極上同窓会#06

アニメ『極上生徒会』、勝手に10周年企画。
10年前の放映日に合わせて、1話ずつ振り返ってます。
今回は第6話。

脚本:黒田洋介/絵コンテ:三芳宏之/演出:武藤公春/作画監督:林哲也/総作画監督下谷智之
タイトルの通り、プッチャン回。
プッチャンの正体に(今更)鋭く斬り込んだ内容となってます。
再視聴してみるとけっこう布石の打たれているエピソードですねえ、コレ。
その辺りを追って見ていければと思いますが。
ちなみに作画の方は可もなく不可もなく。
絵的な見所には少々困る回でしょうか。
前置きはともかく。
今回のピックアップは当然、このキャラ。

プッチャン(CV:田村ゆかり)。
謎の喋る人形(マペット)。
それ以上もそれ以下の説明も必要としない、まごうことなき人形です。
りのの相方で毒舌だという以外はなんだかよくわからない存在です。
今回のエピソードの主軸を担う部分ですね。
そして、サブピックアップにもう一人。

金城奈々穂(CV:野田順子)。
極上生徒会副会長(遊撃)
男勝りな堅い性格のキャラクター。
なにやら奏会長とは浅からぬ関係のようですが、それはまた後々のピックアップにて。


実はこの二人も似たような立場のキャラクターなのですが、
今回はプッチャン側をメインに追っていきましょう。
先のエピソードで奈々穂側はきちんと追いますのでご安心を。
ある一点において共通の立場にあるという事だけ覚えておいていただければ。
では始めていきましょう。

前回の名残でカレーを食べ続けている面々(なお十日連続)
事件はここから始まります。
周りはみんなカレーにうんざりしてる中、りの(とプッチャン)はどこ吹く風でご機嫌な表情
一生カレーでも大丈夫そうなくらいに能天気。

他愛のない会話のようで、結構ひどいことを言ってるプッチャン
いつもの調子といえばいつもの調子。
しかしそこに大きな落とし穴があった。
誰しもが何気なく素通りしてて、
視聴者もアニメや漫画じゃ当たり前すぎてて慣れてしまってる事実。

ここもヒドいw
カレーダイエットなんて冗談でからかうプッチャン
真に受ける二人もあれだけど、プッチャンのからかい方が大人(というかおっさん)のそれ。
なので性質が悪いといえば悪い。

そこで違和感を覚えたのが奈々穂。
視聴者ほかその他の面々がそういうものだと慣れてしまっている事。
「人形が人格を持って、平然と喋っている」という事実。
作中人物の奈々穂はその事実を、「りのが腹話術をしている」と現実的に受け止める。
そこで生じるイザコザが今回の発端。
視聴者的には「プッチャンを一キャラクターとして受け止めていた」事で作内外で齟齬が生まれるんですよね。
この辺りは結構面白い仕掛け。
作中の人物の方が現実的に受け止めていて、この作品(アニメ)を見ている視聴者はフィクションである事に慣れてしまっている。
プッチャンが一つの境界線として機能してる面白い例じゃないかなと思います。

プッチャン=りのという図式が作中の認識である為に、没収されてしまう。
一方でりの本人は視聴者と同じ認識でプッチャンを捉えているから、会話する。
けど、そんなりのにとってプッチャンとはどんな存在なのか。
↑の中段画像でさらっと仄めかしが入ります。
プッチャンの微妙な表情の変化にきょとんとするりの。
この変化がエピソードの一翼を担います。

没収した後、ただの人形を牢屋にw
ギャグ描写ですけど、ここまでの説明から考えるとちょっと面白い。
りのが喋っているという認識なのに、プッチャンを生きてる存在として扱っているんですよね、ココ。
その可笑しさが唐突に差し込まれてくるから機能してるギャグと言えます。



以上の顛末を奏会長に事後報告する奈々穂。
この場面では非常に義務的な関係。
けど、この二人の関係を覚えておいて欲しいかなと。
これまでのエピソードでも僅かに触れられてますが、
奏会長と奈々穂の関係とりのとプッチャンの関係はとても似ているのです。


で、プッチャンが没収されたりのはどうなったかというと。

泣いてます。
哀れなくらい、泣いてます。
プッチャンがいないことで弱さがもろに出てるといいますか。

そんな調子でクラスメートの歩にも泣きじゃくってからの回想。
プッチャンとりのの関係が少し明らかに。
2話冒頭の夢より少し後の時間軸。
母の死でプッチャンもいなくなったかと思いきや、プッチャンはいてくれた。
これを見ても分かるように、りのの脆さはプッチャンが支えてくれていた。
いつまでもずっといることで母親を失った悲しみを和らげてくれている。
りのにはプッチャンは不可欠なのですよね。
保護者と言うか、精神的支柱みたいな存在。

だからこの場面が映えるんですよね。
プッチャンを返してもらおうと、涙を拭いて一人で決断する場面が。
プッチャンがいなくても立ち直れてるんですよね、彼女。
回想で「りのは強い子だって」という母親の遺言をプッチャンが言う面が現実になってるわけです。


以上を踏まえて、

Aパート終了直前〜Bパート中盤までホラーコメディの様相を呈してるわけですがw
このくだりは初見時、笑いましたし今でも笑いますw
取り上げてないけど、奈々穂にまつわる小ネタもいちいち可愛くておかしいw

ここまでの展開で作中の認識と視聴者の認識が摺り合わさって、一段落するんですが。
(ちなみにプッチャンの演技はプッチャンをつけているキャラの声優さんが担当されてます)

そもそも奈々穂とプッチャンの性格が正反対なのが災いしてもう一悶着。
お互いの人間関係は似ていても、本人たちの性格がまるで違うのも面白い。
以下のシーンも下らなくて、いつも爆笑するシーンですねえw

空に放り出されるのはまだ良いとして、そこから落雷直撃にはもうどうしようかとw
挙句の果てに重ねられるモノローグテロップがベタにハードボイルドしてるのもポイント高め。
いや、結構状況は深刻だったりするんですが、プッチャンが人形なので。
シリアスさより笑いのほうが先立ってしまうわけです。

そしてヤ○チャからの事の真相。
実はりのを一人立ちさせるために悪役を買って出てたけど、暴走しすぎた。
結果、落雷を受けて事切れてしまったのですが、ここでものすごく静かな超展開。
りのの雨傘を仕向けた奏会長の言葉によって、プッチャンが生き返った。
何が起こったのかはまだ伏せられてますが、とりあえず奏会長の「力」が示された。
これによって、宮神財閥がただの財閥じゃなくなったことと、
プッチャンが人格を持って喋ることも、なんらかの「力」が作用しているという予測も立ち、
物語は新たな広がりを見せるわけです。

だって、プッチャン本人も訝しがるわけですから。
奏会長も会長でりのだけに構っていられない事情も見え隠れし、
りのの一人立ちもまだ時間を要する感じ。
プッチャンもそう簡単に御役御免とはならなそう。
いろいろシリアスな事情が見え隠れしつつ、極上な物語は続くのです。

そしてオチも今回活躍した二人がいつもどおりのやり取りをして締め。
結局プッチャンの正体は分からずじまいでした。


りのとプッチャン
奏会長と奈々穂。
この二つの関係は先々の話を見ていけば、近似性を見出すことが出来ます。
それについては現時点で多くは語らないことにします。
が、今回も触れた通り、プッチャンとりのの関係に重なって見える所が出てきます。。
それを語る時に、今回の話を思い出して頂くと面白いかと。
改めて見ても、かなりテクニカルなことをしてるなという印象が強いですね。
何度も見返していると気づかなかった発見もあったりで楽しめます。
好きな作品ゆえだからかもしれませんけども。
では、そんな所でまた次回。