Angel Beats! 死後の世界とモラトリアム・ワンダーランド

最近、研究というか参考という感じで京都アニメーション版の「Air」「CLANNAD」「Kanon」を視聴しています。とりあえず、色々思うことはありますがどれも作品的には一定の水準を上回っている作品なのでしょうね。どれも見やすい作品、のんびり楽しく見ております。


さて、Angel Beats!もいよいよ佳境に入ってきました。
今回は最新話である第9話を受けて、ちょっと考えて見ましょうといったところです。
では例によってネタバレ全開なのでご覧になる方は「続きを読む」をクリックで。






さて、ようやく音無の記憶が全て戻りました。
そして天使と共にSSS団を死後の世界から「卒業させる」という目的も開示されましたね。
果たして残り4話で話をどうもって行くか気になるところではありますが、それはひとまず置いて。
今回、明らかになった「死後の世界=青春を過ごせなかった若者たちの魂の救済場所」ということについて、見ていこうと思います。


《モラトリアムとしての学園、および世界》
年齢的に大人といえる歳になった今になって思い返してみると、
やっぱり学校生活というものは特別なものだったんだと思います。
大人へ成長する間の前段階というべきか、もう取り返すことの出来ない自由な時間だといえると思います。
ABの世界では死後の世界=学園世界ともいえそうな舞台設定になっています。
第2話の冒頭で学校の看板が名前のところだけ削られてるのも、おそらくは死後の世界が学校であるという表れなのでしょうね。
だれも自分の住んでる世界に名前を付けるなんてことはしませんしね。
最新の話で天使が「青春時代をまともに過ごせなかった人たちの集まる世界」と言っていましたが、
ようするに「死後の世界で何らかの形で満足な青春を送れば、その人は満足して消えていく」ということですね。
岩沢が消えていったのも、生前で満たされなかったものがこの世界で満たされた、ということは作中で説明があったとおりで、一応の筋が通っています。
そうすると、死後の世界で死ねないって言うことは
自分が満足の行く青春が送れるまで、何回でもやり直しが効く世界」
になりますね。
ここら辺はちょっとゲームチックです。
結局、満足しなけれけば何をやっても自由なわけです。
簡単に言えば、リセットボタンがある現実。
やり直しの効く世界、ってなんかとても理想的ですよね。
一度行ってみたくもありますが、そんなところはどこにもない(笑)
まあ、ともかく。
死後の世界が学園という形を取っているのは、モラトリアムというのが大きなキーワードなのだろうと思われます。
いわゆる大人になる前の猶予期間というべき学園の形を取って、死後の世界としているのが面白いところです。
死後の世界って言葉だけで受け取ると、なにか後ろめたいというか、なにか思い残したことがあって、そんなところにやってきてしまったって印象が少なからずあると思います。
天国でも地獄でもなく死後の世界。
そんな風にいわれると凄く中途半端な世界に見えますよね。
そこを学園と設定したので、語の印象としての後ろめたさは払拭されてるのではないかなあと。
さらに死後の世界をモラトリアムと設定すると、色々見えてきそうですね。
輪廻転生するまでのモラトリアムとか。
学園=死後の世界=モラトリアムとすることによって、
時の止まったような理想の現実で「何かの猶予期間」を過ごしている
とも考えられます。
大きな世界観としてモラトリアムを組み込んだことが今後に大きく作用しそうです。


《さて、電脳世界説は否定された。となると?》
放送開始から「死後の世界とは?」という議論は多く交わされてきたと思います。
そのひとつに「電脳世界説」がありましたが、それが原作者からあっさりと否定されました。


問題の発言はPart2の7分20秒当たり。
きっぱりと電脳世界ではないと言われてしまった以上、では何なのかということになります。
上の方で説明した通り「死後の世界=何からのモラトリアム」であるということはなんとなく想像はできますね。
では、何のモラトリアムなのでしょうか。
ネットで見ていると死後の世界の仮説としては「電脳世界説」と「生まれ変わる前の世界説」が双璧だったように思えました。
現時点で「電脳世界説」は完全に否定されてしまいましたので、有力となるのは「生まれ変わる前の世界説」となります。
つまり、

輪廻転生するまでの自由な空間=死後の世界

ということですよね。
タイトルからして「天使の鼓動」という意味ですし、天使=赤子のことではないか?という意見がありました。
が、しかしです。
この作品で天使というと一人しかいません。

立華奏という名前がありますが、「天使」という固有名詞は彼女から離れないでしょう。
彼女のこの世界の役割というのはOPの歌詞によく現れています。

この曲で歌われている天使はあくまで見送る側であるということ。
見送るという行為と、鼓動というのがあまり結びつきようがないのですがさて。
これを解く鍵はどうもタイトルロゴにありそうな気がいたします。

以前、ブログの記事でこのロゴのラインは心電図じゃないかという予想を立てましたがコレが結びつくんではないかと。
どういうことかというと、


生と死の間のモラトリアム=死後の世界


なのではないかと。
さらにこうも言えるのではないでしょうか。


死後の世界で青春を満足に送ることによって、人生を取り戻すきっかけ=天使の鼓動


つまり、


天使の鼓動=心臓が息を吹き返したときの微弱な鼓動


なのかもしれません。
そのように考えると、死んだところの描写が出ていないキャラに関して言えば、まだ生きている可能性があるということですね。もちろんゆりもなんで死んだのかはいまだに分からないわけですし、十分有り得るんではないでしょうか。
ただ音無に関してはどうなんだろう。
今回を見る限りだとしっかり死んでいるようにも見えますね。
もしかしたら直井が言ったように「神になる資格のある者が集まった世界」なのかもしれません。
そうなると音無=神となりますがはてさて。
これも前にいったことになりますが音無=0、天使(奏)=1で相互作用してるんじゃないかという気もしなくないです。
問いかけに対する答えのような関係で。
まあ素直に「生まれ変わる前の世界」かもしれませんけども。
でも「人生賛歌」って銘打ってるのに、生まれ変わるというのもどうなんだろうという気はするんですよね。
なんにせよ13話まで見れば分かる話なんだろうと思いますが。

それでは今回はここまで。
また次回。


※追記。
CLANNDのEDがABのテーマというか麻枝准の言いたいことなんじゃなろうかと思ったので、張っておきます。

ABって最近アニメのMADな面も多々あったけど、麻枝准の関わった作品の要素の複合体だよなあと思ったので。
若干、話がそれちゃうので詳しく話しませんが「世界は繋がっている」ってのがキーワードなんでしょうね。
では。