンゾの紹介編」だったA面を改めて、レッド・ツェッペリンサウンドの1パーツとして構成しなおし、B面との統一性を持たせた事によって「1stアルバム」の真の姿が現れたように思う。この為に4におけるバンドとしての迫力が強く出てて、より盤のハイライトだという存在感は増した。
そういう面ではバランスをとったリマスターなのかなと。今回の目玉であるコンパニオンディスクは69年のオリンピアでのライヴ。音質こそ悪いが、当時のバンドの勢いを克明に記録した内容。この時点で既に曲が長尺化してるのもクリエイティビティが漲っている証拠で特に4,5の暴走度合いが凄かった
聴いた日:09月08日 アーティスト:レッド・ツェッペリン
Led Zeppelin IILed Zeppelin II
・69年発表2nd。1stからわずか10ヶ月。全米ツアーと同時進行で製作された一枚。慌しい状況の中で作られたものではあるが、前作で見せたバンドサウンドの「胎動」を見事に「飛躍」させた作品だと思われる。二番煎じが二番煎じになっておらず、逆に深みを増したという稀有な例だろう。
基本的にやっている事は1stから変化はないのだが、衝撃だった前作がただの「アイドリング」に過ぎなかったわけで、今作では状況の勢いさながらに快速を見せる様は聞いていて心地いいし、楽曲の粒立ちと演奏のまとまりの良さが非常に目立つ。メロディとリズムがどちらか一方に偏ってないのが特徴。
ツェッペリンの音楽はそれらが一体となって「音塊」として聞こえるのが魅力で、そこから得られる高揚が「グルーヴ」なのだと思う。その強靭なグルーヴをがっしり掴んだのが今作であり、バンドは早くも一つの「到達点」を迎えてしまった。が、彼らの快進撃はこの先もまだまだ続くから凄い。
聴いた日:09月09日 アーティスト:Led Zeppelin
レッド・ツェッペリンII<2014リマスター/デラックス・エディション>レッド・ツェッペリンII<2014リマスター/デラックス・エディション>
69年発表2ndの2014年リマスター盤。前のバージョンの感想はこちら:http://ongakumeter.com/m/B000002J03 1st同様に全体のバランスを取った仕様に思うけど、アルバムとしてのまとまり度合いはこちらに軍配が上がるので、その分、迫力が強まった印象。
1stでも感じたことだけど、ボンゾのドラムを土台として、奥に配置したことでペイジやジョンジーの演奏、プラントの歌唱それぞれが目立つ形に。それでなくてもドラムは目立つし、屋台骨としてぶっとく存在感があるからさすがとしか言いようがない。けど、ツェッペリンは4人でツェッペリンなのだ。
本作のコンパニオンディスクは収録曲のラフミックスがメイン。完成前のトラックというのもあって、歌が入ってるのもあったりなかったりでVo以外のメンバーの能力が改めて窺い知れる作り。Voがなくても十分完成度は高いのだけど、ここからさらにマジックが加わるからなんとも不思議な感覚で聞ける。
コンパニオンディスクの8のみ完全未収録曲。完成したアルバムを考えると、非常に軽快で爽やかな(ウェストコーストサウンド的な)メロディをツェッペリン調に翻案したような曲で興味深いけど、流石にアルバムの雰囲気には合ってないので未収録は止むなしといった所。完成してたら、良曲になってたかも
聴いた日:09月09日 アーティスト:レッド・ツェッペリン
ジギー・スターダスト<2012リマスター>ジギー・スターダスト<2012リマスター>
・72年発表5th。代表作として知られる一枚。表題のように火星からやってきたスーパースターの栄枯盛衰を描いたコンセプトアルバム的な内容。とはいえ、それを理解するにはこちらで補完する部分が多く、いまいち徹底はされていないように感じる。が、そのぎこちなさがこの盤の最大の魅力でもある。
本作の肝は「ロックスターの虚構性」を実際のロックスターであるボウイ本人が俯瞰して、批評して見せている部分なのだろうと思う。コンセプトもそこが立脚点であり、フィクションとして徹底されていないのもそういった要因が強いためだろう。役を演じているにも拘らず、彼の自意識が滲み出ているからだ
アルバムの中で繰り広げられるスターとしての「自問自答」はボウイ自身のテーマとなり、本作によって確立されたものなのだろうと思う。テーマ自体はこの後の作品に継続されてゆき、ひとつの結果を生み出すのだが、本作においては手応えと失敗が混在した、なんともいえない不思議な魅力を生み出している
演奏自体はブギーなロックであり、パブやクラブで演奏されていそうなガレージ的な風味のある、きわめてシンプルな演奏にストリングスやサックスが隠し味に利いたサウンド。ユルいパンクのご先祖的な音で、なかなか味わい深く楽しく聞ける。ポップなサウンドと自問自答的な内容が絡み合った名盤だと思う
聴いた日:09月12日 アーティスト:デビッド・ボウイ
SPACE DRIVERSPACE DRIVER
92年発表2nd。コーネリアスこと小山田圭吾主催レーベルトラットリアから出たメジャーデビュー盤。UKロックに色濃い影響受けた内容。かとなく聞こえる日本的情緒も見え隠れするのはご愛嬌。全編英詞なのも彼らのこだわりが垣間見える。とはいえ歌詞カードにはきちんと日本語訳も載ってたりする。
UKロック、少しラグはあるもののマッドチェスターや当時流行のシューゲイザー的な趣のあるサウンドなのも注目だが、本家よりビートルズライクな甘くポップなメロディが特徴的で、サイケな色合いが強まっている。ハウスとかのダンスビートも入り混じっているのだけど、メロディが強く主張している。
このメロディの強さと、ダンスグルーヴ的なビートがバンドの二面性なのかなと思う。アルバム後半に行くにつれてグルーヴ感の強い曲が並んでいている一方、前半はメロディが押し出されているのであえて一曲の中で両立はさせず、どちらもバンドの特徴として捕らえているのが興味深いところ。
実際どっちつかず、といった印象はなくてレコードのA面、B面くらいの趣の差がいい塩梅になっているように思う。洋楽の影響は受けつつも、きちんと独自色が出ているのがあまり「借り物感」がない所以かも。組み合わせの妙で聞かせる佳作。この手の音楽好きな人は一度聞くのもありかと。
聴いた日:09月15日 アーティスト:VENUS PETER
A Rainbow In Curved AirA Rainbow In Curved Air
69年発表。スティーヴ・ライヒと並ぶミニマルミュージックの巨匠の代表作の一つ。ここではライヒのような緻密で構築的な旋律の変容はあまり存在せず、ジャズの即興性を強めたメロディが常時響いている。空間的な広がりがあるのも特徴的で、ミニマル特有の張り詰めた緊張感はあまりない。
ともすれば、この盤のオルガンや電子楽器の響きは非常にポップなメロディで、当時流行していたサイケ、トリップミュージックとも近似した作りだといえる。そういった点でロックファンにも聞きやすい作品だし、導入の一枚には最適かもしれないが、位置づけ的にはちょっとイレギュラーな存在だろう。
なお、UKのカンタベリー・ロックグループ「Curved Air」のバンド名はこの盤にちなんでいる。あと日本人にとっては既聴感のある一枚だと思う。実は「風の谷のナウシカ」における久石譲の劇伴BGMがこの作品からの影響を包み隠していないからだ。初めて聞くとちょっと驚くほど酷似してる
当時は今のように情報が氾濫していなかったからこそ、大らかに寛容or気づかれなかったのかなと思うほど、「似ている」ので興味のある人は比べてみると面白いかも。まあ、剽窃だというつもりはなくナウシカのBGMの雰囲気も自分は好きだと付記しておく。けどまあ、神経図太いなとは思う。
聴いた日:09月16日 アーティスト:Terry Riley
Liaisons DangereusesLiaisons Dangereuses
81年発表の唯一作。コニー・プランク関連作らしく、無機質なエレクトロファンクな一枚。メンバーに元DAFノイバウテンのメンバーがいるのでそういう音だと想像できる人も多いかと。非常にマッシヴなボディ・ミュージックで明るさとか甘さとかは一切なく、ひたすらに硬質で分厚いシンセが鳴り響く
そのシンセのミニマルなフレーズがグルーヴを生んでおり、ファンクな熱の帯び方をしてるのが面白い。作りは非常に無機質なテクノなんだけど、ファンクの作り出すあの高揚感が生み出されている。ドライな音だけど、一方で濃密なファンクネスが味わい深い。何度も繰り返して聞ける、旨み十分なスルメ盤
聴いた日:09月19日 アーティスト:Liaisons Dangereuses
「ファンタジックチルドレン」O.S.T.「ギリシアからの贈りもの」「ファンタジックチルドレン」O.S.T.「ギリシアからの贈りもの」
05年発売の同名アニメOST。元ゲルニカで「王立宇宙軍」の一部音楽(名義は坂本龍一)も担当した上野耕路のスコア。オーケストラや室内楽的な質感のコンテポラリーといった所。壮大なドラマを色付けするべく、楽曲の表情も豊かで、音だけでもどんな雰囲気のシーンに使われていたかを思い出せる出来
明朗、陰鬱、シリアス、切なさなどなどこうやって聴くとドラマを盛り上げる劇伴として、印象に残るメロディーばかりで作品を下支えしていたのだなと実感できる。惜しむらくは、未収録が相応にあることか。主題歌もTVsizeなのでフルサイズはシングルなのも少し残念だが作品が好きな人は買いの一枚
聴いた日:09月24日 アーティスト:TVサントラ,いのり,ORIGA
Incredible Jazz GuitarIncredible Jazz Guitar
・60年録音盤。ジャズギターの決定盤と言われる事の多い一枚。確かにそうなのだけど、そこそこ玄人向けというか、少なくともジャズに初めて触れる時に聞く盤ではないとは思うか。ギターの線の細い音のあっさりさに肩透かし喰らう人は少なからずいそうな気はする。ただ内容は極めて充実したものだ。
ブルージーな音に溜めの利いたメリハリのあるプレイ。トミー・フラナガンをはじめとしたバックの演奏とともにスウィングした、味わい深さはハマると抜け出せない。ウェスのプレイの一音一音は素っ気無いがその豊かさは他の名プレーヤーと引けをとらない。それでいて独特の軽さが特徴だと思う。
そのあっさりとした軽妙さが黒人音楽の濃さとは一線を画して、広く受け入れられた要因なのかもとは思うけども、やはりプレーヤー指向の強い一枚でジャズの魅力の一つでもあるが全容ではないので要注意。名盤だけどジャズの初手には合わない。ジャズの味を知ってから、聴くと凄くいい作品です。
聴いた日:09月29日 アーティスト:Wes Montgomery

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